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【考察】並行開発、ハル研 x バンプールの新たな形『星のカービィ Wii デラックス』【スタッフクレジット】

今回は2023年02月24日に発売された『星のカービィ Wii デラックス』のスタッフクレジットを見ていきます(スタッフリスト、クレジットなど色々試してみましたが検索の都合上、これからスタッフクレジットとしていきます。既存記事も順次変えていく予定です)。

カービィwikiなどではネタバレとして、発売1か月後までページが作られない設定となっておりますがここでは話していきます。知りたい方は『WiiDX』のクレジットを覗いてみてください。メニュー→ムービー→クレジットでいけます。スタッフを見て欲しいというのもありますが、そこで流れる音楽もまたいいものですから!

なお今回よりchatGPTを用いて、どのような可能性があるか探ってもらっています。こういう、条件が決まった答えが曖昧な問いには活躍しやすいようですしね。今後も機会があれば利用できればと思います。

<忙しい方向けまとめ>(最後のまとめと同一です)

  1. 『WiiDX』にはディレクターの神山 達哉氏やリードアクションプログラマー住友 克禎氏、テクニカルディレクターの平田 雄大氏、プロジェクトマネージャーの永田 善裕氏など『ディスカバ』で大きな担当を務めた人がいない。
  2. 『ディスカバ』『グルメフェス』ではテクニカルディレクターに表記が変更されても、『WiiDX』では元に戻るなどその状況に応じて担当の名称も柔軟に変更されていると読み取れる。
  3. 『ディスカバ』と『WiiDX』では全体の統括やテキスト、ストーリーの監修と根本的なキャラクターやステージ、UIのアートデザインは中心人物が同一。また、開発環境担当者もほぼ同じ。しかしそれ以外は異なっており、グループを明確に分けられるという理由から『ディスカバ』と並行開発の期間があったと考えられる。
  4. バンプールとの協力がより深化。各社からリーダーを出し、かつプログラムといった同じ担当でハル研、バンプールの人の名前が見えるのは初の現象。
  5. 東京ハル研がカービィの開発で主体的な役割を持つのは終わりを迎えたと予想。

ディスカバリーとは異なる体制

『WiiDX』のスタッフクレジットを調べた際に思ったのが『ディスカバ』とはずいぶんと違うなぁという点です。何故そう思ったのか見ていきましょう。

いないスタッフ

この様変わりしたという話は、『WiiDX』にいないスタッフを見れば分かります。

氏名 『ディスカバ』における担当
神山 達哉 ディレクター
平田 雄大 テクニカルディレクター
住友 克禎 リードアクションプログラマー
木村 宗理 リードレンダリングプログラマー
佐久間 健一 キャラクターアーティスト
本田 優紀 フィールドアーティスト
大西 洋 ネットワークプログラマー
永田 善裕 プロジェクトマネージメント

『ディスカバ』に大きな関与があったと予想される担当でも8人いません。長年カービィのアクションに携わる住友氏やプログラムディレクターを何度も務める大西氏(a.k.a コックオオニシ)などが実は『WiiDX』にいないのです。

まぁ、大西氏は『グルメフェス』でテクニカルディレクターを務めたため分かりますが、住友氏がいないのは少々驚きでした。スペシャルサンクスにもいませんからね。

また、スタッフクレジットで複数人が出る担当も順番を見ると面白いです。順番は大体が貢献度や関与した度合いによって変わってくるのです(たまに五十音順やアルファベット順も出てきますが)。例えば『ディスカバ』におけるキャラクターアーティストの佐久間氏、フィールドアーティストの本田氏、プロジェクトマネージャーの永田氏はそれぞれ1番目に出てきますが、やはり『WiiDX』にいません

適当に作られていない担当

この担当について「そんな考えてみるものなのか?」という指摘もあるとは思います。下の表は『Wii』『スタアラ』『ディスカバ』『WiiDX』の担当の数を比較しています。とはいえ全部だと大変なので、リード・ディレクターが付く担当とプロジェクトマネージメントで比較しています。

星のカービィ Wii(2011)担当 人数 星のカービィ スターアライズ(2018)担当 人数 星のカービィ ディスカバリー(2022)担当 人数 星のカービィ Wii デラックス(2023)担当 人数
ディレクター 1 ゼネラルディレクター 1 ゼネラルディレクター 1 ゼネラルディレクター 1
アシスタントディレクター 2 シーケンスディレクター 1 ディレクター 1 ディレクター 1
プログラムディレクター 1 レベルデザインディレクター 1 レベルデザインディレクター 1 レベルデザインディレクター 1
リードアクションプログラム 1 アシスタントディレクター 3 テクニカルディレクター 1 プログラムディレクター 1
デザインディレクター 1 プログラムディレクター 1 リードテクニカルプログラマー 1 リードプログラマー 2
リードキャラクターデザイン 2 リードアクションプログラム 1 リードアクションプログラマー 1 アートディレクター 1
リードモチーフデザイン 1 リードプログラム 1 リードキャラクタープログラマー 1 リードアーティスト 2
サブゲームディレクター 2 リードテクニカルプログラム 1 リードレンダリングプログラマー 1 フィールドアートディレクター 1
マネージングディレクター 2 リードUIプログラム 1 アートディレクター 1 UIアートディレクター 1
プロジェクトマネージメント 1 デザインディレクター 1 リードキャラクターアーティスト 1 リードミュージック 2
リードデザイン 1 リードフィールドアーティスト 1 プロジェクトマネージメント 8
リードテクニカルデザイン 1 リードプロシージャフィールドアーティスト 1
リードモチーフデザイン 1 リードUIアーティスト 2
リードUIデザイン 1 リードサウンド 1
リードサウンド 1 リードミュージック 1
プロジェクトマネージメント 2 プロジェクトマネージメント 4
合計 14 合計 19 合計 20 合計 21


2011年発売の『Wii』はディレクターにアシスタントディレクター、プログラムとデザインのディレクターと各部門のリーダーという比較的コンパクトな形でした。しかし、後年の『星のカービィ』シリーズ本編は技術的要件の拡大、チームの成長といった考えられる要因によりリーダーが細かく分かれるようになりました。この辺りは同じ2Dアクションと言えどプラットフォームがWiiからNintendo Switchに変わった、『Wii』と『スタアラ』で比較するととても分かりやすいです。

そして、『星のカービィ』シリーズ本編初の3Dアクションとなった『ディスカバ』ではプログラムディレクターからテクニカルディレクターに変更、デザインはアートに、モチーフはフィールドへとこれまでの名称も変わりました。デザインはゲームデザインとの混同になりがちとのことからアートにした方が良いのは分かりますし、モチーフも分かりづらいためフィールドへの名称変更は納得がいきます

プログラムディレクターからテクニカルディレクターについてはChatGPTに尋ねた所、3つの可能性が出ました。1.開発の専門性を反映、2.役割の多様化に対応、3.ソフトウェア開発の進化に対応です。総じて現代的かつ柔軟な印象をテクニカルディレクターは持っています。

AIに『ディスカバ』でプログラムディレクターからテクニカルディレクターに名称が変わった理由を尋ねる

このテクニカルディレクターという名称は『グルメフェス』でも同じですが『WiiDX』を見ると、プログラムディレクターに戻っています。これは3Dアクションではより柔軟に展開しやすいテクニカルディレクターとしての立ち位置よりかは、これまでの経験からプログラムディレクターの方が良いと判断したと考えられます。素人がハル研究所を見ても、慣れない3Dアクションに比べて2Dアクションはいくらか御しやすいジャンルであるとは考えられます

逆にやや古くなっていたデザイン、モチーフという名称はアート、フィールドに変換されたままです。

このように、スタッフクレジットの担当1つ1つを見てもその状況に応じて適宜名称の変更が為されていることが読み取れます。まぁ、人生と利益に関わる案件の担当の名称については真面目に考えるのが普通だと思いますが。

担当名とやっていることが違えばチームで動く際に行動が明確でなくなり、協力が困難になります。事実、後にアートディレクターの藤田氏がアーティストにどんな役割があるかについて以下のように展開をしておりました。

まずデザインやゲームアートを制作する仕事には、「キャラクターアーティスト」「エフェクトアーティスト」「キャラクターモーション」「フィールドアーティスト」「UIアーティスト」「アートワーク」といったセクションがあります。
各セクションの仕事内容を簡単に説明します。

「キャラクターアーティスト」はキャラクターやギミックのデザインを考えてモデルを作成する仕事です。
デザイン、モデル作成は分業することが多いですが、デザインからモデリング、アニメーションやエフェクトまで1人のアーティストが対応することもあります。

「エフェクトアーティスト」はキャラクターが走るときに出る煙や、敵に攻撃が当たったときに出るエフェクトを作成します。
キャラクターのエフェクト以外にも、フィールドに置かれた火山の煙なども作成します。
エフェクトは専用のツールで作成するのですが、テクスチャを作ったり、3Dモデルを作ったりと仕事の幅は広いです。

「キャラクターモーション」はキャラクターにアニメーションをつける仕事です。
キャラクターアーティストが作成したモデルを使って、仕様や、世界観にあわせてアニメーションをつけます。

「フィールドアーティスト」は背景デザインを考えて、背景モデルを作成し、ゲームデザイナーが作ったフィールドに背景モデルを配置します。

「UIアーティスト」はゲームのタイトル画面やポーズ画面、体力ゲージなどを作成します。
他にもロゴを作成したり、世界観にあったフォントを選んだり、海外の言語に翻訳されたときに違和感のないように文字やデザインを調整したりするのも仕事です。

「アートワーク」はゲームのパッケージデザインや、ゲームの世界観を反映した広報素材を作る仕事です。
引用:『星のカービィ Wii デラックス』の仕事 アートディレクター編 - デザイナー/アーティストの仕事

これらはスタッフクレジットを見た方は一発で分かるかと思いますが、それぞれキャラクターアーティスト、エフェクトアーティスト、キャラクターアニメーション、フィールドアーティスト、UIアーティスト、アートワークに対応しております。内部で設定したセクションと外部に公開した中身が同じというのはそれだけで立派な話ですが、何より「どうしてこの担当があるのか」という問いについて言語化が為されているという点が大事です。巷ではこうだからという理由で実態にそぐわないものを入れても機能しませんが、ハル研究所は身の丈に合った成長を着実に進めていることが分かります。

さて、若干脱線はしましたが、このいないスタッフを考えますと「これって並行開発?」という考えが浮かんできます。

ディスカバリーとの並行開発説

まず、前提としてハル研は並行開発だと明言していません。私の勝手な予想、悪く言えば妄想に過ぎません。
まぁ私のブログを普段ご覧になっている方は「はいはいいつものやつ」と思いますが、念のためです。

主要担当のディスカバリーとの一致

並行開発という線を考えるには、先ほどのようにリーダー・ディレクターなどを見ていくと分かりやすいと考えました。そこで『ディスカバ』の担当と比較しています。まずは、『ディスカバ』にいた主要人物が『WiiDX』に関わっていたか見ていきます。

ここで例えばリーダーが殆ど同じ、あるいはいくつかのグループに分けられるといった話が出てくれば並行開発の可能性はあると見なしています。リーダーが殆ど同じというのは分かりやすいですが、いくつかのグループに分けられるのであれば一定の体制の元動いていると解釈できるからです。

氏名 星のカービィ ディスカバリー(2022)担当 星のカービィ Wii デラックス(2023)担当
熊崎 信也 ゼネラルディレクター、テーマソング:作詞 ゼネラルディレクター
神山 達哉 ディレクター なし
遠藤 裕貴 レベルデザインディレクター レベルデザインディレクター
平田 雄大 テクニカルディレクター なし
中野 宏晃 リードテクニカルプログラマー テクニカルサポート
住友 克禎 リードアクションプログラマー なし
野末 高士 リードキャラクタープログラマー リードプログラマー
木村 宗理 リードレンダリングプログラマー なし
ファーマン 力 アートディレクター スペシャルサンクス
北 健一郎 リードキャラクターアーティスト キャラクターアートディレクター
森下 大輔 リードフィールドアーティスト フィールドアートディレクター
菅野 晃宏 リードエンバイロメントアーティスト なし
村木 菜津弥 リードプロシージャルフィールドアーティスト なし
河田 茂幸 リードUIアーティスト UIアーティスト
伊藤 春香 リードUIアーティスト UIアートディレクター
小笠原 雄太 リードサウンド、テーマソング:編曲 サウンド
安藤 浩和 リードミュージック リードミュージック
永田 善裕 プロジェクトマネージメント なし
妹尾 文香 プロジェクトマネージメント プロジェクトマネージメント
望月 哲也 プロジェクトマネージメント プロジェクトマネージメント
山下 敦子 プロジェクトマネージメント プロジェクトマネージメント

『ディスカバ』で重要な担当を務めた21人中、7人は『WiiDX』におりません。他にも『WiiDX』における担当との比較、そして同じ担当における順番も見ていきます。

担当との比較では

  • リードテクニカルプログラマーの中野氏はテクニカルサポートに(14人中1人目)
  • アートディレクターのファーマン氏はスペシャルサンクスに(18人中3人目)
  • リードUIアーティストの河田氏はUIアーティストに(9人中4人目)
  • リードサウンド(テーマソング:編曲)の小笠原氏はサウンドに(4人中3人目)

こうなります。担当名からリーダーが外されれば監修の業務は大きく減ると考えられます。

無論、以下のようにどちらでも重要な担当を務める方もいらっしゃいます。

  • ゼネラルディレクターの熊崎氏
  • レベルデザインディレクターの遠藤氏
  • リードキャラクタープログラマー(リードプログラマー)の野末氏
  • リードキャラクターアーティスト(キャラクターアートディレクター)の北氏
  • リードフィールドアーティスト(フィールドアートディレクター)の森下氏
  • リードUIアーティスト(UIアートディレクター)の伊藤氏
  • リードミュージック(リードミュージック)の安藤氏

とはいえそれでも7人です。いなかった7人に加えて『WiiDX』の比重が下がっている4人の合計11人を考えますと『ディスカバ』と『Wiiデラックス』が同じ体制で作られたものではなく、例えるなら3つの区分―1.どちらも関わる中心人物、2.『ディスカバ』専門、3.『WiiDX』専門―に分けられると言えます。
「じゃあ『WiiDX』専門は?」となります。

氏名 星のカービィ ディスカバリー(2022)担当 星のカービィ Wii デラックス(2023)担当
熊崎 信也 ゼネラルディレクター、テーマソング:作詞 ゼネラルディレクター
渡辺 豊 ゲームデザイナー ディレクター
谷藤 圭太 ゲームデザイナー セクションディレクター
遠藤 裕貴 レベルデザインディレクター レベルデザインディレクター
田島 章 プログラマー プログラムディレクター
野末 高士 リードキャラクタープログラマー リードプログラマー
福田 洋平 なし リードプログラマー
藤田 剛志 なし アートディレクター
佐藤 真美子 キャラクターアーティスト リードアーティスト
辻 なつき フィールドアーティスト リードアーティスト
北 健一郎 リードキャラクターアーティスト キャラクターアートディレクター
森下 大輔 リードフィールドアーティスト フィールドアートディレクター
伊藤 春香 リードUIアーティスト UIアートディレクター
安藤 浩和 リードミュージック リードミュージック
下岡 優希 サウンド リードミュージック
鈴木 義樹 なし プロジェクトマネージメント
金井 優 なし プロジェクトマネージメント
妹尾 文香 プロジェクトマネージメント プロジェクトマネージメント
菊池 達也 なし プロジェクトマネージメント
齋藤 伸也 なし プロジェクトマネージメント
木梨 玲 プロデューサー プロジェクトマネージメント
山下 敦子 プロジェクトマネージメント プロジェクトマネージメント
望月 哲也 プロジェクトマネージメント プロジェクトマネージメント

『WiiDX』で重要な担当を務めた23人中、6人が『ディスカバ』におりません。『ディスカバ』における担当との比較、そして同じ担当における順番も見ていきます。

担当との比較では

  • ゲームデザイナー(13人中12人目)だった渡辺氏がディレクターに
  • ゲームデザイナー(13人中11人目)だった谷藤氏がセクションディレクターに
  • プログラマー(19人中16人目)だった田島氏がプログラムディレクターに
  • キャラクターアーティスト(11人中4人目)だった佐藤氏がリードアーティストに
  • フィールドアーティスト(16人中6人目)だった辻氏がリードアーティストに
  • サウンド(2人中2人目)だった下岡氏がリードミュージックに(2人中2人目)

と、6人が『WiiDX』で比重が上がっていることが分かります。

ここまでをまとめますと

  1. どちらも関わる中心人物:7人
  2. 『ディスカバ』中心:11人
  3. 『WiiDX』中心:12人

となります。

一致しない所とする所

この、『ディスカバ』と一致する所としない所を詳しく見ていきましょう。

一致する所は以下の5か所です。

  • ゼネラルディレクター
  • キャラクターアート
  • フィールドアート
  • UIアート
  • リードミュージック

ディレクターやプログラム関連、アートのVFXは一致しません。つまり、全体の統括やテキスト、ストーリーの監修と根本的なキャラクターやステージ、UIのアートデザイン、そして後述しますが開発環境は中心人物が同一です。音楽は同じとも言えますが『ディスカバ』でリードミュージックがあったことを踏まえると形が異なると踏んでいます。リーダーやディレクターに限定しますと抜け落ちますが、Frat Framework プログラマーやテクニカルサポートの多くは『ディスカバ』と同一のため、これに開発環境も加わります

こういった、同じ所はありつつも方向性でスタッフを変えていくやり方は、どこかしらで並行して開発する期間が必要と考えられます。動いていないスタッフが無駄になってしまうからです。このような内容がスタッフクレジットが読み取れることから、私は『ディスカバ』と『WiiDX』が少なくとも一時期は並行して開発していたのではないかと考えております。

バンプールとの協力が深化

また、スタッフそのものを見ても興味深い現象が発生しています。それが見出しにありますように「バンプールと"混ざる"」というものです。バンプールについては『スーパーカービィハンターズ』より『星のカービィ』シリーズの開発に参加しております。

簡単ではありますが、過去の記事でも挙げております。

www.papenspiling.com
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これまでのバンプール

これまでのバンプールによる開発は基本的にバンプールの文化に則った上で現場をバンプールで回す形でした。例えば『カビファ2』のスタッフクレジットを抜き出すとこうなります。

氏名 カービィファイターズ2(2020)ゲームデザイン
渡邊 祐基 リードバトルデザイン
久保川 剛彦 バトルデザイン
草野 辰朗 バトルデザイン
キム チド UIプランニング
森澤 和則 UIプランニング

こういった担当名は基本的に2020年現在のハル研究所は用いません。名前の時点で文化が違うことが分かります。次にプログラムを見ていきましょう。

氏名 カービィファイターズ2(2020)プログラム
福田 洋平 プログラム
中村 貴也 プログラム
大林 智宏 プログラム
山手 裕也 プログラム
尾田 悦麻 プログラム
小林 寛和 プログラム
吉川 康治 プログラム
大竹 智 プログラム

お分かりかと思いますが、ハル研のプログラマーがいないのです。気になる方は調べてみると分かりますが、バンプールが『星のカービィ』シリーズに参入した初のタイトル『Sカビハン』か、それより前に遡ると『ザ・ローリング・ウエスタン』シリーズや全く別の作品に関わっていた方が殆どです。監修としてプログラムディレクターで大西氏が入ってはおりますが。バンプールはバンプールで作品を作り、監修はハル研が行うというのが通例でした。

『ディスカバ』においては、一部のプログラマーやフィールドアーティストが参加する、いわばバンプールが加勢する形も生まれました。

ハル研 x バンプール

しかし『WiiDX』ではこれまでとは違った形を見せました。それを象徴するのがリードプログラマー/アーティストです。というのも、『WiiDX』のリードプログラマー/アーティストはハル研・バンプールから1人ずつが出されている形なのです。

  • 野末 高士(ハル研)
  • 福田 洋平(バンプール)
  • 佐藤 真美子(ハル研)
  • 辻 なつき(バンプール)

不正確な質問ですが、それぞれの会社からリードプログラマーを出す理由についてChatGPTに尋ねてみました。

AIにリードプログラマーを各社から出す理由を尋ねる


両社の技術力の結集、プロジェクト進行管理、リスクマネジメントといった文言が並びますが、要はそれだけの連携があったとAIは推察しています。実際、『WiiDX』のプログラマーを表にしますと、こうなります。

氏名 所属(確度は80%程です)
蒲地 智裕 ハル研
八坂 俊 ハル研
夏見 勇矢 ハル研
有松 優 多分ハル研
中島 将浩 多分ハル研
藤村 悠太朗 多分ハル研
中西 悟 多分ハル研
滝 直也 多分ハル研
別府 辰哉 多分ハル研
吉川 康治 バンプール
大竹 智 バンプール
酒井 健雄 多分バンプール
中村 貴也 バンプール
大林 智宏 バンプール
尾田 悦麻 多分バンプール
木戸場 裕政 不明
HSIEN-WEN KANG 不明

確度が正直曖昧ですし、「多分」と付いている方は中途やプロジェクト採用による転職の可能性も考慮しております。何も分からない人は不明にカテゴライズしております。長年同じ会社で貢献するというのはあくまでも働き方の一つであって、それが全てではないですからね。

ともかく、同じプロジェクトで別の企業が同じレベルで関わるというのは初の現象です。これはハル研究所の要請も考えられますが、それを受諾したバンプールにも相応の覚悟が必要でしょう。そもそもな話、ここ数年間バンプールはハル研究所との協力でしか見ません。所属する社員さんにとってそれでよいのかは分かりませんが、このように数年続くだけのうま味はあるのだと思います。でなければ本来はカービィに関わることが無かったゲーム制作会社が数年も時間を割くことはありません。ムービーでお世話になるD.A.Gとはまたレベル感が異なる話ですし。

それに、愛社心というのが根強い、それこそ任天堂以上にも感じるハル研究所が相手です。特に現在は山梨開発センターがカービィの基点ですから決して簡単な話ではないと思います。

そういう訳で、ここまでハル研とバンプールの関わりについて話してきましたが、最後に「東京ハル研はどうなった?」という話になります。

山梨・東京という区分は消滅した?

2020年代のハル研における『星のカービィ』シリーズを見てみますと、大体がハル研究所山梨開発センターとバンプールです。いわゆる東京ハル研が活躍した作品が出てきません。無論『はたらくUFO』や『歩数で勝負 カメさんぽ』のようなケースもありましたが、『カービィ バトルデラックス!』以降作品を目にしません。

これについては『グルメフェス』の際に話題に挙げています。
www.papenspiling.com


このような現状から、「山梨ハル研、東京ハル研という区分は消滅し、東京ハル研が『星のカービィ』シリーズの開発において主体的な役割を持つことは無くなったのではないか」と考えております。
勿論、オフィスの利便性から神田スクエア(ハル研が現在入居中の複合施設)にも開発担当のスタッフがいらっしゃると思います。が、それらは山梨を本拠地に再編成されたと考えております。

事実、山梨県甲府市竜王町にある開発センター(ハル研)と東京都新宿区西新宿にあるオフィスビル(バンプール)でこのような連携ができるのであれば、わざわざ山梨と東京で別個で作る必要もないのでしょう。この辺りはゼネラルディレクターの熊崎氏を始め多くのディレクターやリーダーが山梨で生まれてきた歴史があり、そのスタッフの力を最大限活かすならば山梨を基点にカービィの開発を展開した方が良いでしょう。この話は、COVID‑19の流行によるリモートワークの急速な発達の結果、テレワークも一つの働き方として認知されるようになったのも原因の1つとして考えられますが。

東京は統合?

ただ、『WiiDX』のスペシャルサンクスにはかつて『Wii』のサブゲームディレクターを務めた増田一繫氏などがいらっしゃいます。そちらはそちらで何か作っているのではとも思いますし、それがカービィである可能性も0ではありませんが。現状では何も材料がない以上この判断に留まります。

最後に、この小規模な開発センターから作品が見られない点についてChatGPTに相談しています。

AIに東京から作品が出ない可能性を尋ねる その1

私の設定の仕方が悪いこともありますためやや頓珍漢な答えも返ってきていますが整理しますと、機能分化合理化人材の問題辺りは可能性としてありそうだと考えております。そして、この質問ではオフィス移転やバンプールの話がないためそれを含めると可能性に変化がないか、さらに尋ねています。

AIに東京から作品が出ない可能性を尋ねる その2

この中で気になったのは4の経営戦略の変更です。特にシリーズ外の新しいゲームの開発に注力することはそのままHAL Eggのことだと言えます。そもそも東京という多数の企業が存在する立地を考えれば、自社を中心に開発するよりかは外部との協力、新たなアイデアの創造に特化した方が効率的とも考えられます。グッズの話にはなりますが、例えばカービィカフェの運営を行うベネリックは同じ神田町にあります(距離にして1.2kmです)からブランドマネジメント課やワープスターは東京の方がいいです。

まとめ

まとめです。

  1. 『WiiDX』にはディレクターの神山 達哉氏やリードアクションプログラマー住友 克禎氏、テクニカルディレクターの平田 雄大氏、プロジェクトマネージャーの永田 善裕氏など『ディスカバ』で大きな担当を務めた人がいない。
  2. 『ディスカバ』『グルメフェス』ではテクニカルディレクターに表記が変更されても、『WiiDX』では元に戻るなどその状況に応じて担当の名称も柔軟に変更されていると読み取れる。
  3. 『ディスカバ』と『WiiDX』では全体の統括やテキスト、ストーリーの監修と根本的なキャラクターやステージ、UIのアートデザインは中心人物が同一。また、開発環境担当者もほぼ同じ。しかしそれ以外は異なっており、グループを明確に分けられるという理由から『ディスカバ』と並行開発の期間があったと考えられる。
  4. バンプールとの協力がより深化。各社からリーダーを出し、かつプログラムといった同じ担当でハル研、バンプールの人の名前が見えるのは初の現象。
  5. 東京ハル研がカービィの開発で主体的な役割を持つのは終わりを迎えたと予想。

『WiiDX』は11年前発売された『Wii』のリメイク作品ですが、スタッフクレジットとしては非常に興味深く新たな変化が読み取れました。この並行開発という視点はもしかしたらゲームフリークの2022年の展開について考察したことも影響しているのかも知れません。あちらは多くが『アルセウス』と『SV』で同じでしたが。開発スタイルや関与度、プロジェクト規模、スキルセットの比較などAIからも様々な視点が提示されますが、色々な作品を見るのもまた乙なものですね。調べるのはとても大変ですが、より面白くなります。

AIにスタッフクレジットの分析に比較の視点を持ち込むとどうなるか尋ねる

おまけ:各スタッフの初登場した年


この初登場した年といいますのは、スタッフクレジットで初めて登場した年を指します。入社年という概念は用いてきましたが、そもそも入社した年が分からない方が増えてきた、転職された方の正確なキャリアを推定できなくなるなど、自社開発で情報公開も積極的なこれまでのハル研ではなかった問題に向き合う必要が出てきたため、「初登場した年」という形を新たに用い始めました。

開発スタッフは以下を除いています。

  • ボイス
  • ムービー
  • NOA、NOEなどが担当する翻訳、テスティング、アートワーク全般
  • ゼネラルプロデューサー(基本任天堂役員のため「除外)
  • エグゼクティブプロデューサー(同上)
  • グループ、企業

気になった方はMobyGamesで調べてみると良いと思います。

氏名 担当 初登場した年
熊崎 信也 ゼネラルディレクター 2003
渡辺 豊 ディレクター 2014
谷藤 圭太 セクションディレクター 2011
遠藤 裕貴 レベルデザインディレクター 2011
鯉沼 拓 ゲームデザイナー 2017
上田 麻里 ゲームデザイナー 2022
大野 慧 ゲームデザイナー 2022
松尾 雄介 ゲームデザイナー 2023
渡邊 祐基 ゲームデザイナー 2008
キム チド ゲームデザイナー 2006
久保川 剛彦 ゲームデザイナー 1992
山下 真矢 ゲームデザイナー 2023
山城 共 ゲームデザイナー 2015
黒沼 純 ゲームデザイナー 2010
田島 章 プログラムディレクター 2011
野末 高士 リードプログラマー 2011
福田 洋平 リードプログラマー 2015
河原 孝章 プログラマー 2001
蒲地 智裕 プログラマー 2008
八坂 俊 プログラマー 2014
夏見 勇矢 プログラマー 2016
有松 優 プログラマー 2022
中島 将浩 プログラマー 2022
藤村 悠太朗 プログラマー 2022
中西 悟 プログラマー 2018
滝 直也 プログラマー 2022
別府 辰哉 プログラマー 2022
吉川 康治 プログラマー 1999
大竹 智 プログラマー 1991
酒井 健雄 プログラマー 2006
中村 貴也 プログラマー 1992
大林 智宏 プログラマー 2015
尾田 悦麻 プログラマー 1993
木戸場 裕政 プログラマー 2023
HSIEN-WEN KANG プログラマー 2023
藤田 剛志 アートディレクター 2011
佐藤 真美子 リードアーティスト 2015
辻 なつき リードアーティスト 2012
北 健一郎 キャラクターアートディレクター 1997
吉川 仁志 キャラクターアーティスト 1989
桐野江 司 キャラクターアーティスト 2016
小島 海次郎 キャラクターアーティスト 2022
小野 早央里 キャラクターアーティスト 2016
石川 亜美 キャラクターアーティスト 2022
小倉 友香 キャラクターアーティスト 2012
福丸 剣輔 キャラクターアーティスト 2019
蒲谷 伸吾 キャラクターアーティスト 2001
田中 研治 キャラクターアーティスト 2002
柏野 直 キャラクターアーティスト 2012
齋藤 孝志 キャラクターアーティスト 2023
林 怜奈 キャラクターアーティスト 2017
キム ジュギュン キャラクターアーティスト 2023
若山 強 キャラクターアニメーション 1990
松下 巧 キャラクターアニメーション 2006
梅田 隆弘 キャラクターアニメーション 2019
坂倉 雅美 キャラクターアニメーション 2000
弥永 沙也香 キャラクターアニメーション 2022
手島 宗之 エフェクトアーティスト 1990
柳田 税 エフェクトアーティスト 2023
田川 幸子 エフェクトアーティスト 2018
森下 大輔 フィールドアートディレクター 2011
橋倉 正 フィールドアーティスト 1990
宮内 郁明 フィールドアーティスト 2018
三國 幸恵 フィールドアーティスト 2008
相馬 綾子 フィールドアーティスト 2015
石川 祐介 フィールドアーティスト 2006
藤木 亮 フィールドアーティスト 1999
木下 隼 フィールドアーティスト 2023
廣瀬 佳佑 フィールドアーティスト 2017
熊田 隆宏 フィールドアーティスト 2012
長谷川 剛 フィールドアーティスト 1996
竹原 昇平 フィールドアーティスト 2020
本田 寧伯 フィールドアーティスト 2023
伊藤 春香 UIアートディレクター 2011
東藤 由実 UIコンセプトデザイン 2011
吉澤 南帆 UIアーティスト 2022
尾崎 ともみ UIアーティスト 2019
柴田 万葵 UIアーティスト 2023
河田 茂幸 UIアーティスト 2011
藤浦 昌 UIアーティスト 2011
中田 麻美 UIアーティスト 2022
丸山 郁美 UIアーティスト 2020
濱田 まゆ UIアーティスト 2023
伊藤 沙華 UIアーティスト 2023
安藤 浩和 リードミュージック 1991
下岡 優希 リードミュージック 2019
石川 淳 サウンド 1990
櫨本 浩 サウンド 2008
小笠原 雄太 サウンド 2017
加藤 優貴 サウンド 2023
高橋 芳美 チームサポート 1993
迫田 勝弘 チームサポート 1998
高木 恭男 チームサポート 1991
末継 和也 Frat Framework プログラマー 2014
野下 徹也 Frat Framework プログラマー 2011
鶴岡 友和 Frat Framework プログラマー 2001
後野 遼一郎 Frat Framework プログラマー 2011
川路 慎一 Frat Framework プログラマー 2011
村瀬 達哉 Frat Framework プログラマー 2011
内田 瑠依 Frat Framework プログラマー 2011
加藤 歩 Frat Framework プログラマー 2015
鈴木 雄也 Frat Framework プログラマー 2017
瀬下 真隆 Frat Framework プログラマー 2022
津田 圭吾 Frat Framework プログラマー 2022
木村 彩香 Frat Framework プログラマー 2011
松田 孝史 Frat Framework プログラマー 2008
中野 宏晃 テクニカルサポート 2008
福永 洋介 テクニカルサポート 2014
小西 和弥 テクニカルサポート 2000
青柳 純一 テクニカルサポート 1996
数野 貴亮 テクニカルサポート 1994
菅野 卓行 テクニカルサポート 2001
根本 卓 テクニカルサポート 2022
今泉 肇 テクニカルサポート 2022
羽生 昭夫 テクニカルサポート 1986
田上 達宏 テクニカルサポート 1996
皆川 健 テクニカルサポート 2008
小山 武宏 テクニカルサポート 2007
梅田 知宏 テクニカルサポート 2010
高木 翔豪 テクニカルサポート 2023
川原 理恵子 アートワーク 2006
莿木 勇斗 アートワーク 2017
今村 恵美 アートワーク 2002
井上 桂子 アートワーク 2008
伊谷 清美 アートワーク 2000
小林 勝 テスティング 2002
山口 実樹 テスティング 2006
田村 猛 テスティング 1994
大橋 亜規子 テスティング 2007
佐々木 勝郎 テスティング 2023
五藤 愉正 テスティング 2023
野村 拓也 テスティング 2018
竹島 大二郎 テスティング 2023
吉廣 真至 テスティング 2018
万沢 愛理 テスティング 2023
辻井 孝明 テスティング 2023
乙黒 誠二 ローカライズマネージメント 1993
橋口 茂 ローカライズ 1988
益田 健一 ローカライズ 2003
平山 茂 ローカライズ 1996
赤沢 秀樹 スペシャルサンクス 2023
前田 伸輝 スペシャルサンクス 2023
ファーマン 力 スペシャルサンクス 2011
石井 康嗣 スペシャルサンクス 2022
川合 匡史 スペシャルサンクス 2007
増田 一繁 スペシャルサンクス 2000
仲上 雅代 スペシャルサンクス 2006
井上 祐里奈 スペシャルサンクス 2020
葛西 重忍 スペシャルサンクス 1990
阿部 哲也 スペシャルサンクス 1988
峰村 智大 スペシャルサンクス 2005
高濱 昇平 スペシャルサンクス 2022
五十嵐 広朗 スペシャルサンクス 2018
塩野 佑莉 スペシャルサンクス 2016
岡田 信志 スペシャルサンクス 2012
森 邦彦 スペシャルサンクス 1998
中西 健太 コーディネーター 2005
鈴木 義樹 プロジェクトマネージメント 1993
金井 優 プロジェクトマネージメント 2022
妹尾 文香 プロジェクトマネージメント 2018
菊池 達也 プロジェクトマネージメント 2003
齋藤 伸也 プロジェクトマネージメント 2004
木梨 玲 プロジェクトマネージメント 2002
山下 敦子 プロジェクトマネージメント 2018
望月 哲也 プロジェクトマネージメント 1993
二宮 啓 アソシエイトプロデューサー 2012
高橋 功 ラインプロデューサー 1996
上武 理志 プロデューサー 2008
津田 純 プロデューサー 1994
野中 豊和 プロデューサー 2001