アイデアというのは、複数の問題を一気に解決するものである
任天堂・宮本 茂
Nintendo Direct 2022.2.10が公開されました。色々言いたいことはありますが、『星のカービィ ディスカバリー』の続報で登場した「ほおばりヘンケイ」は完璧なアイデアだと思い、色々思い浮かんでしまったので形にします。
Twitterで色々言ってますが、その清書版と思って頂ければ幸いです。
ディスカバリーのほおばりヘンケイ、見た目がめちゃくちゃキャッチーだけどその実カービィの今後を大きく広げる見事な「アイデア」だと思いましたね。
— パーペン (@Papen_GaW) 2022年2月10日
カービィ本編のコピー能力ってご存知ですけどもう複雑で、初見じゃ扱いきれないんですよ。しかも3Dで効果を及ぼせる範囲が増えたので難易度はさらに上昇。
— パーペン (@Papen_GaW) 2022年2月10日
しかしほおばりヘンケイは比較的単純なアクション。さらに無機物モチーフなのでポストアポカリプスにばっちりハマる。
カービィの「全年齢を謳う割にはコピー能力含め操作が複雑になりがち」という欠点と「文明の自然が融合する新世界を描く必要がある」という製作上の課題に、ほおばりヘンケイというアイデアをぶつけてきたんですよ。
— パーペン (@Papen_GaW) 2022年2月10日
あと、何気にカービィの「アタリマエ」にも挑戦している。無機物を吸い込むと必ず星型弾になるという法則を。
— パーペン (@Papen_GaW) 2022年2月10日
まだあった。これは予想ですけど、ここまでボスの全容がわからないのは「ほおばりヘンケイ」でギミックになる部分を隠したかったからなのではという予想。
— パーペン (@Papen_GaW) 2022年2月10日
コピー能力全開でもいけるし、ほおばりヘンケイでもボスと戦えるのであればもうヤバいですよ(語彙不足)
今のコピー能力はむずかしすぎる!
現在の星のカービィシリーズはソードやファイア、ニードルなどのコピー能力を主軸にゲームが展開されます。コピー能力を失うには何らかのストーリーが必要とされるほど、今やカービィと言えばコピー能力、コピー能力と言えばカービィです。そのカービィのコピー能力は、多彩な技を持っております。いいですね、ゲームを豊かにします。
では、代表的なソードのコピー能力の技を見てみましょう。
- たてぎり
- ソードビーム
- ソード百れつぎり〜きめぎり
- ドリルソード
- スピニングソード
- チョッピング〜つきだし
- かぶとづき
- したづき
- 水中スピニング
- きり上げスラッシュ
- メテオエンド
- 回てんぎり
- たつまきぎり
水中のみでの技もありますが、13個の技があります。すごいですね!こんな調子でコピー能力に大量の技があります。この操作方式は『星のカービィ Wii』からですので、その頃から遊び続けていらっしゃる方であれば「いつものコピー能力」ですが、新しく入られた方にとっては大変です。
別に覚えなくてもどうにかなります。ただ適当にボタンを押したら押したで暴発やあらぬ方向にいったりします。それで残機を失ってあのSEが鳴り、ロードが完了するまで操作不能となればいい気持ちにはなりません。
そして、カービィには幾多のボスが待ち受けています。最初は簡単でもストーリーをクリアした後のボスは強敵です。彼らにはコピー能力をちゃんと覚えて挑まなければ結構大変です。
とはいえカービィの世界観を広げるにはボスを生み出す方が工数的には楽です。
コピー能力を今後も持ち続けることが基本のカービィで、幾多のコピー能力で影響を及ぼせる砂場のような世界、例えば『ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド』のようなものを作るならば、500人規模の開発体制でも厳しいと思います。
このような、コピー能力の高度化とボス陣容の拡大はカービィに特色を与えはしましたが、全年齢向けという点に疑問符ももたらしました。限界が見え隠れしているのです。
ポストアポカリプスへの挑戦
そして、カービィは文明と自然が融合した新世界で新たな冒険をすることになりました。この時点で新たな挑戦ではあります。が、2ndトレーラーまでの内容では車などが単なる背景でした。カービィは収集要素のためのギミックも豊富ですが、登場したのはお馴染みのハンマーによる杭打ちぐらいでした。
今考えれば2022年2月9日時点の『ディスカバリー』は、違う舞台にお馴染みの要素を載せた作品であったのです。3Dアクションで大きな作品を作るという時点で見事な変化でしたので、私は特に気にしていませんでしたし、発売まで楽しみにしておりました。
「ほおばりヘンケイ」
— Nintendo of Europe (@NintendoEurope) 2022年2月9日
そこで、あまりにもキャッチーな姿と共に登場したのが「ほおばりヘンケイ」です。初見は面白すぎて画面を直視できなかったものですから、車以外のヘンケイをよく見ていませんでした。よくみてみますと、ほおばりヘンケイは無機物を取り込み、様々な操作をもたらします。車のように取り込んだ無機物に倣った操作もできますが、アーチのように全く違う操作となるヘンケイもあります。
一頻り笑った後、改めてみたのですがこれは恐ろしいものだと思いました。何故なら
- コピー能力が複雑→比較的単純なアクションの導入で高難易度化の抑制
- 文明が残る新世界での冒険→無機物の取り込みで世界観にマッチ
とカービィの課題を見事に解決したのです。コピー能力もまた、進化というシステムで技の変化でバラエティを維持しながらも操作の難易度も減らしていると思われます(10個もの技を全部変えてたらキリがありません)。
これが冒頭で出しました、宮本茂氏の格言「アイデアというのは、複数の問題を一気に解決するものである」に繋がるのです。
それだけ、私はほおばりヘンケイという要素には凄みを感じています。
無機物=星型弾というアタリマエ
同時に車などを頬張ってその性質を取り込むという、無機物へのアプローチも獲得しました。カービィは無機物を吸い込むことは可能でした。ただし、出てくるのは全て星型弾でした。無機物のコピー=スキャンと捉えるならば、『星のカービィ ロボボプラネット』の最終決戦艦ハルバードモードもあげられますが、主な操作はキャプチャーすいこみ(すいこみ)からのプラネットバスター(星型弾)ですのでそのアタリマエを踏襲しておりました。そうなると、このアタリマエを『ディスカバリー』で遂に打ち破ったとも言えます。
2つのアプローチでボスに挑めるか
ここは予想であって、実際には違うかも知れません。
ボスは星のカービィを彩る要素ですが、これによって「ほおばりヘンケイ」を駆使して攻略もできるのではないかと考えました。
今までカービィはコピー能力でボスに挑むことが半ば前提でした。無論コピー能力なし、すっぴんで挑んでも全然OKなのですが。
ですが、ほおばりヘンケイで何か、例えばゴルルムンバの投げた岩を取り込めるならば…
そこには、コピー能力やそれを進化させてボスに挑むこともできますし、ほおばりヘンケイによるギミック活用で挑むことのできるカービィが見えてくるのです。ほおばりヘンケイは既に指摘されているように『スーパーマリオオデッセイ』のキャプチャーと機能が似ています。そちらはキャプチャーを前提にボス戦が組まれておりましたが、もしカービィがコピー能力とほおばりヘンケイのどちらか、あるいは両方でボスと戦えるならば、キャプチャーとはまた違ったゲームデザインが出来上がります。現にカービィはコピー能力を維持したままほおばりヘンケイを使えます。下のドリル(最初ニードルでした。しょうもないミスしてました…)のように。
まぁ実際には、そんなボス戦はできないかも知れません。ただ、そういう選択肢が見える、というのは今できなかったとしても次に繋がりますからどちらにせよ嬉しい話です。
『星のカービィ ディスカバリー』は3月25日発売です。