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リングフィットアドベンチャーの開発者について

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 『リングフィットアドベンチャー』(以下、RFA)、話題になったなっているフィットネスアドベンチャーゲームですが、開発者についてはあまり知られていません。
これは『RFA』自体がイロモノと見られていることも原因としてありますが、任天堂の開発体制自体が「よく分からない」ことも考えられるかと思います。
任天堂は日本最大の(とはっきり言ってしまいます)"ゲーム"制作会社として君臨していますが、その陣容はよく分かっていません。
今回、『RFA』のスタッフリストを眺め、その体制がどうなっているのか、『RFA』は任天堂においてどのような位置付けで制作されたのか調べようと試みました。

忙しい人向けまとめ

  • Wii Fitシリーズと『RFA』の連続性はあまりなく、宮本茂の関与も低下している。
  • 要所要所のスタッフにWii Fitシリーズ開発経験者はいるが、数は非常に少ない。
  • ディレクターやリードなど主要スタッフは『Botw』や『オデッセイ』、『スプラトゥーン2』、『バッジとれ~るセンター』開発経験者がいる。

企画制作本部制作という前提

 まず『RFA』は任天堂の企画制作本部によって制作されています。英語ではNintendo Entertainment Planning & Developmentですので、EPDとも表記されます。
企画制作本部は2015年に誕生し、それまでの情報開発本部と企画開発本部の統合体です。つまり、任天堂のソフトを生み出すのはここです。
英語版wikipediaのページにはEPD制作のタイトルが記されています。
en.wikipedia.org
Games developedの表を見ると、『スーパーマリオ オデッセイ』『ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド』『どうぶつの森 ポケットキャンプ』『Nintendo Labo』『スーパーマリオメーカー2』等、数多くのタイトルが企画制作本部の下で生まれています。この、大小様々なタイトルを一つの組織で生み出しているという点が任天堂を分からなくしています。
規模が巨大であるが故に、どれだけの人が企画制作本部に所属しているのか分かりません。現にwikipediaのテンプレートには人員が記されていません。

とにかくどこから手を付ければいいのか考えたくなくなる*1ものですが、あがけるだけあがいたのが以下の内容となります。

『Wii Fit』シリーズとの関連

 『RFA』のスタッフリストを見ると、ディレクターは松永 浩志だということが分かります。松永は『Wii Fit』、『Wii Fit Plus』、『Wii Fit U』でディレクターを務めており、その点では納得がいくと思われます。社長が訊く『Wii Fit』、『Wii Fit Plus』のどちらにも登場しております。
 ただし、その後が問題です。と言いますのも、松永以外にWii Fitシリーズに継続して携わり、RFAにも関わったスタッフはかなり少ないのです。トレーニング監修として松井薫氏が継続して携わっているケースはありますが…。

具体的に挙げていきましょう。まずは4作全てに携わっているスタッフからです。氏名の部分はFandomのNintendo WikiやMoby Gamesの各記事のリンクが貼られています。

氏名 『Wii Fit』役割 『Wii Fit Plus』役割 『Wii Fit U』役割 『RFA』役割
松永浩志 ディレクター ディレクター ディレクター ディレクター
宮本茂 ゼネラルプロデューサー ゼネラルプロデューサー ゼネラルプロデューサー スペシャルサンクス
松井薫*2 トレーニング監修 トレーニング監修 トレーニング監修 トレーニング監修

実はこの3名しかいません。Wii Fitシリーズは一貫してゼネラルプロデューサーを務めていた宮本が、スペシャルサンクスに役割を変更しているのも見逃せません。
『RFA』ではリングコンが相棒ですが、Wii Fitシリーズが常に保持し続けてきた体重計から大きく変わったのも頷けます。

次に『RFA』とWii Fitシリーズで2作以上関わっているスタッフです。

氏名 『Wii Fit』役割 『Wii Fit Plus』役割 『Wii Fit U』役割 『RFA』役割
吉田繁樹 スペシャルサンクス スペシャルサンクス なし シネマティックディレクター
宮川洋平 サウンドデザイン サウンドデザイン なし サウンドデザイン
澤谷 祐司 プログラム メインプログラム なし プログラムサポート

実はもう1人、SRD取締役社長の中郷俊彦が該当するのですが解説することが難しいので省いています。
まとめて見ると、要所要所にWii Fitシリーズを知っているスタッフがいるようになっています。
 吉田 繁樹はWii Fitシリーズではスペシャルサンクスとなっていますが、『ゼルダの伝説 スカイウォードソード』ではシネマシーンのディレクターを担当しています。吉田はムービーとして実際に動かす際の調整の困難さを語っています。
 宮川 洋平はWii Fitシリーズでサウンドデザインを担当しています。宮川は効果音を作る際に以下のことに気をつけていたと述べております。

『Wii Fit』の効果音で、とくに気をつけたのは
うれしく感じられるような、ほめる系と
失敗したときの、残念系の効果音です。
ほめるときはいくらでもうれしく感じてもらえていいんです。
でも、残念系の音については、毎日プレイするものだけに
とくに注意しながらつくりました。
クイズ番組などで、間違えると「ブッブー」って鳴りますよね。
僕は、あのようにあからさまに「ブッブー」と鳴らすのがイヤで、
ダメということがすぐにわかるようにしつつも、
お客さんをできるだけイヤな気持ちにさせないように、
そこはかなり意識してつくりました。
出典:社長が訊く『Wii Fit』

 澤谷 祐司はWii Fitシリーズでプログラムを担当しています。インタビューなどには登場しておりませんので詳しいことは分かりませんが、『RFA』でプログラムサポートに移っていますので補佐へと変わったのでしょう。ちなみに澤谷は2020年03月20日発売の『あつまれ どうぶつの森』でもプログラムアドバイザーとして加わっています。
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この他、『Wii Fit』シリーズどれか1作品と『RFA』に関わったスタッフも見ましたが、10名もいませんでした。
『Wii Fit』シリーズと『RFA』のスタッフの連続性は中核にのみ存在すると言っても過言ではなく、しかもその手綱を握る者は宮本から松永へ変わっています。

主要スタッフについて

 『Wii Fit』シリーズとの関連は以上です。今度はそれ以外の主要スタッフについて見ていきましょう。見ていくのは以下の25種です。

  • サブディレクター
  • プログラムディレクター
  • アートディレクター
  • サウンドディレクター
  • プロジェクトマネージャー
  • リードゲームデザイン - ゲームシステム
  • リードゲームデザイン - バトル
  • リードゲームデザイン - ミニゲーム
  • レベルデザイン - コース
  • ゲームデザイン - シークエンス
  • ゲームデザイン - ミニゲーム
  • シナリオ&スクリプト
  • スクリプト
  • リードプログラマー
  • リードアーティスト - NPC/アイテム
  • リードアーティスト - ランドスケープ/ミニゲーム
  • リードアーティスト - ダンジョン
  • リードアーティスト - キャラクターアクション
  • リードアーティスト - プレイヤー/アイテム
  • リードアーティスト - プレイヤーアクション
  • リードアーティスト - エネミー
  • リードアーティスト - UI
  • リードアーティスト - VFX
  • リードアーティスト - ミニゲーム
  • リードアーティスト - ミニゲームアクション

サブディレクター

北原慎治
『大合奏!バンドブラザーズDX』でプログラムディレクターを担当。なので、珍しいプログラマーからのディレクター。
ヨガとは違い、リズムにのることが重要だからでしょうか?

プログラムディレクター

岡根 慎治
『ゼルダの伝説 トライフォース3銃士』でプログラミングリード/プレイヤープログラミングを担当。プログラムディレクターは今作が初です。

アートディレクター

木内崇文。2004年入社。
『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』でリードアーティスト:エネミーを担当していました。

サウンドディレクター

水田 真人。『ゼルダの伝説 トライフォース3銃士』でサウンドエフェクト/サウンドプログラミングを担当。社長が訊く『ゼルダの伝説 スカイウォードソード』の第5回:「濃密な空と町」篇で登場しましたので、そちらを読むことでも彼の音作りの努力が垣間見えます。

プロジェクトマネージャー

みずたに しょうへい‬。『バッジとれ〜るセンター』のディレクターを担当。
情報がかなり少ないですが、彼のように『バッジとれ~るセンター』に携わっているスタッフは少なからずいます。

リードゲームデザイン - ゲームシステム

山本 直弥。2009年入社。任天堂公式サイトの先輩紹介2014でも登場しています。
『RFA』前には『Miitopia』のゲームデザインを担当していました。彼は入社試験の面接時に「ハードとソフトに関わりたい」とおっしゃっていましたが、彼の役割上リングコンとの関わりは必然的です。
…改めてこの会社は凄まじいなと、記事を見て思いました。

リードゲームデザイン - バトル

鈴木 亮祐。2009年入社。彼もまた先輩紹介2014に登場しています(山本と同期)。
『バッジとれ~るセンター』に関わっていましたが、『だるめしスポーツ店』では「野球の気持ちいい瞬間の追求」を目指し、ゲームの軸をずらさず磨いていったことがインタビューからも伺えます。

リードゲームデザイン - ミニゲーム

岩佐 雄一。所属は1-Up Studioで、インタビュー記事も昔はあったそうです。
『RFA』前ですと『スーパーマリオ オデッセイ』でレベルデザインに関わっています。

レベルデザイン - コース

3名います。
中江 栄作。『トモダチコレクション 新生活』ではサブディレクター、プログラムマネージャーを担当しており、プログラマー出身のゲームデザイナーです。『RFA』までの6年間がこちらからは分かりませんので、この変わりっぷりは説明が出来ませんが…。

かんの りゅうたろう。『Splatoon2』とそのDLC、『オクト・エキスパンション』でレベルデザインを担当していました。

他にもひらやま さとしという方がいますが、この方の情報がありませんでした。

ゲームデザイン - シークエンス

おおみや そうた。『東北大学加齢医学研究所 川島隆太教授監修 脳を鍛える大人のNintendo Switchトレーニング』でも関わっているそうですが、それ以外の情報がありません。

ゲームデザイン - ミニゲーム

麓 旺二郎。ハンドルネームの「もっぴん」の方が馴染み深い、『Downwell』の開発者です。
御存知の方も多いかと思われますが、彼は2018年1月に任天堂を退社しています。
『RFA』は2019年10月18日に発売していますが、そうなりますとかなり長い間開発をしていたのが見えてきそうです。

シナリオ&スクリプト

白川 真理。直近ですと『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』のゲームデザインに関わっていましたが、『もぎたてチンクルのばら色ルッピーランド』の方が知名度が高いかも知れません。田邊 賢輔曰く「日本一怪しいOL」。
星のカービィシリーズのコーディネーターもされていました。
そんな方ですが、シナリオでクレジットされた事はこれが初です。
色々な意味で奇抜なストーリー展開の本作ですが、それは彼女の役割も大きそうです。

スクリプト

伊藤 裕一朗。『Miitopia』のディレクターでした。
『Miitopia』も『RFA』もステージ選択制ですので、お話の動かし方は類似しています。その辺りがこの役割になった理由でしょうか?
(初っ端から悪役が出てきて、毎度毎度魔王(ドラゴ)を意識し続けるのも似てます)

リードプログラマー

3名いますが、全員情報がありません…。

リードアーティスト

  • NPC/アイテム:蔭山 大輔。直近は『ARMS』のキャラクターアートリードです。また、デザインディレクターの経験も『Wii Sports Resort』、『Nintendogs + Cats』であります。
  • ランドスケープ/ミニゲーム:しらい しゅんいち。『RFA』前は『Splatoon2』でアートを担当していました。
  • ダンジョン:にしべ やすとも。『スーパーマリオメーカー2』でバックグラウンドアートを担当しました。
  • キャラクターアクション:ふじい かずのり。『マリオカート8 デラックス』でキャラクターデザイン、『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』でエネミーアートに携わりました。
  • プレイヤー/アイテム:ひらおか まなぶ。『スプラトゥーン2』でアート、『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』でNPCアートに携わりました
  • プレイヤーアクション:おくなか みずき。『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』でアニメーション(プレイヤーアクション)を担当しました。ちなみにアニメーション(プレイヤーアクション)の担当は彼だけです。
  • エネミー:濱田 裕基。2011年入社。彼は仕事を読み解くキーワードの「好循環を生むデザイン」で『RFA』の敵キャラクターのデザインについて語ってくれています。

このゲームでは、いかに楽しく運動をしてもらうかということが重要で、しかも運動を長く続けていただくことが、とても大切なテーマでした。敵をデザインするうえではシナリオも必要でしたが、シナリオの決定をただ待つのではなく敵担当デザイナーの立場からさまざまな提案をし、コミュニケーションをはかり推し進めました。そもそも敵キャラクターはいろんな場所や、いろんな話の流れで登場します。そこで、シナリオ担当のプランナーに、このような敵を置けば、このような話ができるんじゃないかと提案することで、物語をふくらますことができれば、と考えたんですね。


たとえばドラゴというボスが登場しますが、はじめはストーリーに絡んだ細かな設定などなく、単に敵の親玉という感じだったのです。でも、開発スタッフたちと会話を続けていくなかで、ドラゴは世界を支配するために、トレーニングをしているという設定につながったのです。そしてたくさん出てくるザコ敵は、ドラゴのトレーニング器具ということにして、たとえばダンベルに似たカニを登場させるなど、話はどんどんふくらんでいったのです。
出典:仕事を読み解くキーワード:好循環を生むデザイン|採用情報|任天堂

  • UI:そのやま こうじ。『バッジとれ~るセンター』でキャラクターデザイン、グラフィックデザイン(UI/3D)、バッジデザインなど様々な役割をこなしたそうです。
  • VFX:にしかわ けいすけ。『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』でVFXデザインに携わりました。
  • ミニゲーム:あべ たかし。情報が少なく、ここでは何とも言えません。
  • ミニゲームアクション:かわきた まさゆき。『スーパーマリオ オデッセイ』でキャラクターアートに携わりました。それ以外の情報が散逸しています…。

巨人へのアプローチ

それでは最後にまとめと行きましょう。

  • Wii Fitシリーズと『RFA』の連続性はあまりなく、宮本茂の関与も低下している。
  • 要所要所のスタッフにWii Fitシリーズ開発経験者はいるが、数は非常に少ない。
  • ディレクターやリードなど主要スタッフは『Botw』や『オデッセイ』、『スプラトゥーン2』、『バッジとれ~るセンター』開発経験者がいる。

『リングフィットアドベンチャー』は2019年発売の作品ですが、既に『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』や『スーパーマリオ オデッセイ』『スプラトゥーン2』など2017年を彩った作品の開発経験者が主要スタッフとして関わっています。時が流れるのは早いものです。また、『バッジとれ~るセンター』や、まとめからは抜かしてしまいましたが『Miitopia』開発経験者もいました。

今回のスタッフ分析で任天堂系列を初めて調査しましたが、このゲーム業界の巨人と接して分かるのは「言うほど特定の"派閥"がある訳でもない」ということです。
新規IP故かも知れませんが、リングフィットアドベンチャーの開発スタッフには適性ある人物が送り込まれている(あるいは参加している)面が見えます。サブディレクターの北原慎治や、リードゲームデザイン - ゲームシステム担当の山本直弥がその典型例とも言えるでしょう。

こういう繊細さがあるからこそ、今もなお最前線に立てるのでしょうか。私から言えるのはそれぐらいです。

*1:この記事はRFA発売時には作ろうと考えていたのですが、それがここまで長引いたのはこれが原因です

*2:役割名の表記ゆれが激しいので、トレーニング監修でまとめています。