Papen's Piling

主にコンシューマーゲーム会社を調べる所

アルファドリーム元スタッフの動向を調べてみた

お久しぶりです。ゲームやら私生活が忙しく何も書けておりませんでした。

ただそんな中も、ゲーム業界の動向はたまに見ておりました。
特に私はスタッフリスト、スタッフクレジットを用いてその動向を見ていくやり方をよく取っております。なので社員の名前や「◯◯社の社員が△△社に~~」といった話が出れば注目しておりました。

ただ、それで出てくる話は殆どは価値がないもので、特に酷いと思ったのはアルファドリームの動向に関する記述です。

『マリオ&ルイージRPG』シリーズの制作で知られたアルファドリームは2019年に倒産しました。

そんな元アルファドリームのスタッフが「◯◯へ行った」という話はwikipedaに記載されております。内容は以下の通りです。

解散後、所属していた殆どのスタッフはトーセに所属し、『ライブ・ア・ライブ』HD-2Dリマスター版や『スーパーマリオRPG』のNintendo Switch向けリメイク移植版は解散時点で当社に所属していたスタッフが中心となって担当した。

出典:アルファドリーム - Wikipedia

彼らはトーセに所属し、『ライブ・ア・ライブ』のHD-2Dリマスター版や『スーパーマリオRPG』に関わった…とのことです。

今回はこの話を見ていきましょう。

結論から言います。現時点では何一つとして正しくないです。

名前を出さないトーセに行ったと何故分かる?

トーセという会社は、1979年に設立したゲームソフトの企画・開発・運営を業務とする企業です。齋藤 豊氏によって設立された株式会社東亜セイコーから分離独立したという経緯があります。なお本社・本店共に京都にあります。

このトーセですが、自らを「企画提案型の独立系受託開発専門企業」とみなしております。
この独立を守るためトーセは中立のスタンスを貫くとしており、その影響としてトーセの誰がどのゲームを担当したかは殆ど分からないようになっております。

トーセのビジネスモデル(「トーセについて3つのこと」より)

これは私の認識ですが、もし仮に誰がどのゲームを作っていたかわかった場合、顧客先から人員配置で口出しされるリスクがあるのではと考えております。そのため、名前を出さないというのもやり方として正しいと私は認識しております。

(そのような小手先の技だけでなく、公式サイトにも記載されている黒字経営や自己資本比率80%維持、総合的な開発体制もまた大事です)

そんな中立のスタンスを徹底するトーセに元アルファドリームの社員が移った…言うことはともかく、証拠がありません。

例えば他社合同で行うイベントで社員名が出てくるなどといったことがあれば、その話は一定の説得力を持ちます。
そんな話も聞いていないので現状は"分からない"とするしかありません。

『ライブ・ア・ライブ』のHD-2Dリマスター版の開発はヒストリア、スクエニ第二開発事業本部

そもそも、『ライブ・ア・ライブ』のHD-2Dリマスター版の開発の中心はヒストリアとスクウェア・エニックス第二開発事業本部(の浅野チーム)です。

ライブアライブ 公式サイトより

先程のトーセに移ったという話を事実と仮定しても、この話と矛盾しています。クレジット内にトーセという会社名すら載っていないのですから、「トーセが関わっていたのかも知れない!そう考えろ!」と言われても無理な話です。

似たようなゲームだから同じ会社がやっているのではという考えはまず捨てたほうがいいです。

そもそも『マリオ&ルイージ RPG』に携わった人を調べればいい

アルファドリームの現在を知るなら一番手っ取り早いのはMobyGamesで各スタッフの履歴を見ることです。リンク先はゲームのスタッフクレジットを集めるMobyGamesの『マリオ&ルイージ RPG 3DX』スタッフクレジットです。ここからそれぞれの担当の履歴をパパッとチェックすればいい話です。

簡単に確認してみて、明確にアルファドリーム倒産後の動向が分かる人は以下の方ぐらいです。

  • Shunsuke Kobayashi - Director

『FANTASIAN』にイベントディレクターとして参加。現在はミストウォーカーに所属?

  • Fumiya Obata - Field Design

『ゼルダの伝説 ティアーズ・オブ・ザ・キングダム』にゲームデザインに参加。所属は不明(モノリスソフトと言っている人もいるが、証拠なし)

  • Jun Kuronuma - Field Design

『Final Fantasy VII: Remake』にレベルデザイナーとして参加。所属はスクウェア・エニックス?

  • Hiroyuki Kanemaru - Field Design

『テイルズ オブ アライズ』にクリーク・アンド・リバー社名義でクエストプランナーとして参加。

  • Makoto Takei - Field Program

『NieR Re[in]carnation』にILCA所属でテクニカルアーティストとして参加。

  • Naoya Hatano - Field Program

『逆転裁判123 成歩堂セレクション』Steam版にデジタルワークスエンターテインメント名義でプログラマーとして参加。

  • Hiroshi Ohata - Battle Program

『ゼノブレイド3』などにモノリスソフト所属でプログラマーとして参加。

  • Tsuyoshi Sonoda - Battle Program

『鬼ノ哭ク邦』にプログラマーとして参加。Tokyo RPG Factory所属だった?

  • Wataru Iida - Battle Program (Bowser Jr.'s Journey)

『ポケモンスリープ』にILCA所属でコーディネーターとして参加。
イルカはサーバーエンジニアリングメインのため、同じエンジニアとして同一人物と考えやすい

  • Takuji Sasaki - Graphic Design Lead

『FANTASIAN』のアートを担当。現在はミストウォーカーに所属?

  • Yoshihiro Matsuyama - Bowser Graphics

『キングダム ハーツ メロディ オブ メモリー』『やわらかあたま塾 いっしょにあたまのストレッチ』『シアトリズム ファイナルバーライン』にインディーズゼロ所属で3D・2Dグラフィックなどを担当。

  • Yuuichirou Nakayama - Enemy Graphics

『リトルタウンヒーロー』にインターフェイスデザインを担当。ゲームフリーク所属。

  • Yuuki Amano - BG Graphic Design

『キングダム ハーツIII』にクアドラソフトウェア所属でアーティストとして参加。

  • Momoko Shoji - BG Graphic Design

『聖剣伝説 レジェンド オブ マナ』HDリマスター版にデジタルワークスエンターテインメント名義で2Dデザイナーとして参加。

  • Ai Nakamura - BG Graphic Design

『Lost Judgment: 裁かれざる記憶』にデジタル・フロンティア所属でアーティストとして参加。

  • Tomoya Hiwatari - BG Graphics

『FANTASIAN』のアートを担当。現在はミストウォーカーに所属?

こうして見ると、後に担当された作品はかなりバラバラです。よく見るのは『FANTASIAN』ですね。Twitterで「元社員の皆さんはほとんどが別のゲーム会社で頑張っているようですよ!」と発言された藤岡 千尋氏もそちらに携わっていたようです。

スーパーマリオRPGに参加する可能性

『スーパーマリオRPG』に参加していることについては未発売ですからまともな情報は現時点ではありません。ただ3Dに弱く、3DSですら一部をグッド・フィールやアーゼストに依頼していたアルファドリームが関与するとなれば、考えられるのは企画やバトルプログラム、UIデザインぐらいでしょう。企画や要件定義の段階で関わっていればアルファドリームの遺伝子が刻み込まれている…と言えるかも知れません。

どちらにせよ、今ここでハッキリとは言えませんし、Wikipediaで何故あのような記述になったのかはまるで分かりません。

まとめ

ここまでアルファドリーム元スタッフの動向を見てきましたが、アルファドリーム倒産後の動向が分かる方はあまりいませんし、いたとしてもその会社はバラバラです。『FANTASIAN』に加わった方はそれなりにいますが、それも数としては控えめです。

そもそもスタッフリストを公開するという文化自体がコンシューマーゲームの一部にあるぐらいで、モバイルゲームや業務用ゲームでは公開される方が奇跡なぐらいです。ですから例えば『マリオ&ルイージRPG』に関わっていたスタッフ全員の動向が後々判明するとは考えないほうがいいでしょう。

得られる情報が限られている前提を持って、ゲーム開発会社のことは書くべきです。