
今回は『カービィのエアライダー』のスタッフについて見ていきます。
この作品については正直、異常な注目を集めており、絵も動画もない文章のポストが14万インプレッションを獲得したときには我が目を疑いました。
エアライダー、
— パーペン (@Papen_WaC) 2025年11月26日
エアライドという思い出補正が強いタイトルを復活させることと
バンナムにとっては自社エンジンを絶対に成功させる
という2つのお題がのしかかったタイトルなので、ライダー人選やカービィシリーズの要素については工数をなるべく掛けないよう慎重になったのではと考えてます。
そんな『エアライダー』ですがゲーム作品にはつきものの「スタッフリスト」の話は、意外なほどされていません。
スタッフリストはロードトリップのエンディングで公開され(すでにネタバレも飛び交う中)ていますが、その割にあまり知られていません。
スーパーバイザーに現在の星のカービィシリーズのゼネラルディレクターかつ、ハル研究所の取締役でもある熊崎信也氏がいることはよく知られています。しかし、実際の現場にどういう人がいたのかについては、ほとんど触れられていません。
これはなんとも、もったいないことです。
スタッフ一覧を見ると開発体制や作品の方向性が見えてきます。エアライダーはその点で特に“語る価値がある”タイトルと言ってもいいです。
『カービィのエアライダー』は評判こそいいですが、
- 思い出補正がとにかく高いタイトル『カービィのエアライド』の20年ぶりの新作
- それを任天堂、ハル研究所ではなくバンダイナムコスタジオが主体となって開発
- しかも SOL-AVESというバンナムの自社開発ゲームエンジンの初の本格採用(任天堂、ハル研が権利を持つタイトルで採用!)
と並べるだけでもトップ級のクリエイターである桜井政博氏だけではどうにもならないことが山積みです。
そして、実際に出てきた中身を見てみますと、Switch2もまだ発売1年目で動きの激しいタイトルでありながらも、高い安定性を出しております。少なくともオンラインがまともに動かない(何をしてもマッチングがうまくいかないといったレベル)といった問題は今のところ見られません。
自社タイトルで自社開発のゲームエンジンを採用するというのは別に不思議なことではないです。
しかし、『大乱闘スマッシュブラザーズ for Nintendo 3DS / Wii U』から10年超の協力関係を踏まえても、他社が権利を持ち、しかも長年待ち望まれていたタイトルにバンナムが作ったゲームエンジンを本格採用というのは、普通はまず通らない選択肢です。
通常、IPホルダーが他社エンジンを使うとしても、それは既に実績のある汎用エンジン(Unity、Unrealなど)がほとんどです。開発途中の自社エンジンを他社の看板タイトルで初採用というのは極めて珍しいケースです。
まるで普通のことのように流されてますし、私も当初は気にしておりませんでしたが、こうして見ると、なかなかに異様さが伝わると思います。
SOL-AVESの話になってしまいましたが、スタッフを見ても特徴のある形になっていますのでまずはそちらから見ていきましょう。
- 人数とその比較
- ゲームデザイン(スマブラSP経験者が核だが、他作品からも広く集まった構成)
- プログラミング(エアライダーの開発と、SOL-AVES導入の中核)
- アート(やや控えめな陣容)
- Stage Modeling(ステージモデリング / 82名)
- Character Animation(キャラクターアニメーション / 42名)
- Character Modeling(キャラクターモデリング / 28名)
- UI Design(UIデザイン / 24名)
- Visual Art(ビジュアルアート / 21名)
- Effects Design(エフェクト / 15名)
- Cinematics(シネマティクス / 7名)
- Design Management(デザイン管理 / 8名)
- Character Animation Management(キャラアニメ管理 / 3名)
- Graphic Supervisors(グラフィックススーパーバイザー / 3名)
- おまけ:ハル研究所のスーパーバイザー
- お祭りゲーとは言い難い
- 他社タイトルに自社エンジンを導入する、ハイリスクハイリターン
- バンナムの危機感?
- 巨大で、野心的なプロジェクト
人数とその比較
『エアライダー』は私の手法として用いる、「ゲームデザイナー(Planning)、プログラマー(Programming)、アーティスト(Art)のみを数える」形式をとりますと602名がいるプロジェクトです。
詳細は毎度ブレブレで今回はマネージャーは入れていますが、プロデューサーは含んでいません。
サウンド系は一切入れていません。いずれどなたかが語ると思いますので任せています。
その内訳は
- ゲームデザイン:103(Director、Planning、Planning Management)
- プログラミング:266(Programming、Program Management、Engine Programming、Engine Programming Management、Technical Support、Network System Development)
- アート:234(Character Modeling、Visual Art、Stage Modeling、Effects Design、Cinematics、UI Design、Design Management、Character Animation、Character Animation Management、Graphic Supervisors、Movie)
という形です。同じSwitch2で出た『マリオカートワールド』では
- ゲームデザイン:22
- プログラミング:86
- アート:192
という人数構成でした。アートは大きく変わりませんが、プランニングとプログラミングの規模は明らかにエアライダーの方が大きいです。特にプログラミングは SOL-AVES の開発で 82名が割かれている影響が非常に大きいですね。
正直、「エアライダーは600人規模が関わるプロジェクトです」と聞くと、予想外だと感じた方も多いのではないでしょうか。
QAやローカライズを合わせて600人規模ではないのです。基本的にゲーム開発という現場に携わる人のみを数えてこれだけいらっしゃるのです。
(ただし、全員がバンダイナムコスタジオ所属ということではないです。パートナー会社の方もクレジットに混じっております)
タイトルでネタバレしていますが、『大乱闘スマッシュブラザーズSPECIAL』と比較すると
- ゲームデザイン:67
- プログラミング:113
- アート:431
の611名です。職種の割合は異なりますが、スマブラSPとほとんど変わらない規模感なのです。
桜井氏はYouTubeチャンネルで「肝心のチームが集まるまでに時間がかかるそうです」とおっしゃっていましたが、その規模感は画像のようだったのかも知れません。

ゲームデザイン(スマブラSP経験者が核だが、他作品からも広く集まった構成)
Planning(プランニング / 99名)

プランニング班は 99名。28名は『スマブラSP』の経験者です。ほとんどはスマブラSPでもプランニング担当ですが、一部はテスティング出身の人もいます。
QAやテスターからゲームデザイナーに入るというキャリアパスは不思議な話ではないです。
ただ、興味深いのは"スマブラ色の強さ”以外に明確な偏りがほとんどないことです。
- スマブラSP出身が核ではある
- しかし残り70名弱は作品傾向がバラバラ
- よく言えば多様、悪く言えば“かき集めた感”もある
これがエアライダーの特徴にも繋がります。
特に気になるメンバーを少し紹介すると——
- 『鉄拳8』のリードゲームデザイナー:Ryo Saito氏 / Masayoshi Noda氏(→5名のリードのうち2名が参加)
- 『テイルズ オブ アライズ – Beyond the Dawn』のディレクター:Masahiro Endo氏
- 『SCARLET NEXUS』のシナリオライター兼ゲームデザイナー:Mio Goto氏(当時は24Frame所属)
- 『New ポケモンスナップ』のリードゲームデザイナー:Yasuhito Kobayashi氏
- 『ARMORED CORE VI』のバトルデザイナー:Yoshiaki Sassa氏(ACVIのバトルデザイナーは7人いるため割合としては少ないことに留意)
- 『FINAL FANTASY XVI』のコンバットAIデザイナー:Hiroki Tabei氏(2名中1名が参加)
- 『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』のプロジェクトマネージャー:Tetsushi Arakawa氏 / Kiyomitsu Ishihara氏
- 『ゼルダの伝説 知恵のかりもの』のアートディレクター:Masaki Yasuda氏
ここまで見ると、方向性が“ひとつのIP由来”に偏っていないことが明白です。
Planning Management(プランニング管理 / 2名)
Yuma Ishizuka氏は『マリオカート8 デラックス コース追加パス』のPlanningを担当しました。
Takamitsu Iijima氏は間違いがなければ「飯島 貴光」氏であり、ファミ通の紹介を引用すると
- 『ワイルドアームズ』(PS)/アーティスト
- 『サルゲッチュ』(PS)/アートディレクター、キャラクターデザイナー
- 『ピポサル2001』(PS2)/アートディレクター、キャラクターデザイナー
- 『ガチャメカスタジアム サルバト~レ』(PS2)/ディレクター、アートディレクター
- 『街スベリ』(PS3)/ディレクター
- 『フリフリ!サルゲッチュ』(PS3)/ディレクター
- 『KNACK』(PS4)/ゲームディレクター
- 『KNACK ふたりの英雄と古代兵団』(PS4)/ゲームディレクター
SIE JAPANスタジオを卒業したクリエイターの今後の動向。11名の新天地での活動を追う | ゲーム・エンタメ最新情報のファミ通.com
の方です。SIEジャパンスタジオの方が任天堂タイトルに携わる例は時々見られますが、個人的にはこの関わり方には驚きました。同時に引用の記事で述べておりました「私は現在、新天地となる新しい場所で、引き続きゲーム制作に携わらせていただいております。」の答えが出たと思います。
プログラミング(エアライダーの開発と、SOL-AVES導入の中核)
エアライダーは、ゲーム部分に加えてSOL-AVESの初本格投入という技術的チャレンジも抱えていたため、プログラミング班は大きく3つに分断されています。
- ゲーム本体(Programming)
- エンジン開発(Engine Programming)
- 任天堂側の技術サポート(Technical Support / Network System Development)
以下、それぞれ細かく見ていきます。
Programming(プログラミング / 163名)

本編を支えるプログラミング班は163名です。
そのうち、41名が『鉄拳8』『スマブラSP』のどちらか/両方経験者という構成です。
スマブラSPの時はプログラマー75名のうち、鉄拳経験者は6名だけだったので、今作で鉄拳のエンジニアが一気に増えたのが大きな変化です。例えば鉄拳8のグラフィックエンジニアは7名中4名が入っています。
スマブラより"格闘ゲーム"という面はかなり薄い(ビークル"コンバット"の要素は豊富ですが)ので、この変遷は少々意外ですが、Switch2というプラットフォームで性能が上がったためハイエンド機の開発に入っていた人材が必要だったのかも知れません。
また、スマブラSPの時はプログラマーの80%が過去作が判明していたのですが、今作は163名中50名の過去作が不明です。全体の70%に限られるというのも人材の多様性が分かります。
スマホゲームやオンラインゲームの場合スタッフ名が公開されず、何をしていたのか外部からでは読み解けないというケースがあるからです。
Program Management(プログラム管理 / 2名)
- Takashi Nakagawa氏は『スマブラSP』経験者
- Masakazu Yorifuji氏は『ガンダムバーサス』経験者
特段気になる点はありませんでした。
(Takashi Nakagawa氏はCC2にも同名の方もいらっしゃるためか、MobyGamesでは業績が混じっている可能性があります)
Engine Programming(エンジンプログラミング / 79名)
Engine Programmingの79名はSOL-AVES制作の中核です。ここの人員ですが、『鉄拳8』のコア・テクノロジーエンジニアが25名中20名参加しております。残り5名も内3名は別の担当で『エアライダー』に関わっているため、ほぼ全員がスライドしたような状態です。
他にも『ガンダムバーサス』や『New ポケモンスナップ』のNU Library TeamやProject “lumen”に名前があるエンジニアが参加しております。
バンナム社内の共通技術/描画ライブラリを担ってきた方がSOL-AVES開発の中核に再配置されたと考えられます。
そういった、バンナムの技術屋として動いていた方は79名中41名、51%の割合でおります。
バンナムの技術屋が本気でSOL-AVESを導入するために挑んだことが見て取れます。
その他、外部からの参加として気になった方は以下の方です。
- 『Madden NFL 23』シニアソフトウェアエンジニアの、Ben Carter氏
- 『Alan Wake II』Additional Core Engine Programmingの、Aleksei Kuznetsov氏
Engine Programming Management(エンジンプログラミング管理 / 3名)
Shinya Sorimachi氏は『エースコンバット7』でVisual Art Managerを、『スマブラSP』でDesign Managementを務めていました。
Katsumasa Horiuchi改め、堀内克祐氏はProject “lumen”を含むバンナム内製技術ライン常連のテクニカルディレクターです。
2022年にAUTOMATONが行った内製ゲームエンジンのインタビューでも出ております。
Tetsuya Otaguro氏は詳細不明です。
Technical Support(技術サポート / 10名)、Network System Development(ネットワークシステム開発 / 9名)
技術サポートとネットワークシステム開発については任天堂・SRDです。
例えば『スターリーワールド』でもテクニカルサポートで携わった岩永翔太郎氏などがおります。
ネットワークシステム開発はSRDの方が多いです。『ポケモンSV』『マリオストライカーズ バトルリーグ』の経験者もおります。
アート(やや控えめな陣容)
アート班は非常に多様で、どのIP出身なのかがバラけています。そのため関係者が多いタイトルのみ抽出した比較を行っています。
ガンダムバーサス、スマブラSP、エースコンバット7、New ポケモンスナップ、テイルズ オブ アライズ、マリオカート8 デラックス コース追加パス、スプラトゥーン3、ガンダムエボリューション、ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム、鉄拳8、マリオカートワールド
Stage Modeling(ステージモデリング / 82名)
82名中、経験者は50名おります。内23名はスマブラSP経験者です。
また、ゼルダTotKのランドスケープモデリングに携わった方も14名おります。
Character Animation(キャラクターアニメーション / 42名)
42名中、経験者は19名おります。内7名はスマブラSP経験者です。
アニメーションなのでスマブラ経験者が多いかと言うと実はそうでもなく、鉄拳8に参加し、スマブラSPにはいない方が10名もおります。ただ当時の所属を見ますと、多くが株式会社シンクロジックの方です。
シンクロジックはエアライダーの開発協力にはクレジットされておらず、謎が残ります。
Character Modeling(キャラクターモデリング / 28名)
28名中、経験者は15名おります。内6名はスマブラSP経験者です。
カービィだからと言って、スマブラSP経験者がそのままスライドしてきていないことが分かります。
ちなみに一つおもしろい話があり、キャラクターモデリングには『トリプルデラックス』『スターアライズ』でモデリング、モチーフデザインを担当した羽太久美氏が参加しております。羽太氏はカービィ以前は『スマブラX』や『新パルテナ』にも携わっておりますため、昔からハル研究所にいらっしゃった訳ではありませんが、カービィ本編に携わった方がバンナム中心のエアライダー開発に参加した大変珍しい例です。
UI Design(UIデザイン / 24名)
24名中、経験者は18名おります。内12名はスマブラSPでもUIデザインを担当しております。
スマブラチックというのは桜井氏のスタイルなのでしょうが、現場もスマブラ経験者が多いからというのも理由の1つにあるのかもしれませんね。
Visual Art(ビジュアルアート / 21名)
21名中、経験者は15名おります。内3名はスマブラSP経験者です。
こちらは鉄拳8経験者が6名、ガンダムエボリューション経験者が5名、テイルズ オブ アライズ経験者が5名おります。
ビジュアルアートが何を指しているのか外部からは分かりづらいですが、鉄拳8やガンダムエボリューションでコンセプトアートに関わったことを踏まえますと、マシンのリファインにも関わっている可能性があります。
他に特筆すべき方としましては、『太鼓の達人 ドンダフルフェスティバル』アートディレクターのArisa Ueda氏もおります。
Effects Design(エフェクト / 15名)
15名中、経験者は4名おります。内3名はスマブラSP経験者です。
全体的にバンナム色は薄く、例えば『ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー』のエフェクトに携わったりと作品についてはバラバラです。
Cinematics(シネマティクス / 7名)
7名中、経験者は4名おります。内1名はスマブラSP経験者です。
Design Management(デザイン管理 / 8名)
8名中、経験者は7名おります。内4名はスマブラSP経験者です。
マネージャーのため、基本はバンナムの何かしらの作品に関わっています。例えばバンダイナムコマレーシアのSenior Vice PresidentのShuhei Banya氏が参加しております。
Character Animation Management(キャラアニメ管理 / 3名)
全員経験者です。内2名はスマブラSP経験者です。
もう1名の方はテイルズ オブ アライズでアニメーションマネージャーを担当しております。
Graphic Supervisors(グラフィックススーパーバイザー / 3名)
3名とも任天堂です。山根知美氏、北村耕生氏、森澤孝泰氏で、わかる方もいらっしゃるかも知れません。
山根氏と森澤氏は最近ですと『スーパーマリオパーティ ジャンボリー』でアートスーパーバイザーを、北村氏は『メトロイド ドレッド』でアドバイザー、Switch版『スーパーマリオRPG』でグラフィックスーパーバイザーを務めています。
カービィタイトルでもスーパーバイザーは任天堂というのが興味深いですね。
おまけ:ハル研究所のスーパーバイザー
スマブラのように『エアライダー』にはハル研究所のスーパーバイザーがいます。

以下のとおりです。入社年はもちろんハル研究所入社のことを指します。
- 熊崎信也氏(Shinya Kumazaki):2002年入社。現在の星のカービィシリーズのゼネラルディレクター。ハル研究所取締役。『エアライド』ではデザイナーとして参加。敵キャラやヴァレリオンの謎のタマゴなどを作成。
- 北健一郎氏(Kenichiro Kita):1995年入社。カービィのデザインの重鎮。『エアライド』ではチーフデザインとしてクレジットされる。
- ファーマン力氏(Riki Fuhrmann):2009年入社。アートディレクターとしてクレジットされることが多く、同じくデザインの重鎮。
- 小笠原雄太氏(Yuuta Ogasawara):2017年入社。サウンド担当で、『星のカービィ スターアライズ』以降活躍。
- 仲上雅代氏(Masayo Nakagami):2005年入社。アートワーク担当、MDデザイナー。カービィカフェなどのコラボ案件にも関与。
- 阿部哲也氏(Tetsuya Abe):1987年入社。プログラマーとして長年携わる。現在はスペシャルサンクスでのクレジットが多い。参加作品は多いが『エアライド』でのクレジットはなし。
- 上武理志氏(Tadashi Kamitake):2005年入社。『星のカービィ ウルトラスーパーデラックス』のデザインが初参加。現在はプロデューサーとして関与。
『エアライド』経験者は2名おり、それ以外もカービィに深く関わる方というのが分かります。個人的に『エアライド』の時の音楽に携わった安藤浩和氏ではなく小笠原氏が入っている点は興味深く思いました。
お祭りゲーとは言い難い
規模だけを見れば確かに多いのですが、
- バンダナワドルディとワドルディでまとめるのではなく別枠とする
- ワドルドゥやキャピィ、スカーフィ、グーイ、スターマン、ロロロ&ラララと比較的シンプルな造形のキャラクターが多い
と「可能な限りシンプルに」「工数を抑えつつ」「視認性を確保する」という意図が強く感じられます。
等身が高かったり小道具が多くてもコックカワサキやナックルジョー、マルクのようにスマブラのアシストフィギュアやボスで出ているキャラもいます。姿形はだいぶ異なる所もありますが、開発の主体がバンダイナムコスタジオである以上、スマブラで作ったことがあるのとないのでは難易度が異なるでしょう。
一方でドロッチェ、マホロア、タランザ、スージーは実装の難易度が高めですが、シリーズ需要を考えると外せなかったのでしょう。レースでの視認性を考えるとシンプルな造形にしたいですが、近年の作品のキャラがいないのは寂しいですから(近年と言ってもマホロアも10年選手ですが)
ロードトリップでもフレンズハートをウィスピーウッズに投げたらお菓子の山に埋もれる、『タッチ!カービィ スーパーレインボー』のエリーヌが虹を描いたらその間の空間が通れるようになるなど、原作の挙動とは異なる展開になっています。

この辺は監修のコストも抑えたのではと思います。正直やろうと思えばできると思いますが、それはハル研究所に監修を依頼する工数が増えることになります。
そして、エアライダーについてはそれを許せる状態ではなかったと考えております。
他社タイトルに自社エンジンを導入する、ハイリスクハイリターン
多彩なゲームタイトルの開発現場を支える基盤として不可欠な内製ゲームエンジン
応募ページのSOL-AVESの紹介
今回、バンダイナムコはSOL-AVESを『カービィのエアライダー』で本格導入することとなりました。
バンダイナムコは長年内製ゲームエンジンを持つことを目標としておりましたが、なかなか実らず、正直に言えば国内でも遅れている状況でした。
ここで最初の話に戻りますが、
- 『カービィのエアライド』の20年ぶりの新作
- バンダイナムコスタジオが主体となって開発
- バンナムの自社開発ゲームエンジンの初の本格採用
これらの課題に対してバンダイナムコは立ち向かう必要がありました。
いくら当時のディレクターである桜井氏がいるからと言って、それでオンライン環境が安定する、バランス取りがうまくいく、20年ぶりのシティトライアルが当時存在しなかったオンライン対戦に耐えうる環境になる訳ではありません。『カービィのエアライド』は散々ミームでも擦られただけあって、熱望されていたタイトルです。それを作るというだけでも決して簡単ではないのに、他社の看板タイトルでバンナムの内製ゲームエンジンを実戦投入することになったのです。
重要なクライアントである任天堂とハル研究所のIP、20年越しの続編という環境でもし致命的なバグが多発するようであれば、
- 任天堂タイトルでSOL-AVESが使われる可能性は萎む
- 内製エンジン普及の遅延
- バンナムの技術的信頼にも悪影響
という重いリスクがありました。
しかし、同時に
- Switch2の1年目という世代交代のタイミング
- キャラもオブジェクトも多い乱戦系
- スピード感が強く最適化の力量を見せやすい
- 任天堂、桜井というブランドで注目度が高い
という舞台はSOL-AVESの性能証明と宣伝を同時にこなせます。
内製ゲームエンジンを本気で標準化するなら、任天堂の看板案件で成功させるのが一番手っ取り早いと言えばそうです。ハイリスクハイリターンですね。
この
- 「エアライダーを絶対に成功させる(当時の操作感の再現とリファイン、イベントを現代で遊べる形に改修)」
- 「SOL-AVESの船出を絶対に成功させる(エンジンとオンラインの安定)」
という2つの課題があったと考えると、例えばライダーにアドレーヌ&リボンや三魔官シスターズのように小道具も多ければ、確実に色々な技や演出を仕込みたくなる(ハル研究所への監修依頼が増大!)、まだバンナムでは作ったことのないキャラクターを入れるのには慎重だったことでしょう。
正直、これで「カービィオールスター」という目標も立てていれば2025年どころか2026年中のリリースも難しかったのではないでしょうか。
バンナムの危機感?
ここから先は完全な妄想ですが、バンナムは危機感を持っていたのではないかと考えております。
スマブラも一区切りがつき、桜井氏の年齢も考えると、少なくともバンナムが欲するような大型案件が今後も継続して任されるかどうかは不透明です。
桜井氏自身がゲームを作り続けることはあっても、それが小規模〜中規模の内容になり、バンナムの思惑とはズレる可能性もあります。
そうなれば、バンナムは「任天堂から必要とされる企業」であり続けるための理由を、改めて用意しなければなりません。その縁を繋ぎ止めるものが内製ゲームエンジンだったのでは?と話を飛躍させてみます。
ここでSwitch2用タイトルでSOL-AVESの取っ掛かりは成功しました。その結果、このエンジンを一番よく知っているバンナムは、今後も大型案件で開発現場を任される可能性が高まったと言えます。
縁を「人」だけでなく「技術」で繋ぎ止めることで、より安定した関係に持ち込む。
そうした狙いがあっても不思議ではありません。
実際、ただ内製ゲームエンジンを普及させたいだけならば、自社の小〜中規模タイトルで導入し、徐々に採用範囲を広げるのが普通です。それを「オープンワールドに耐えうるエンジンを目指しているから」とはいえ、いきなり任天堂IPの大舞台で本番勝負に持ち込んだのは、技術的な都合だけでは説明しづらい大胆さです。
バンナムが次の10年で勝つために『エアライダー』でSOL-AVESを採用した。そのような政治的・戦略的な重みを、このプロジェクトから感じています。
巨大で、野心的なプロジェクト
『エアライダー』のスタッフリストを見ている時は「多いなー」ぐらいにしか思っていませんでした。
しかし細かく見ていきますと、その意図と秘めた野心、そして危機感のようなものが私には見えました。
「エアライダーを絶対に成功させる」「SOL-AVESの船出を絶対に成功させる」ため各地から人材をかき集め、バンナムの力を注ぎ込んだプロジェクト。そう呼んで差し支えない規模感です。(その選択と集中で犠牲になった作品もあるのでは…となんとなく思ってしまいます。証拠はありませんが)。
20年前の『カービィのエアライド』は全員合わせても80名程度のプロジェクトでした。今回の『エアライダー』は思い出を持って待ち望んだプレイヤー側だけでなく、開発者側にとっても特別なプロジェクトだったのではないでしょうか。