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【考察】「スプラトゥーン3」のスタッフを見てみよう

2022年09月09日に発売されました『スプラトゥーン3』はE3 2014年初報から始まった『スプラトゥーン』シリーズ最新作として着実な広がりを見せています。発売後ある程度情報も出ましたので、スタッフについて全体に見る記事を作りました。
(ゼノブレイド3はもう少々お待ちください。10月中に投稿致します)

<まとめ>

  • 『スプラトゥーン3』の開発規模は過去作と比べ2倍に増加。
  • ゲームデザインは過去作不明の方が多数リストアップ。『スプラトゥーン2』のゲームデザイン担当16名中5名は続投。
  • サウンドは過去作が分かっている人が殆ど。元SIEジャパンスタジオの方も参加。
  • プログラミングは『スプラトゥーン2』経験者はほぼそのまま続投。過去作は任天堂系タイトルで占められる。
  • アートはバンダイナムコスタジオ、Lemon Sky Studios、デジタル・メディア・ラボ、アグニ・フレア、アプリボットの参加もあり、過去作が非常に多様。経験者が多かった作品1位は『あつまれ どうぶつの森』、次が『エースコンバット7』。

今回見ていくもの

今回はゲームデザイン、サウンド、プログラミング、アートの4セクションを見ていきます。具体的には以下の要素を見ていきます。

  1. 規模
  2. 『スプラトゥーン3』のみリスト入りしている方の数
  3. スタッフが開発に参加した過去作
  4. そのほか気になったこと

『スプラトゥーン』シリーズは細かなポストを用意せず、プログラムならプログラミング、アート関係はアートとごった煮にする傾向があります(3Dマリオシリーズと似ていますね)。そのためポストまで見た細かな分析は不可能であり、大雑把なそれが限界です。

ともかく、これまでの履歴が分からない方や、分かる方の過去作を見ることで『スプラトゥーン3』の開発陣がどういった経験を得てきたのか大雑把ですが考える材料になります。ちなみに"リスト入りしている方"というややこしい定義ですが、これは載ってないから何もやってないとは言えないからです。
ゲームという作品で世に出て、かつスタッフリストが公開されている前提となりますので、作品がない=新人とは限りません。

ゲームデザイン

ゲームデザイン:シリーズ比較

今作は35名おります。これまでが10~15名の規模でしたので、過去作の2.3倍です。

その陣容の中、『スプラトゥーン3』のみリスト入りの方が35名中18名、全体の51%を占めます。51%が新人ではなくとも、過去作の開発者集団には属していないことから、これまでとは違った思考、動き方、提案をする可能性があります。最終的に判断するのは『スプラトゥーン3』シリーズ経験者のディレクター、プロデューサーですが少なくとも現場レベルでは『スプラトゥーン3』以外経歴が分からない方が多いということは事実です。

『スプラトゥーン2』『オクトエキスパンション』経験者はそれぞれ5、4名と、後述する『あつまれ どうぶつの森』より少ないです。ただ、元々『スプラトゥーン2』のゲームデザインは16名でしたから、31%は『スプラトゥーン3』でも続投です。

ちなみに『あつまれ どうぶつの森』開発経験のある方を抜き出してみると、以下の職種を担当しておりました。

ゲームデザイン(あつ森経験者)

ネットワークやシステムに寄っているのが興味深いです。

過去作品についてはこのようになっております。題名は結構ぐちゃぐちゃです。公式に沿っているものもあればそうでなかったり、半角全角スペースの混同、英名タイトルの直訳、そもそもタイトルが見切れている(!)などありますので参考程度に。2010年発売に区切っていますが、これはそれより遡るのが面倒くさいと考えているからです。

サウンド

サウンド:シリーズ比較

今作は11名おります。これまでが5~6名の規模でしたので、過去作の2倍です。

過去作が不明の方は1名のみでした。それ以外は全員『スプラトゥーン3』以外の何かしらでリストに載っています。

リスト化して眺めてみると、任天堂制作ではないタイトルもちらほらあります。これは井村 知浩氏というSIEのジャパンスタジオ所属だった方がいらっしゃるからです。

プログラミング

プログラミング:シリーズ比較

今作は42名おります。これまでが14~15名の規模でしたので、過去作の3倍です。

『スプラトゥーン3』のみリスト入りの方は42名中18名、全体の43%です。過去作の3倍の規模とはなりましたが、ゲームデザインと違って『スプラトゥーン2』『オクトエキスパンション』リスト入りがそれぞれ14、11名と過去作経験者は殆どそのままです。『スプラトゥーン』に戻っても8名おります。シューターゲームのプログラムを任天堂内でできる人材は限られるでしょうから不思議な話ではないでしょう。

また、シリーズ開始から7年経ってもなお他のシューターゲーム経験者がプログラム開発に加わっていないのも興味深いです。

アート

アート:シリーズ比較

今回は128名おります。これまでが50~60名の規模でしたので、過去作の2.3倍です。

『スプラトゥーン3』のみリスト入りの方は128名中48名。全体の38%です。調べてみて面白かったのはその多様性です。最も経験者が多かった作品は『あつまれ どうぶつの森』の18名ですが、その次がなんと『エースコンバット7 スカイズ・アンノウン』の12名となります。

これはスペシャルサンクスからも分かりますようにバンダイナムコスタジオのシンガポールスタジオが開発に参加しているからです。その中で『エースコンバット7』はエンバイロンメントアーティストの多くが『スプラトゥーン3』に入っており、そのままプロジェクトを移して勤務されていたことが想像できます。また、このような海外のスタジオ参加もあり、これまでの『スプラトゥーン』シリーズではローカライズが中心だった外国人のスタッフがアートではかなり多く登場します。

また、多様性と言いましたが、Lemon Sky Studios、デジタル・メディア・ラボ、アグニ・フレア、アプリボットのクリエイター集団でありますSSSも『スプラトゥーン3』のアートに名を連ねています。『オクトエキスパンション』ではモノリスソフト、アルヴィオンの2社程でしたので関係会社が明らかに増えています。

そしてモノリスソフトですが、前述しましたバンナムからの人員やマルチで活躍するクリエイターの参加によりやや影が薄くなっています。私がピンと来たのは4名程です。モノリスソフトでは人員を出すべきプロジェクトが今動いているとも考えられそうですが、そこはあくまでも妄想です。

最後の過去作ですが、正直長すぎますので流して下さい。一応見ましたよという証です。

引き継がれる体制

まとめになります。

  • 『スプラトゥーン3』の開発規模は過去作と比べ2倍に増加。
  • ゲームデザインは過去作不明の方が多数リストアップ。『スプラトゥーン2』のゲームデザイン担当16名中5名は続投。
  • サウンドは過去作が分かっている人が殆ど。元SIEジャパンスタジオの方も参加。
  • プログラミングは『スプラトゥーン2』経験者はほぼそのまま続投。過去作は任天堂系タイトルで占められる。
  • アートはバンダイナムコスタジオ、Lemon Sky Studios、デジタル・メディア・ラボ、アグニ・フレア、アプリボットの参加もあり、過去作が非常に多様。経験者が多かった作品1位は『あつまれ どうぶつの森』、次が『エースコンバット7』。

最後になりますが、『スプラトゥーン』シリーズのディレクターでありました天野 裕介氏は『スプラトゥーン3』では載っていません。人員は前作の2倍となり、『スプラトゥーン3』のみリスト入りの方も増えましたがそこからディレクターが減っているのは非常に興味深いです。

また、シューターゲーム、と言いますか継続的な運営を行うオンラインゲームの多くはコミュニティから得るフィードバックを重視します。そんな中、スプラトゥーン3は任天堂が運営する"珍しいオンラインゲーム"です。任天堂は「独創」の精神を大切にします。そんな任天堂が送るスプラトゥーン3の開発陣は今後どういう展開にしていくのか。これからも気になる所です。