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【考察】順風か、逆風か カービィのグルメフェス【スタッフリスト】


2022年08月17日に発売した『カービィのグルメフェス』(以下、グルメフェス)のスタッフリストについて見ていきましょう。

基本はディスカバリーと同一

まだ細かなインタビューはありませんので、クレジットのみを見た上での判断ですが、大体のスタッフは3月25日に発売された『星のカービィ ディスカバリー』(以下、ディスカバ)にも登場しています。ただし、2021年入社のスタッフもいますので、企画開始は仮に『ディスカバ』と同じだとしても、制作終了は同日ではないと考えられます。
(新人さんが具体的に誰なのかについてはブログやTwitterで明かさないようにしました。ハル研究所も新人さんの名前はイニシャルにしてますし)

先に言いますと、約70%の方が『グルメフェス』『ディスカバ』共に参加しております。人数ですと100人中70人という程度です。

本作は「星の」が付かないためカービィシリーズとしては番外編に当たりますが、今の所様々な人に遊ばれているのはその調整が本編並みに上手くいっているのではないかと考えられます。また、明確なストーリーもないことから『タッチ! カービィ』以降にあったストーリーを必要とする軛からも逃れられており、シーケンスディレクターとしてハル研ブログにも登場しました山田翔太氏含めチームは、「過去のカービィシリーズとは違う遊びにする」という問題に結果を残せたのではないかと感じております。

後進育成の姿勢か?

さて、『ディスカバ』と殆ど同じ体制で造られた『グルメフェス』ですが、後進育成の姿勢が見られるようになりました。

『グルメフェス』のフィールドアーティストの並び順を出しましょう。

No 氏名
1 吉岡 優輝
2 山瀬 眞央
3 小川 恵也
4 村木 菜津弥
5 南 知臣

基本的にハル研究所は関与順で氏名を並べており(大体のゲーム作品も経験上そうです。例外もありますが)、それぞれの情報を調べてみると1番目に名前が載る吉岡氏は2020年入社。山瀬氏も2015年入社と比較的若い(7年目は正直ベテランに片足突っ込んでいますが)層です。これが『ディスカバ』ですと、フィールドアーティストの1番目は2007年入社の本田 優紀氏、2番目に至っては1990年発売の『宇宙警備隊SDF』からいらっしゃる橋倉 正氏です。

そんな中、後半に『ディスカバ』でリードプロシージャルアーティストを担当された村木氏や1997年入社の南氏がいる形を見ますと、若手をベテランが応援する構図であるように見受けられます。

ちなみにこの光景はUIアーティストでも見られ、私が『ディスカバ』にいないと指摘した東藤氏が後半におります。プログラマーは似たような形にはなっておりませんが、代わりにFrat Framework プログラマーやテクニカルサポートにおります。

もう1つのフェスとの関連

作品そのものと大きく関係はしませんが、スペシャルサンクスを見ると気になる所があります。
カービィはミュージックフェスも行いましたが、そのパンフレットで見られるスタッフが『グルメフェス』にもいるのです。

名前 『グルメフェス』 『フェス』
高濱 昇平 映像企画編集 スペシャルサンクス
長田 有美 映像企画編集 スペシャルサンクス
五十嵐 広朗 映像企画編集 スペシャルサンクス

ミュージックフェスの映像、となりますと会場で流れたあの映像作成・編集に挑んだ方々となりますが、そんな彼らがスペシャルサンクスとはいえ『グルメフェス』に名を連ねているのは大変興味深いです。スペシャルサンクス自体からはぶっちゃけ大したことは分かりませんし何とも言えませんが、こういったゲームとは直接関係のない所で動ける人材が増えているのが今のハル研究所です。

前回お話ししました、『カービィのIP事業は利益の柱ではありません』では

IPプロデュースに携わるからと言って別個の教育ルートをハル研究所は作っていませんし、あるいは公に見せていません。

カービィのIP事業は利益の柱ではありません - Papen's Piling

とお伝えしましたが、そんな予想も大外れになるレベルで変わっているのかも知れません(むしろ大外れな方が歓迎です)

www.papenspiling.com

順風か、逆風か

ここまで見ますと、『ディスカバ』のスタッフと殆ど共通しているのが『グルメフェス』です。番外編の制作を本編のスタッフを中核に行うのは『星のカービィ トリプルデラックス』や『星のカービィ ロボボプラネット』のサブゲームの発展作品にみられた、山梨を基本としたコンパクトな開発陣でした。
形として見られるようになったのは『みんなで! カービィハンターズZ』『カービィのすいこみ大作戦』でした。

その形を継承するのではなく、後進育成のような配置(過去作の配置も見直しましたが、そうなっていませんでした)を見せたのは興味深いです。2020年代のハル研究所は良くも悪くもベテランがいます。彼らに任せっきりでは後進が育ちません。第3者にも分かるように後進に任せていくのは適当な方策だと私は感じました。

ただ、『カービィのバトルデラックス』(以下、バトデラ)から『グルメフェス』に至るまでの約5年間、ゲームのカービィはハル研究所の山梨開発センターやバンプールを中心に彩られているのが気になります。一応『バトデラ』でプログラムを務めた石崎佳織氏が『グルメフェス』でプロジェクトマネージメントを、『バトデラ』でデザイン担当だった山瀬氏がフィールドアーティストになるなど、山梨とは別のチームで動かれた方がいない訳ではありません。


ハル研究所には山梨と東京に2つの開発センターがあり、山梨は大規模、東京は比較的小規模とあったことから
山梨で本編、東京で外伝
という図式が自然と成り立っていました。事実、カービィのコピー能力であるストーンで富士山が見える山梨開発センターをアピールするのは本編のカービィばかりです。また、隠し要素として名高いHAL部屋も『タッチ! カービィ スーパーレインボー』、『バトデラ』では今に至るまで見つかっていません。そして東京では特殊な操作を行うカービィ作品が誕生してきました。さらに昔に遡れば『あつめて! カービィ』もそうでしょう。

実際に山梨と東京ではっきりと分かれているとは言えません。テレビ会議時代もそうですが、テレワークが盛んになった昨今で場所ですべてが区切られると考えるのはナンセンスでしょう。しかし『バトデラ』と『星のカービィ スターアライズ』ではスタッフが全然違うように、2つの体制があることは考えられます。

"東京"に何かしらの問題があって"山梨"で「過去のカービィシリーズとは違う遊びにする」問題に立ち向かう必要があったのか、それとも人が増えて山梨でもそのような取り組みができる程余裕が生まれたのか。

何はともあれ、皆さんが出来る限り満足の行く形でキャリアを進められていることを祈ります。

最後に"東京"系の空白の期間の表を出して終わりにします。

東京はいずこへ