『カービィシリーズ』の開発で有名なハル研究所。今回はこの会社について分析していきたいと思います。こちらで収集できる資料の関係上、2000年以降の分析がメインとなりますのでご了承下さい。
19/07/03:2019年期の情報を追加しました。
19/06/28:「近年の経営状況」に第40期決算公告を掲載しました。
18/11/22:「概要」と「従業員数と平均年齢の推移(2000~)」、「売上高の推移(2000~)」のグラフをGoogle スプレッドシートからの埋め込め式としました。モバイルではスクロールが必須となりました。他にも内容を改めました。
18/07/01:「概要」と「近年の経営状況」を更新しました。
17/08/19:「近年の経営状況」の追加と、「従業員数と平均年齢の推移(2000~)」と「売上高の推移(2000~)」のグラフに2016年のものを加えました。
- 概要(19/07/03更新)
- 近年の経営状況(19/07/03更新)
- 従業員数と平均年齢の推移(2000~)(19/07/03更新)
- 売上高の推移(2000~)(19/07/03更新)
- 開発体制
- 広報、商品展開
- 他社との協力
概要(19/07/03更新)
「ハル研究所とは何か?」、今回は基礎的な部分から説明していきます。まずは企業情報をHAL研公式HPから引用してみます。
1980年に設立された、ハル研究所。ゲーム会社としては歴史のある会社です。従業員数と平均年齢は少しずつ上昇しています(後ほど解説します)。関連会社の株式会社ワープスターは任天堂との共同出資となっています。『星のカービィ』のTVアニメ制作には『星のカービィ』の知的財産の管理が必要とされ、アニメ放送2ヶ月前に設立されました。
代表的な作品は『星のカービィシリーズ』ですが、シリーズ全ての作品にハル研究所が関わっていた訳ではなく、例えば『カービィのブロックボール』、『コロコロカービィ』、『毛糸のカービィ』は発売日年表に載っていません。カービィ以外の作品では『ハコボーイシリーズ』、『MOTHER2 ギーグの逆襲』、『大乱闘スマッシュブラザーズDX』、『糸井重里のバス釣りNo.1』、『ポケモンスナップ』、『アルカエスト』、『エッガーランドシリーズ』、『ジャンボ尾崎のホールインワン・プロフェッショナル』、『カードマスター リムサリアの封印』などに関わっています。作品自体は多いですが、シリーズものとして成功した、もしくはハル研究所が連続で関われているのは『星のカービィシリーズ』、『ハコボーイシリーズ』、『エッガーランドシリーズ』の3つに限定されます。
近年の経営状況(19/07/03更新)
近年の経営状況は官報の画像をご覧下さい*1。
第38期(2016年04月01日~2017年03月31日)は4億3,500万円の赤字で、売上高は11億7,900万円でした。
第39期(2017年04月01日~2018年03月31日)は4億8,100万円の黒字でした。売上高は24億3,100万円でした。
第40期(2018年04月01日~2019年03月31日)は14億1,300万円の黒字でした。売上高は42億9,700万円でした。これは2000年代最高の売上高として2015年3月期(31億7,898万円)を更新しました。
従業員数と平均年齢の推移(2000~)(19/07/03更新)
ハル研究所は2000年から公式サイトが作られ、数度に渡ってサイトが改修されています(現在はSONICJAMが中心となり制作した4代目)。先ほど引用した情報はこの頃からあるため、結果として2000年から現在に至るまでの従業員数と平均年齢の推移がグラフにできました。
全体的に増加傾向なのは見れば分かると思います。逆に平均年齢がガクっと下がったのは2001年、2008年、2009年(僅かですが2013年にもその傾向があります)の3つに限定されます。恐らくこの時期に新卒社員の採用と、社員の退社が同時に起こっていたのでしょう。尚、現在のハル研究所東京開発センターは1999年4月に誕生しました。ですので事実上、山梨と東京の2つの開発センターが設置されてからの集計となっています。全体的な規模としては中小企業クラスと言えます。
売上高の推移(2000~)(19/07/03更新)
売上高もハル研究所では毎年公式サイトに載せられています。名も無き人々のwayback machineにおけるアーカイブ化により、これらの情報は現在も閲覧可能な状況にあるため、筆者もそこからグラフ作成が可能になりました。
この売上高はソフトの発売と大体リンクしており、
- 2001年から2002年にかけての上昇は『大乱闘スマッシュブラザーズDX』
- 2006年から2007年にかけては『星のカービィ 参上!ドロッチェ団』
- 2011年から2012年にかけては『星のカービィ Wii』と『あつめて!カービィ』
- 2018年から2019年にかけては『星のカービィ スターアライズ』
が関係しているようです。2015年の異様な売上高については前年に発売された『星のカービィ トリプルデラックス』や『カービィファイターズZ』、『デデデ大王のデデデでデン』、そして2015年の1月に投入された『ハコボーイ!』と『タッチ!カービィ スーパーレインボー』が関係しているように見えます。
逆に、前年にあまりソフトを出していない、またはソフトを出しても人気作となれなかった場合売上高は10億前半を推移するようです。
開発体制
ハル研究所は山梨と東京に開発センターを持っておりますが、それぞれが独自に開発を行っているというよりは、山梨は単独(+東京からの応援)、東京は他の会社と共同で開発(+山梨からの応援)という形でゲーム制作を進めています。
山梨開発センター
経緯
山梨に今の開発センターが設立されるまでには少々複雑な経緯を辿ります。簡単に言うと山梨の開発センターを竣工した後、ハル研究所多額の負債により和議を申請し、当時の全社員がそちらへ移転したという経緯となっています。当時のドタバタなどハル研究所のルーツを覚えている人が古参に当たる開発センターだということです。尚、この山梨開発センターは1990年に社員の増加に応じて造られたようですが、詳しい理由は判明していません。1992年から2000年までハル研究所の代表取締役社長を務めた岩田聡も
今から考えると、
山梨にいなかったら、開発チームが初期に
「草刈場」に、なっていたかもしれません。
つまり、優秀な人たちがつぎつぎと
ひっこぬかれて別の会社にいってしまうという。
山梨の移転の理由を「振り返って」述べており、「当時何故移転しようと考えていたか」は明らかにしていません。不動産投資で手に入れた土地を利用しようと考えた結果でしょうか…?
特徴
現状、山梨では王道カービィとそれ以外の作品の開発を担当しています。人数や設備はこちらの方が多く、『カービィのエアライド』ではシティトライアルとエアライド、『星のカービィ Wii』ではメインゲームの部分を担当したりと開発の主役として扱われている節があります。特に、競合社が近隣の地域にいないという環境は、ハル研究所の「質重視」の開発スタイルの形成に大きな影響を与えていると言えます。
東京開発センター
経緯
こちらは『ポケモンスナップ』を開発した「ジャックの豆の木計画」(ジャックアンドビーンズとも呼ばれる)の解散後、残った者がスターティングメンバーとなりました。「ジャックの豆の木計画」は全ての人員を広告募集するという野心的なプロジェクト*2で、運営母体はハル研究所でした。このプロジェクト出身で、今もハル研究所に在籍している人は川瀬 滋史、山本 正宣、山本 洋一が挙げられます。
特徴
「ジャックの豆の木計画」は運営母体はハル研究所ですが、任天堂の山内 溥、宮本 茂が関係者として参加するというプロジェクトでした。この任天堂との関係を東京開発センターは重視しているようで、彼らが中心になって開発したと思われる『あつめて!カービィ』や『タッチ!カービィ スーパーレインボー』では任天堂社員が開発の中心にいることがスタッフリストから読み取れます。前者のディレクションは任天堂の白川 真里、後者のゲームデザインに任天堂の吉川 和宏が関わっているからです。単に建物の都合上で配置できる人員や資材が少ないので、任天堂の協力が必要となっているのかも知れませんが。『カービィのエアライド』ではウエライド*3、『星のカービィ Wii』ではサブゲームを担当しており、物理的な負担の少ない部分に関与していることが分かります。
広報、商品展開
近年、ハル研究所と任天堂が管理する『星のカービィシリーズ』の商品展開の激しさが増しておりますがこれらの活動の中心は、ハル研究所においてはブランドマネジメント課がそれに該当します。
こちらの記事の「担当する人達」をご覧下さい。
他社との協力
任天堂との関係は深く、既に30年もの間、生産パートナーとしてあり続けています。ここでは、社名が判明している任天堂以外の他社との関係を簡潔に書いていきます。
ゲーム
近年のゲームにおける他社との協力はゲーム全体、企画、ムービー、デバッグの4種で大別されます。
まずゲーム全体ではFLAGSHIP(解散)が『星のカービィ 鏡の大迷宮』『星のカービィ 参上!ドロッチェ団』を、グッド・フィールが『毛糸のカービィ』を担当しています。『毛糸のカービィ』にはハルデバッグチームが存在せず、ハル研究所の関わりの度合いが少ないことを示唆しています。
企画では、エンジンズ(スパム注意?)、PROGE.が挙げられます。エンジンズは『あつめて!カービィ』のゲームデザインに、PROGE.は『カタチ新発見!立体ピクロス2』の問題制作とモデリングに関わっています。問題制作とモデリングは作品のコアとも言える部分ですので、企画に入れました。
ムービーでは、D.A.Gが『星のカービィ ロボボプラネット』に関わっています。尚、この作品のスタッフリストのムービーにクレジットされている方は全員D.A.G社員です。
デバッグでは、ポールトゥウィンとデジタルハーツが挙げられます。ポールトゥウィンは『星のカービィ ウルトラスーパーデラックス』と『タッチ!カービィ スーパーレインボー』で、デジタルハーツは『あつめて!カービィ』と『星のカービィ 20周年スペシャルコレクション』のデバッグ、テスティングに関わっています。
グッズ
グッズにおける関係各社の担当部分は制作、販売、運営の3種に分かれます。こちらはゲームと違って全然網羅し切れていません。
制作は三英貿易、エンスカイが挙げられます。三英貿易はぬいぐるみを中心に、エンスカイは公式イラストや新規描き下ろしを活用した製品群を展開しております。
販売はエンスカイ、キデイランド、ヴィレッジヴァンガード、カフェレオ、ロフト、パルコ、TBSストアが出せます。特にキデイランドとヴィレッジヴァンガードはカービィフェアを度々催しており、存在感が大きいです。カフェレオはグレイ・パーカー・サービスやエンスカイが発売したグッズの販売代理として、カービィと関係しています。尚、ロフトは商品制作も行っているようですが、ロフトがメーカーとして載っているカービィシリーズの製品が現状発見できていません。
運営はスパークルやベネリックがそれに当たります。これらの会社はカービィカフェ(2016, 2018-2019)を運営しています。