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「あつ森」から見る「どうぶつの森」開発陣容について

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 2020年03月20日に発売した『あつまれ どうぶつの森』(以下、あつ森)は時勢もあり2020年05月現在もホットなゲーム作品です。
今回はその『あつ森』を開発した人達が

  • 過去の『どうぶつの森』シリーズでどのような役割を務めていたのか
  • 逆に未経験者はどの程度いるのか
  • 他のいくつか気になること(Splatoonとの関係性、モノリスソフトの部分受託の中身など)

を調べていきました。

<忙しい人向けまとめ>

  • 『あつ森』のディレクターやプロデューサーなど主要スタッフは『どうぶつの森』シリーズ経験者で占められるが、それ以外の担当の殆どは未経験者が多い。また、プログラムはSRDとの関係が深い。
  • アセットデザイン44名中、33名は『Splatoon』シリーズ開発に参加。
  • モノリスソフトが受託したのはアセットデザイン。『ゼノブレイドクロス』に参加したスタッフがそこに多く見られるため。
  • 『あつ森』のデザインサポートには『ニンテンドー3DSガイド ルーヴル美術館』に関わった方がいる。ルーヴル美術館らしさがあるのはそれが原因か?

『どうぶつの森』シリーズの簡単なおさらい

 『どうぶつの森』シリーズの開発陣について特に知られているスタッフは、江口 勝也、野上 恒、戸高 一生、京極 あやと言った所だと思います。こういった著名なスタッフの記事はメディアが出しますので、そこではなく「現場」にいる人達はどんな人なのかを調べるという「現場主義」と呼称していいのかは知りませんがそんなやり方を採用しています。
インタビューなどに関しましては、ネット上には以下の記事もありますので、『あつ森』で『どうぶつの森』シリーズに興味を持った方はご覧下さい。

さて、これらの記事には

  • 江口 勝也
  • 野上 恒
  • 池側 紀子
  • 高村 潤
  • 戸高 一生
  • 毛呂 功
  • 小林 龍二
  • 高橋 幸嗣
  • 京極 あや

が登場しますが、『あつ森』には池側 紀子以外がスタッフリストに載っています。
つまり、昔からのスタッフが多く残っているのが『どうぶつの森』です。
とはいえ、これだけではスタッフが残っていることしか分かりませんので、役職の変遷と共に見ていきましょう。

『どうぶつの森』の主要スタッフの変遷

 変遷を追う前に『どうぶつの森』の主要スタッフは何かを定義しなければなりません。
ここでは「ディレクター、アートディレクター、プログラムディレクター、サウンドディレクター、アシスタント&シークエンスディレクター、スクリプト(+リーダー、ディレクター)、プロデューサー、ゼネラルプロデューサー」としました。総合を含む各分野のディレクターは重要ですが、『どうぶつの森』がコミュニケーションゲームである以上、スクリプトもまた大事です。プロデューサーやゼネラルプロデューサーに関しましては「現場」との関係は作品によって異なりますが、含めました。
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 まずは、『どうぶつの森』(以下、初代)の主要スタッフです。当時はプログラムディレクターもアートディレクターもいませんので、この画像からは特定の役割でクレジットされたプログラマーやデザイナーも載りません。ちなみに『あつ森』の画像以外では省いてしまいましたが、とたけけこと戸高 一生は『初代』から『あつ森』まで一貫してサウンドディレクターを務めています。

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次は『どうぶつの森+』(以下、どう森+)から『どうぶつの森 e+』(以下、e+)、『おいでよ どうぶつの森』(以下、おい森)までです。
 『どう森+』は『初代』から引き続き江口 勝也と野上 恒がディレクターを、スクリプトは計3名としていますが同じになっています。プロデューサーも同じです。ただし、プログラムディレクターが誕生し、それを『初代』でプロジェクトマネージャーを務めたおおつき ゆひきが担当しています。『e+』でも役割は殆ど変わっていません。ただしプログラムディレクターについては役職そのものが消滅しています。
 それから2年後の2005年11月23日発売(日本)の『おい森』以降はアートディレクターとプログラムディレクターは必ず存在するようになりました。アートディレクターは小林龍ニ、プログラムディレクターはにい まさるですが、小林 龍司は『初代』と『+』でキャラクターアニメーションを、にい まさるは『初代』でプログラム、『e+』でメインプログラムを担当していますので『どうぶつの森』シリーズの経験者であります。ただし、スクリプトから和田 誠が外れます。江口 勝也はプロデューサーになり、手塚 卓志はゼネラルプロデューサーとなります。

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 次は、『街へいこうよ どうぶつの森』(以下、街もり)から『どうぶつの森 ハッピーホームデザイナー』(以下、HHD)までです。その前に『おい森』から『街森』の変化を見ます。
 『街森』では、『おい森』の陣容にそのままプラスしたような形になっています。ディレクターやアートディレクターは変わらず、プログラムディレクターは変わっていますが、こまつ くにひろは『初代』でプレイヤープログラム、『どう森+』でプログラム、『e+』でプログラムを担当していますので経験者です。そして、アシスタントディレクターに毛呂 功、シークエンスディレクターに京極 あやとたかの みつひろが加わります。
 『とび森』では『街森』までの陣容がだいぶ変わります。ディレクターは毛呂 功と京極 あやが、アートディレクターは高橋幸嗣が加わって3名に、プログラムディレクターは高木 元太郎となります。そしてスクリプトリーダーという役職も生まれ、和田誠が担当します(参加はe+以来)
 外伝に当たる『HHD』ではディレクターは毛呂 功、アートディレクターは高村 潤など計3名、プログラムディレクターは留任、アシスタントディレクターはひろまつ こうたろうが務めました。スクリプトは計6名、プロデューサーは野上 恒と京極 あや、ゼネラルプロデューサーは江口 勝也となり手塚 卓志から代わりました。

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 ここまでの状況を振り返って、『あつ森』の主要開発陣を見てみます。
全部画像に出しましたので、わざわざ文章に起こす必要はないと思いますが、見れば分かりますようにディレクター、プロデューサー、ゼネラルプロデューサー、デザイン&プログラムアドバイザーに『どうぶつの森』シリーズ過去作(殆どは前作の本編に当たる『とび森』)で重要な役割を担った方々がズラリと並んでいることが分かります。プログラムは毎回異なることが多いですが、それでも経験者で占められています。しかも、『あつ森』には2018年に退社した毛呂 功の名前も載っています。スペシャルサンクスですので中心とまでは言えませんが、『あつ森』が『とび森』発売後には開発がスタートしていたという記事もありますので、その時期であれば彼が参加していてもおかしくありません。また、任天堂開発のゲームに携わるSRD株式会社の関与もかなり深いです。

Twitterの方でもあげましたが、もう少し分かりやすくしたのがこちらになります。
該当する作品に参加していると1、不参加は0となります。
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アドバイザーとサポート

 『あつ森』にはアドバイザーだけでなくサポートという役割もあります。ですが、こちらは過去の『どうぶつの森』シリーズに関わった方は非常に少ないです。逆にアドバイザーは殆どが経験者かつ役職も高いことから、「アドバイザーは経験者、サポートは殆どが未経験者」という構図になります。

『あつ森』の開発陣容

 さて、先程は『あつ森』の主要スタッフが経験者で構成されていることが分かりました。次に、他のスタッフも含めた『あつ森』の開発陣容について見ていきます。
まず、『あつ森』の開発スタッフ(ローカライゼーション関係者は全部除きますが、スペシャルサンクスやプロデューサーは含めます)は合計260名います。
その内、以下の作品に関わったスタッフはこれだけいました。

作品 人数
ハッピーホームデザイナー 45
とびだせ どうぶつの森 56
街へいこうよ どうぶつの森 24
おいでよ どうぶつの森 21
どうぶつの森 e+ 19
どうぶつの森 + 20
どうぶつの森 18
Splatoon2 50
Splatoon2 オクト・エキスパンション 42
ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド 48
リングフィットアドベンチャー 35

『Splatoon2』などは比較対象として用意しただけです。大事なのは『どうぶつの森』シリーズとの比較です。
260名という陣容で過去に何らかの『どうぶつの森』シリーズ開発に関わっていた方は75名います。率にして約28.9%です。75名の経験者と185名の未経験者がどこの担当にいたのかを表にすると次のようになります。

役割 過去作経験者の数/全体(%)
ディレクター 1/1(100%)
アートディレクター 1/1(100%)
サウンドディレクター 1/1(100%)
プログラムディレクター 1/1(100%)
アシスタントディレクター 1/1(100%)
スクリプトディレクター 1/1(100%)
プロジェクトマネージメント 0/2(0%)
システムプランニング 0/4(0%)
イベントプランニング 2/3(66.7%)
UIプランニング 0/2(0%)
ネットワークプランニング 1/4(25%)
スクリプト 2/9(22.2%)
プランニングサポート 0/2(0%)
キャラデザイン<プレイヤー&どうぶつ> 0/5(0%)
キャラデザイン<アニメーション> 1/2(50%)
ちけいデザイン<フィールド> 2/5(40%)
ちけいデザイン<たてもの> 1/5(20%)
ちけいデザイン<おうち> 0/2(0%)
ちけいデザイン<ないそう> 1/4(25%)
オブジェクトデザイン<かぐ> 4/11(36.4%)
オブジェクトデザイン<ファッション> 0/3(0%)
オブジェクトデザ<いきもの> 1/2(50%)
オブジェクトデザ<しょくぶつ> 1/2(50%)
オブジェクトデザ<アイテム> 0/2(0%)
UIデザイン 0/7(0%)
エフェクトデザイン 1/2(50%)
ライティングデザイン 0/1(0%)
アセットデザイン 7/44(15.9%)
デザインアドバイザー 2/2(100%)
ミュージック 1/5(20%)
サウンドデザイン 0/4(0%)
キャラプログラム 2/8(25%)
プレイヤープログラム 1/1(100%)
ネットワークプログラム 2/2(100%)
フィールドプログラム 2/3(66.7%)
システムプログラム 0/1(0%)
カメラプログラム 0/1(0%)
オブジェクトプログラム 2/4(50%)
ツールプログラム 2/2(100%)
グラフィックスプログラム 1/2(50%)
UIプログラム 7/11(63.6%)
メッセージプログラム 1/2(50%)
サウンドプログラム 0/3(0%)
QAプログラム 1/2(50%)
プログラムアドバイザー 2/2(100%)
オープニングムービー 0/1(0%)
パッケージデザイン 0/2(0%)
イラストレーション 1/3(33.3%)
デザインサポート 0/2(0%)
プログラミングサポート 3/18(16.7%)
ネットワークサポート 0/8(0%)
テクニカルサポート 3/5(60%)
デバッグ 0/4(0%)*1
スペシャルサンクス 8/25(32%)*2
プロデューサー 1/1(100%)
アソーシエイトプロデューサー 1/1(100%)
ゼネラルプロデューサー 1/2(50%)
エグゼクティブプロデューサー 0/1(0%)

カメラプログラムなどそもそも継続させようのない担当こそありますが、例えばシステムプランニングやキャラクターデザイン<プレイヤー&どうぶつ>、オブジェクトデザイン<ファッション>など、全く経験者がいないのは少々驚く担当もあります。

 今回は例えば『とび森』と『街森』の比較などはしておりません(ただ、ざっとしか見ていませんが、『とび森』のフィールドデザインとキャラクターデザインで『街森』経験者は最低1人はいました。)ので、常にこういう傾向だとは言えませんが、少なくとも『あつ森』においては「『どうぶつの森』シリーズの未経験者が多くいる各担当と、経験者で構成される主要スタッフ」というかなり分かりやすい形が見えます。この点を踏まえると社長が訊く『とびだせ どうぶつの森』における京極 あやの発言が気になります。

京極 あと、今回の開発の特徴として、
   以前からシリーズに
   かかわってきたスタッフがいるなかで、
   はじめての人もけっこう多かったんです。


岩田 はい。


京極 じつは開発経験がないどころか、
   このゲームを遊んだことのないスタッフもいたんです。
   なので、そういった人たちに、
   まずは過去作を遊んでもらったんです。
   そうしたら、すごく楽しく遊んでもらえて、
   その結果、このソフトにとって物量をつくることが
   ものすごく重要なことなんだと、
   遊び手の立場で、体感してもらえたんだと思います。

出典:社長が訊く『とびだせ どうぶつの森』|ニンテンドー3DS|任天堂

京極 あやが述べたのは「このゲームを遊んだことのないスタッフ」ですので「未経験者」とは異なりますが、それでも『どうぶつの森』を担当するのは初めてという点は同じです。このギャップをどのようにして埋めていったのか、誰かがお訊きになって欲しいものですが…。

「Splatoon」との関係性

 以降はこちらが気になったことです。『Splatoon』シリーズ、ここでは『Splatoon2』と『Splatoon2 オクト・エキスパンション』(以下、オクト)と比較してみますと面白いことが見えてきます。
 開発スタッフ260名中、『Splatoon2』に関与した人は50名、『オクト』は42名いますが、どちらも内33名がアセットデザインを担当しているのです。アセットデザインにクレジットされている方は合計44名ですので、75%の人が『Splatoon』シリーズの開発に参加していたことになります。標識やステッカーにSplatoon色が見えるのは納得がいきそうです。

モノリスソフトの部分受託の中身

 モノリスソフトはゼノブレイドシリーズで有名ですが、任天堂開発作品の部分受託も行っています。『どうぶつの森』シリーズは『とびだせ どうぶつの森』以降から行っております。
ではモノリスソフトは『あつ森』では具体的にどこを受託しているのか。それは「アセットデザイン」です。

といいますのも、このアセットデザインに『ゼノブレイドクロス』の開発に関与した方々が何名も見られるからです。表にしてみましょう。

名前(ひらがなor英語) 『あつ森』での役割 『ゼノブレイドクロス』での役割
あおき りか アセットデザイン アイコンデザイン
きたおか じゅん アセットデザイン アイコンデザイン
きよなり ひろこ アセットデザイン アイコンデザイン
たかはし ぶんご アセットデザイン アイコンデザイン
ふくち しょうこ アセットデザイン アイコンデザイン
もりもと えり アセットデザイン エフェクトデザイン
やとう しんじ アセットデザイン アイコンデザイン
わたなべ ゆうじ アセットデザイン アイコンデザイン
どうもと あつし アセットデザイン リード3Dモデリング(キャラクター)
ひろえ としゆき アセットデザイン アイコンデザイン
まつお さなえ アセットデザイン アイコンデザイン
Lim Chee Wai アセットデザイン アイコンデザイン

ちなみにここで挙げた方は全員、『Splatoon2』か『オクト』のいずれかには関与しております。

[2020/05/16追記]ルーヴル美術館らしさはどこから?

 この部分は、公開以降気になった点です。こちらの「あつまれ どうぶつの森」の美術館のモデルはどこ? 一級建築士に聞いてみた」という記事で、『あつ森』の博物館はルーヴル美術館をモデルの1つにしているのではないかという見解がありましたので、急遽『ニンテンドー3DSガイド ルーヴル美術館』と比較してみました。
note.com
 すると、『あつ森』のデザインサポートにはこばやし ひとしときたむら こうせいが所属していますが、両名が『ニンテンドー3DSガイド ルーヴル美術館』の開発に参加しておりました。マルリーの中庭やヘリンボーンの床模様などルーヴル美術館の特徴がある点について納得がいきやすいですね。

まとめと感想

 最後となりましたので、これまでに分かったことをまとめました。

  • 『あつ森』のディレクターやプロデューサーなど主要スタッフは『どうぶつの森』シリーズ経験者で占められるが、それ以外の担当の殆どは未経験者が多い。また、プログラムはSRDとの関係が深い。
  • アセットデザイン44名中、33名は『Splatoon』シリーズ開発に参加。
  • モノリスソフトが受託したのはアセットデザイン。『ゼノブレイドクロス』に参加したスタッフがそこに多く見られるため。
  • 『あつ森』のデザインサポートには『ニンテンドー3DSガイド ルーヴル美術館』に関わった方がいる。ルーヴル美術館らしさがあるのはそれが原因か?

 2021年に20周年となる『どうぶつの森』シリーズですが、その中心スタッフはかなり残っていることが分かりました。個人的に『どうぶつの森』シリーズの開発陣が気になったので調べてみましたが、興味深い点や納得がいった点も見つかり満足でした。ただ、疲れました。

*1:マリオクラブとポールトゥウィンは除いています

*2:企業は除いています