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【考察】First Studioとは何か?『デモンエクスマキナ』陣容解明【スタッフリスト】

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 今回は2019年09月13日に発売された『DAEMON X MACHINA』(以下、デモエク)のスタッフリストについて調べ、開発元であるMarvelousのFirst Studioの陣容を解明していきたいと思います。
対象は『デモエク』スタッフリストの内、22職種68名です。

  • PRODUCER
  • MECHANICAL CONCEPT DESIGN
  • DIRECTOR
  • ART DIRECTOR
  • (LEAD)PLANNER
  • (LEAD)PROGRAMMER
  • TECHNICAL SUPPORT
  • ART DESIGNER
  • (LEAD)CHARACTER MODELER
  • (LEAD)ENVIRONMENT ARTIST
  • (LEAD)MOTION ANIMATOR
  • CINEMATIC ARTIST
  • (LEAD)VISUAL EFFECT ARTIST
  • (LEAD)USER INTERFACE DESIGNER
  • SOUND ENGINEER

この68名の何を調べるのかと言いますと、以下の2点となります。

  1. 68名の内『アーマードコア』シリーズの開発経験者は何名いるか?
  2. First Studioは『Fate/EXTELLA: LINK』や『GOD EATER 3』の開発に参加しているが、それらの参加者と共通しているのか?いなければ今までにどのような作品に関わってきたのか?

 1つめは事実の確認です。『DAEMON X MACHINA』は初報の時点から『ARMORED CORE』(以下、AC)シリーズと連結した言及が度々ありました。そこから「ACのスタッフが作ったゲーム」という物言いが生まれる余地がありますが、実際にそうなのか見ていくことは大事だと思います。
2つめはFirst Studioの陣容解明です。MarvelousのFirst Studioは2017年に設立された組織であり、記事投稿時点の2019年では情報が全くと言って良いほど存在しません。今後、First Studioが様々なゲーム作品を世に送り出していくのであれば、ここにどのような人達がいるのか調べることは、決して無駄なことではないと思います。

以上、2点を今回は調べました。

忙しい人向けまとめ(最後の結論と同じです)

  1. 『AC』シリーズ関係者は佃 健一郎氏、河森 正治氏を除くと0。
  2. First Studioのスタッフは、『モンスターハンター ストーリーズ』等マーベラス、あるいは後にマーベラスと統合した会社が開発した作品のスタッフと、それ以外のスタッフに大きく二分される。

1:『AC』シリーズの開発経験者は何名?

 では最初に『AC』シリーズの開発経験者が何名いるか見ていきましょう。
『AC』シリーズの内、以下15作品のスタッフリストと比較し、開発経験者がいるかどうか見ました。

  1. ARMORED CORE
  2. ARMORED CORE PROJECT PHANTASMA
  3. ARMORED CORE MASTER OF ARENA
  4. ARMORED CORE 2
  5. ARMORED CORE 2 ANOTHER AGE
  6. ARMORED CORE 3
  7. ARMORED CORE 3 SILENT LINE
  8. ARMORED CORE NEXUS
  9. ARMORED CORE NINE BREAKER
  10. ARMORED CORE FORMULA FRONT
  11. ARMORED CORE LAST RAVEN
  12. ARMORED CORE 4
  13. ARMORED CORE for Answer
  14. ARMORED CORE V
  15. ARMORED CORE VERDICT DAY

結論から言いますと、佃 健一郎氏、河森 正治氏以外、『AC』シリーズに関わっている人はいませんでした。
他に誰かいるだろうと個人的には思っていましたが、まさかのゼロというのには驚きました。

判定法

 そのような結論をどのように出したか説明します。

  1. 『デモエク』のスタッフリストを転記する。ネット上にはないため実機でスタッフロールをスクショ、それをスプレッドシート上に転記した。
  2. 『AC』シリーズのスタッフリストを転記する。今回はMoby Gamesから調達し、その際、1つのセルに1人が入るよう調整する。
  3. Countif関数を用い、範囲を各『AC』のスタッフリスト、条件を『デモエク』開発者とする関数を用意する。範囲に条件と該当する名前があれば、1以上の値が出る。
  4. 1以上の値が出た人を再度調査。同一人物であると考えられるならば『AC』『デモエク』両作品に関わっていたと判定。できなければ無視。

下の画像はスプレッドシート上のリストです。黒塗りで白字に「1」とあれば、その作品に「同じ名前の人がいた」という証になります。逆に0であれば、「同じ名前の人がいなかった」ということになり、参加していないと解釈できます。
この「同じ名前の人がいた」というのが厄介で、同姓同名の別人であってもカウントされてしまいます。
例えば、プログラミングで参加しているHiroshi Nakamuraは『4』『fA』に1となっていますが、これは『4』『fA』でデザインを担当したHiroshi Nakamuraと混ぜこぜになったと言えます。数十名・数百名規模のゲーム制作においてプログラミングとデザイン双方が「プロ」というのは想定しづらく、まず別人であると考えられるからです。
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 とにかく、これで『デモエク』における『AC』開発経験者は佃氏と河森氏以外いないことが判明しました。

2:First Studioの陣容解明

 First Studioは『Fate/EXTELLA: LINK』と『GOD EATER 3』の開発に参加しています。そうなると『デモエク』開発スタッフに、二作品の開発に関わっている方は何名いるか気になるところです。
手法は先程と大して変わりませんので省略しますが、こちらで調べた所、以下の6作品に特に集中していました。

タイトル名 関わった人数
モンスターハンター ストーリーズ(2016) 20
SOUL SACRIFICE DELTA(2014) 15
Fate/EXTELLA LINK(2019) 11
マインドジャック(2011) 9
ロストオデッセイ(2007) 9
ラストストーリー(2012) 7

『モンスターハンターストーリーズ』については前回noteで投稿したものでも言及しています。
note.mu

無論、先程の6作品以外に関わっていた方、あるいはそもそもこれまでの軌跡を追えない方も合計すると34名います。その辺りを簡単な図表にまとめますとこうなります。
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結論

 ここまで『デモエク』の開発スタッフ、特にFirst Studioのスタッフを見てきました。その内実は

  1. 『AC』シリーズ関係者は佃氏、河森氏を除くと0。
  2. First Studioのスタッフは、『モンスターハンター ストーリーズ』等マーベラス、あるいは後にマーベラスと統合した会社が開発した作品のスタッフと、それ以外のスタッフに大きく二分される。

というものでした。

 前者については「関係者」はそうなります。ですが、今回検証したものはスタッフの「肩書き」だけであり、これまでに『AC』シリーズを遊んだ経験の有無については一切考慮されていません。全てが白黒付いた訳ではないですし、スタッフリストを調べるだけではそれが限界であるとも言えます。

 後者は、First Studioがマーベラスの社歴と密接に関わっていることを表しています。『ロストオデッセイ』や『マインドジャック』の開発にはフィールプラスが参加しており、そのフィールプラスはAQインラタクティブに吸収されました。AQインラタクティブは『ラストストーリー』開発に参加し、その後マーベラスAQLとして吸収・消滅。マーベラスAQLは『SOUL SACRIFICE DELTA』開発に参加し、社名変更でマーベラスに。そして、マーベラス時代に『モンスターハンター ストーリーズ』を開発・発売し、2017年にFirst Studioが設立。First Studioは『Fate/EXTELLA LINK』や『GOD EATER 3』開発に加わり、『DAEMON X MACHINA』に至るという流れです。
それが全てではありませんが、First Studioはその流れの中生まれた組織であり、その"色"が少なからずあると言えます。