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【翻訳】「スターアライズの開発者が発売後ゲームをどうやって改善したか説明」【Kotaku】

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今回は、Kotakuに掲載された、熊崎 信也へのインタビュー記事「Kirby Star Allies' Developers Explain How They Improved The Game A Lot After Launch」を翻訳していきます。

web.archive.org


翻訳

2018年初頭に発売されたNintendo Switch用ゲームソフト『星のカービィ スターアライズ』は、ダウンロード可能な無料アップデートの流れのおかげで、この1年で大きく改善されました。「星のカービィ」シリーズの開発者によりますと、これらのアップデートの重要な部分は当初計画されていませんでした。

ハル研究所のチーフクリエイター、熊崎信也氏はEメールインタビューで、ゲームの拡大する過程を私に説明してくれました。アップデートはプレイヤーが遊び続けることと「長年のファンを幸せにし続ける」ことを目的としていました。その途上で、計画のいくつかは変更されたことも発言しておりました。

ハル研のディレクター達が過去の「星のカービィ」シリーズ作品から再登場させるお気に入りの仲間や悪役を決めるにつれて、予定されていた追加のプレイ可能なキャラクターのリストも変わりました。最後のアップデートの「アナザーディメンションヒーローズ」モードは新しいアイデアであり、既存のストーリーを拡張するためにレベル(ステージ)を追加するという当初の計画からの変更点でした。


熊崎氏曰く「このような規模のゲームを企画・監修する時に計画は非常に大事ではありますが、僕達は日々生まれてくるアイデアや発見を大切にしています。計画に従うのみではチャンスを掴めません。前回のアップデートで、「アナザーディメンションヒーローズ」モードが追加されました。このモードは生まれてくるアイデアや発見の一つから誕生したものです。」

「当初はストーリーモードの後半に新しい惑星を追加することを検討していましたが、さらにゲームモードを追加することでプレイヤーは楽しむことができ、その方法ならばより多くのストーリーを明らかにすることができると考えました。」

ゲームの発売後にコンテンツを更新することが一般的になり、ベテランの開発者と彼らが取り組んでいる長年のシリーズは、コンテンツの拡張でファンを喜ばせるという課題に直面していました。開発者は、メインゲームから「素晴らしい何か」が抜け落ちた感覚を与えないようにしながら、プレイヤーにエキサイティングで興味深いものを与えるよう注意する必要があります。

『星のカービィ スターアライズ』のDLCでは、最初のアイデアは星のカービィシリーズの長い歴史のお祝いをするというものでした。


熊崎と彼のチームは、プレイヤーがステージで遊ぶために操作する、4人のチームに追加できる以前の星のカービィシリーズの仲間と敵を調べました。当初、彼らは特定のキャラクターを追加することが物語的に一貫しているかどうかを心配しましたが、カービィがドリームロッドを使用して魔法のように彼らを召喚することを決定したことによりその問題は解決しました。追加のフレンズと、ゲームの起動時に利用可能なバンダナワドルディ、デデデ大王、メタナイトは「ドリームフレンズ」と呼ばれるようになりました。

「過去の話を考えると、特定のキャラクターを追加するのが難しいと思ったことが何度かありました」と熊崎氏は言いました。「しかし、私たちは早い段階でそのような厳格な条件は無くしました。物語に焦点を合わせると、これらのキャラクターと一緒に冒険するための扉がすぐに閉まってしまいますから。」

アップデートを通じて、彼らは『星のカービィ スーパーデラックス』のマルク、『星のカービィ 参上!ドロッチェ団』のドロッチェ、『星のカービィ ロボボプラネット』のスージーなど合計で10体追加しました。ゲームに新しいキャラクター追加では新たなチャレンジも生まれました。『星のカービィ 64』で登場するアドレーヌとリボンは1つの「タンデム」として組み合わせる方法を幸いなことに生み出せましたので、ブレークスルーとなりました。

ハル研究所はいくつかの愛しているキャラクターを除外しなければなりませんでした。例えば『毛糸のカービィ』のフラッフは入りませんでした。「ドロシア、エリーヌ、シャドウカービィ、ギャラクティックナイトなど、特別ゲスト出演させたいキャラクターはいました。しかし、私達は選択プロセスに一定のルールを用意しました。ルールは、長年にわたるメインアクションゲーム、いわゆる王道カービィ(ナンバリングの続編に相当します)の各タイトルからキャラクター1名を選択することでした。」

過去の作品から登場したキャラは皆、独自の特別な技を持つカスタムキャラクターです。彼らの精巧な出来と人気はHAL研がゲーム本編をどう拡大するかに影響を及ぼしたようです。熊崎氏によるとドリームフレンズは驚くほど人気があり、チームに影響を与え、メインのストーリーモードとは異なる「アナザーディメンションヒーローズ」実装に向かわせたそうです。「アナザーディメンションヒーローズ」では、プレイヤーはDLCを含むキャラクターで一度に一体ずつプレイし、障害の克服と環境パズルを解いてフレンズハート収集のためにそれぞれの独自の技を学び、使用する必要がありました。レベルデザインディレクターである遠藤裕貴が監督しました。熊崎氏曰く「このモードの主な焦点は収集です。難易度は全てを収集するかどうかによって異なります。つまり、幅広いプレイヤーがドリームフレンズと一緒に冒険を楽しむことができます。」

HAL研は年間を通じて『星のカービィ スターアライズ』に新しいキャラクター、新しいステージ、新しいゲームモード、新しいメモリアルイラスト、主に過去作品からのBGMなど多くの要素を追加し、ゲームをより良く、より出来を強固なものとしました。

全ての追加が豊富であると同時に、それらはまた発売当時の相対的な簡潔さも強調しました。作品には多くのステージがありましたが、すぐに攻略することができました。ミニゲームは最近の「星のカービィシリーズ」よりも浅く、シリーズの過去の寛大な基準によって判断された全体のボリューム感は一部のプレイヤー(このインタビュー著者のStephen Totilo氏含む)に驚くほどトリミングされたように感じました。これは、開発者がリリース後にゲームに追加することを知っていたためかどうか、熊崎に尋ねました。

彼は返信の中で、DLCの計画がゲームの長さに影響を与えた可能性があるという含意を回避しました。『スターアライズ』にはたくさんのステージがあると彼は言いましたが、プレイヤーはそれを素早くクリアできると認めました。このゲームにおけるチームの目標は「ゲームのバランスを取り、良いペースで進み、通常よりも活発に進行するようにすることでした。カービィを作るときに、より多くのプレイヤーにエンディングを見てもらいたいと考えています。」また、こう付け加えました。「最近のカービィは前回よりも少し難しく、広大になっていると感じました。」

「その観点から、シリーズの原点をもう一度見て、ゲームの開発に目を向けました。これまでゲームをプレイしたことがないお子さんでも、ゲームを続けてストーリーを進めることができ、私たちが『星のカービィ』で子供の時にカービィと出会った時と同じように、時間を忘れるほど遊んでいくように。」

熊崎は『スターアライズ』の無料DLCについて、多くのファンと同じように喜んでいたようです。ゲームはそれに適していましたし、HAL研もそう認識していました。「勿論、これら全てのアップデートを実現するのは簡単ではありませんでした。しかし、彼らのおかげでこのゲームの発売をファンと4回経験できたように感じました。元の発売日も入りますね。」

さて、常に新しいカービィゲームが存在することの必然性を考えると、彼らは1年分の追加の更新によってサポートされる別のゲームを作るのでしょうか?

「現時点でそれについて言えることは何もありません。」と熊崎氏はいいます。「しかし、ゲームを更新するにつれて、HDでの開発、4人用マルチプレイヤー、長い開発サイクルの経験から多くを学んだと思います。これらがハル研のカービィチームをさらに強くしたと確信しています!」

この記事について

経緯が分かりづらいので矢印でまとめます。

後半にステージを追加する形で決定

そのための操作キャラクターの新規追加

ストーリーのつじつま合わせは破棄して、過去作からの出演を大々的に。

メインアクションゲームから1体に(アドレーヌとリボンを1つのキャラにするアイデアも生まれる)

参戦したキャラクターであるドリームフレンズの出来に影響されゲームモードの追加に方針転換

最終的に「アナザーディメンションヒーローズ」誕生。

記事自体は昔からありましたし、ハル研究所が公式Twitterで紹介しましたので知名度はあります。ですが、全文の翻訳記事がありませんでしたので作成しました。成り行き上カービィの海外インタビュー記事を大体翻訳してますが…。

Stephen Totilo氏は『ハコボーイ!』のディレクター、向江 康博氏にもインタビューを行っています。
www.papenspiling.com
そんな彼も『スターアライズ』の初期のボリューム感に対しては指摘したそうですね。Eメールインタビューの関係上、熊崎氏は明確な回答をしませんでしたが、そういうものでしょう。この辺りは「スターアライズをもってカービィは表舞台に戻った」で指摘した部分が影響してたのかなと今も思っています。

『スタアラ』は(途中で)納期を設定された中で開発を行い、アップデートを行いながら完成させる、ハル研にとっては2004年から長い間ハル研ができなかったことを成し遂げる機会であったと言えます。

スターアライズをもってカービィは表舞台に戻った - Papen's Piling

今までできなかったことへの挑戦を行ったとなると、作りこみが甘かったりバグが多かったりするものです。そういった事情を考慮すべきとは私は思いません。お金と時間を費やした方々は批判できるのですから(口汚くやるのはキャリア、下手すれば人生を潰しかねませんのでオススメはしませんが)。

『スターアライズ』発売から4年経ち、次は『星のカービィ ディスカバリー』発売が待たれています。HD開発を乗り越え、遂に大規模な3Dアクションに挑戦したハル研究所がどんな作品をお見せするのか。3月26日が楽しみですね。