2018年03月16日、王道カービィの『星のカービィ スターアライズ』(以下、スタアラ)が発売されました。当ブログではスタッフリスト収集とその考察を主に行っており、今回もその結果を記事にしたいと思います。本記事は普段このブログを見ない方も対象としておりますのでかなり基本的な部分まで解説しているはずです。
なおネタバレと扱われやすそうなボイスとイラストレーターの部分は何一つ入れていません。そもそも声優やイラストレーターの事情は全く知らないからです。誰か詳しい人に丸投げします。
- 社員の約8割が動員された一大プロジェクト
- 中核は『ロボボプラネット』と同じ
- リード担当は過去作で経験を積み重ねている
- ムービーとサブゲームは外注
- デザインに進出する「テクニカル」
- パブリックリレーションズの消失
- 谷村 正仁の消失
社員の約8割が動員された一大プロジェクト
2017年現在、ハル研究所は156名の社員を擁しています。スタッフリストから任天堂社員や外部のスタッフ、そして声優やイラストレーターを除くと122名確認できます。よって『スタアラ』は、今ハル研究所が出せる力を出し切る、社運を賭けた一大プロジェクトとして制作されたと言えるでしょう。ちなみに2018年3月発売にも関わらず2017年に入社した社員がスタッフリストにいますので本当に出し切っています。
中核は『ロボボプラネット』と同じ
2016年04月28日に発売された『星のカービィ ロボボプラネット』と比較するとディレクター、レベルデザイン職に同じ人がいたことが分かります。()内は入社年です。
- 熊崎 信也(2002):ゼネラルディレクター
- 神山 達哉(2006):シーケンスディレクター
- 遠藤 裕貴(2006):レベルデザインディレクター
- 渡辺 豊 (2009):レベルデザイン
この内3名はお馴染みの方で、渡辺 豊氏も『さよなら!ハコボーイ』(2017年02月02日発売)や『カービィのすいこみ大作戦』(2017年07月04日発売)でレベルデザインを担当し、着々と経験を積み重ねての王道カービィにおける続投となります。
現在のカービィシリーズの開発がどうなっているのか。このリストからも分かりますように2000年代以降に入社したスタッフがゲーム開発で主導する立場にいます。
リード担当は過去作で経験を積み重ねている
現在の作品開発はディレクターだけでは統制しきれないレベルに拡大しているため、ディレクターとプログラマー/デザイナーの間にいるリードも存在します。『スタアラ』にも沢山のリード職が存在しますがそれらを担当する人達は過去作で同じくらい重要なポストにいました。
- 住友 克禎(2003):リードアクションプログラム(Wii、TDX、ロボプラでも担当)
- 中野 宏晃(2006):リードテクニカルプログラム(Wii、TDXでプログラムディレクター担当)
- 北 健一郎(1996):リードデザイン(リードキャラクターデザインも含めれば7作品で担当)
- 藤田 剛志(2006):リードテクニカルデザイン(Wii、TDXでリードデザイン担当)
- 東藤 由実(2008):リードUIデザイン(カービィハンターズZでディレクター担当)
- 永田 善裕(2008):プロジェクトマネージメント(ロボプラでプログラムディレクター担当)
このように、開発環境の発展・統制を行うリード職は過去の経験を持った人々が効果的に配置されています。社運を賭けた一大プロジェクトと先程言いましたが、それは人員の数だけでなく、人員の質からもその通りだと言えます。
ムービーとサブゲームは外注
近年カービィシリーズのサブゲーム、例えばカービィハンターズ、カービィの3Dチャレンジは要素を拡張して一本の作品『みんなで!カービィハンターズZ』『カービィのすいこみ大作戦』として出すなど、サブゲームに止まらない展開を見せてきましたが『スタアラ』ではサブゲームは株式会社エイティング、ムービーは『ロボボプラネット』でも担当した株式会社D.A.G*1によって製作されています。
ハル研究所は『星のカービィ ウルトラスーパーデラックス』(2008年11月06日発売)の時にはムービーなど大半を自社で作っていましたが、『スタアラ』では任せられる部分は委任することを躊躇しなくなったと見えます。
『Wii』のサブゲームのようにはならなかったのか?
サブゲームは外注と分かりましたが、では同じ据置機王道カービィである『星のカービィ Wii』(2011年10月27日発売)のように東京開発センターがサブゲーム担当とはいかなかったのか。スタッフリストを見てみますとそれは難しいと思いました。
(クリックで拡大推奨)
『Wii』のサブゲーム担当は後に『タッチ!カービィ スーパーレインボー』(2015年01月22日発売)開発に大きく関与しました。その後は大雑把に言えばプログラマーは『ロボボプラネット』や『スタアラ』に、デザイナーは『カービィ バトルデラックス!』(2017年11月30日発売)に関わっています。仮にディレクターが動けたとしてもプログラマーがメインゲームに関わっているため『Wii』のようにはできないと言えるでしょう。ちなみに表からはカットしてしまいましたが、鈴木 輝彦は『はたらくUFO』のディレクターを務めました。
デザインに進出する「テクニカル」
「技術のハル研」というキャッチコピーからも分かるように基本的にハル研究所は今も技術を大事にする会社のようです。その意志が表われたのかは分かりませんが、本作のスタッフリストでは「テクニカル」の付く職が複数誕生しています。以下がその一覧となります。()内は該当者です。
- リードテクニカルプログラム(中野 宏晃)
- テクニカルプログラム(木村 宗理、加藤 歩)
- リードテクニカルデザイン(藤田 剛志)
- テクニカルデザイン(三浦 光里)
- テクニカルモチーフデザイン(菅野 晃宏)
中野 宏晃は社長が訊く『星のカービィ Wii』でプログラムディレクターとして登場しており、藤田 剛志はハル研究所インターンシップ デザイナーコースの講師に名を連ねる知名度の高いデザイナーです。そのため、"テクニカル"なポストにプログラマー/デザイナー関係なく入れられていることが分かります。正直ハル研がどういう意味で「テクニカル」を用いているのか全く見当が付きませんのでこれ以上の考察はできません。
ちなみに三浦 光里は2016年入社の方です。『CONTINUE Vol.51』のハル研特集でインタビューに登場しておりますので既にご存知の方もいらっしゃるかと思います。
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パブリックリレーションズの消失
パブリックリレーションズ、有り体に言えば「広報」ですが『スタアラ』のスタッフリストからパブリックリレーションズの区切りが消失し、石田 聡や峰村 智大などの担当者はスペシャルサンクスに纏められました。
谷村 正仁の消失
ハル研究所の「社長」となると岩田 聡が有名ですが、谷村 正仁もハル研究所の社長を長い間務めています。そのためゼネラルプロデューサーとして名を連ねていましたが『スタアラ』の前に出た『カービィ バトルデラックス!』(2017年11月30日発売)よりスタッフリストから消えてしまいました。会社の代表ともなると最後段にいるはずなのですがいません。退社説も考えましたが、ハル研究所公式サイトの企業情報を見ると取締役会長にいますのでそれも有り得なさそうです。
ボリューム云々について
最後にスタッフリストと全く関係ないですが、『スタアラ』のボリューム云々について色々あるようなのでこの発言を紹介します。
神山:(中略)最新作の『星のカービィ スターアライズ』は「集大成」という気がします。ここ最近のカービィは完成の見極めが必要で、完成してから売る時期を決めていたんです。今回の最新作は完成する前から発売日が決まっていて、これはかなり久しぶりなことですし、僕らとしても作っている途中で宣伝して、反響を実感しながら作り込めているっていうのが初めてなんですよ。
出典:宮昌太朗(2018)「『カービィ』プロダクトのいま。」,『CONTINUE Vol.51』,P.148,太田出版
散々利用している『CONTINUE Vol.51』からです。耳にたこができる程お聞きかも知れませんが、これと『CONTINUE SPECIAL ガールズ&パンツァー』は今のハル研究所を知るにあたって非常に参考になる特集が組まれています。まずはそれらを読んでから開発環境に関わることについて考えてみてはいかがでしょうか。
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*1:どうでもいいことですが、D.A.Gのムービー内で登場するメタナイトの仮面って分厚い気がしません?