作品には大抵スタッフリストが付けられ、そこには役職とそれに就いた人の氏名があります。ですが役職はその会社や時期によって大きく異なります。今回はその説明をするための記事となります。尚、内容が重複しているためこの記事の公開後「Wii・TDX・ロボプラのスタッフリストから読み取る、今のプログラマー、デザイナー達」は非公開となります。ご了承ください。
8/25…8月7日に設定したフォーマットに従って、内容を一部変更しました。
- 調べた担当について
- 1.ディレクター
- 2.ゲームデザイン(プランニング)
- 3.レベルデザイン
- 4.プログラム
- 5.リードアクションプログラム
- 6.デザイン
- 7.[Wiiのみ]サブゲーム(派生:ディレクター、プログラム、デザイン)
- 8.ムービー
- 9.サウンド(派生:リード)
- 10.ボイス
- 11.チームサポート
- 12.テクニカルサポート
- 13.パブリックリレーションズ
- 14.アートワーク
- 15.マニュアルエディション
- 16.[タチカビSRのみ]キャラクターコーディネーション
- 17.テスティング
- 18.[タチカビSRのみ]サポートプログラム
- 19.スペシャルサンクス
- 20.コーディネーション
- 21.プロデューサー(派生:コ、ゼネラル、エグゼクティブ)
調べた担当について
「Wii・TDX・ロボプラのスタッフリストから読み取る、今のプログラマー、デザイナー達」で調べた範囲よりさらに拡大しました。まず対象作品が『Wii』、『TDX』、『ロボプラ』の3作品に『USDX』、『あつカビ』、『20周年SP』、『カビファZ』、『デデデンZ』、『ハコボーイ』、『タチカビSR』、『もうひとハコ』の8作品が追加されました。
そして対象となる役職が以下の通りとなりました。
- ディレクター(派生:ゼネラル、シーケンス、アシスタント、セクション)
- ゲームデザイン(プランニング)
- レベルデザイン
- プログラム(派生:ディレクター、リード)
- リードアクションプログラム
- デザイン(派生:モチーフ、UI、ディレクター、リード、アドバイザー)
- [Wiiのみ]サブゲーム(派生:ディレクター、プログラム、デザイン)
- ムービー
- サウンド(派生:リード)
- ボイス
- チームサポート
- テクニカルサポート
- パブリックリレーションズ
- アートワーク
- マニュアルエディション
- [タチカビSRのみ]キャラクターコーディネーション
- テスティング
- [タチカビSRのみ]サポートプログラム
- スペシャルサンクス
- コーディネーション
- プロデューサー(派生:コ、ゼネラル、エグゼクティブ)
派生を統合すると21種の職が対象内です。今回は役職についての分析・考察がメインですので、ネームバリューが高く、分析できるだけの材料がある人物のみ人物分析を行いました。人物分析の対象となった人には括弧内に入社年(HAL研社員のみ対象で、分かった場合のみ)を記載、山括弧の時は該当作品を載せています。
参照する際に用いた資料はこちらです。
1.ディレクター
代表的人物:熊崎 信也(2002)、岡田 信志(2008)、向江 康博(2004)、増田 一繁
HAL研では「企画ディレクション」に相当します。
ゲームのアイディアを発案し、面白さのコアとなる部分を見つける企画者としての役割と、ゲームの仕様作成からクオリティ監修まで、制作全体の指揮をとるディレクターとしての役割の両方を担う。
リクナビ2017では必要な素養として
【必要な素養】
・他に類を見ない価値あるモノや方法を発想し、創造する力
・未経験のことも、主体的に工夫し推し進められる対応力
・「絵」と「言葉」でアイディアを論理的に表現・伝達する能力出典:株式会社ハル研究所の企業情報|リクナビ2017|学生のための就活準備・就職情報サイト、リンク保持のためウェブアーカイブ
以上が挙げられています。最後の項目はデザイナーでないと厳しく、かつてのディレクターの桜井や下村も元々はデザイナーでした。勿論熊崎や向江もデザイナーです。
ハル研究所ではディレクターが企画を出し、ゲームの監修を務めますが、他の会社では2つの仕事を分離して担当させることが普通なようで、桜井はその認識の差に驚いていました。
ここでわたしが個人的にびっくりしたのは、ディレクターに"ゲームの発案"と明記した会社が1社しかなかったこと。わたしはアイデアを出した(=企画を立てた)人がディレクターになるものだとばかり思っていました。
出典:『桜井政博のゲームについて思うこと』P129、週刊ファミ通2004年2月27日号、3月5日号掲載『ゲームを創るいろんな職種』
1-1.ゼネラルディレクター
代表的人物:熊崎 信也〈ロボプラ〉
ゼネラルディレクターという職は『夢の泉DX』の時に存在し、桜井が務めました。熊崎が『ロボプラ』でその職に就くというのは権限が拡大したのか、それとも単なる人事上の都合なのか定かではありませんが、非常に興味深いです。
ちなみに桜井はゼネラルディレクターを務めたことについてN.O.M*1から質問され、彼は
N.O.M 今回、桜井さんはゼネラルディレクターという立場ですね。
桜井 『スマブラDX』が終わってからはゼネラルディレクターという呼び名になりました。アニメの監修をしながら、いろいろなソフトを同時に見ていきますし、たまには『カービィ』の関連商品についてもチェックします。だから、スタッフの中だけでうまく仕事が回ることが理想です。
と答えています。そのため、桜井としてはそこまで作品には関わっていないと判断できます。実際、彼の著書の1つ『桜井政博のゲームを作って思うこと2』の127ページにある、「桜井さんがこれまでにディレクションした作品の表」に『夢の泉DX』は入っていませんでした。
では、このような桜井の立ち位置が熊崎にも適用されていると言えるのでしょうか? 筆者はそうは思っていません。桜井の時のように開発中の作品の監修に追われている状況が我々には把握できません*2し、グッズ展開に熊崎が関わっているととれる文言は見つかりません。そのため、何故熊崎がディレクターからゼネラルディレクターに変わったかは「不明」であるというのが現状の結論です。
1-2.シーケンスディレクター
代表的人物:神山 達哉〈ロボプラ〉
シーケンスディレクターという役職については『みんなの常識力テレビ』でそれを務めた、増田 一繁が言及しています。
みなさん、はじめまして!
増田と申します。
今回の『みんなの常識力テレビ』では、シーケンスディレクターを担当させていただきました。
シーケンスディレクター…聞きなれない言葉ですね。
わかりにくいので、今回のプロジェクトでも大変お世話になりました、三省堂さんの大辞林で、ちょっと調べてみました。
シーケンス:(連続の意)
�映画で、いくつかのシーンによって構成される挿話。
いやあ、大辞林、便利便利。
つまり『ゲーム中の画面やシーンの流れを考えたりした人』
ということになりますね。
ただ、ゲームって基本的に画面と画面の繋がりで成り立っているものなので、
ゲーム全般のさまざまな箇所に顔を出しては、
「こうしましょう」とか「ああしましょう」とか、相談をしていた人ということになります。出典:『みんなの常識力テレビ』 開発後記 vol.2、ページ最下部までスクロール
現在もこの意味合いで利用されていると仮定するなら、神山はゲーム全体を監修し、問題点や改善点を指摘する第二の目となっていたと言えます。『20周年SP』で彼は熊崎と共同でディレクターを務めていますので、そのような仕事を任されたと考えるのは不思議ではありません。
なお、「シーケンスとアシスタント、どっちが上?」という質問をこちらで想定してみましたがこれは「前者が上」と答えるのが良いでしょう。というのも、シーケンスディレクターを務めたのは今回の対象範囲では神山のみで、その神山がアシスタントからシーケンスに移行したからです。『TDX』でリードレベルデザインを務めた遠藤が『ロボプラ』でレベルデザインディレクターに昇格を果たしたのと同じパターンと考えますと、シーケンスとアシスタントでは求められる力量が前者のほうが多いと考えて然るべきでしょう。
1-3.アシスタントディレクター
代表的人物:遠藤 裕貴〈Wii〉、岡田 信志〈TDX〉、神山 達哉〈Wii、TDX〉
アシスタントディレクター、つまりディレクターを補佐する役割を持ちます。神山はその時やった仕事について話していますので、それを引用してみます。
たとえば、「クオリティを上げるには人手が足りない」「仕様変更すると作業ロスが発生しそう」など、制作を進めていくと何かと問題が起きるわけですが、いち早くメンバーの増員をプロジェクトリーダーに相談したり、進捗確認の頻度を上げたりと、自分から動くことで回避しています。
問題をいち早く確認し、それをリーダーに報告して対策を施すのが神山が例として出した"仕事"です。こういった仕事は全部自分から動かなければ出てこないため、彼は同記事の見出しでそのようなあり方を「ゲームを面白くするためなら何でもやります」と一言で表しています。尚、かつてハル研究所に所属していた桜井政博も
オフィス内における多くの仕事はわたしが"やる"と言ったから生じていること。
出典:『桜井政博のゲームを作って思うこと2』P26、週刊ファミ通2011年3月3日号掲載『ムダな仕事の意味』
と、似たようなことを自著に残しています。
1-4.セクションディレクター
代表的人物:向江 康博〈ロボプラ〉、東藤 由実〈ロボプラ〉
『ロボプラ』で新設された職。これに関しては完全に筆者の憶測となってしまいます。ちなみに憶測には2つあり、どちらも同じ2つの証拠を利用します。まずは証拠から解説していきます。
1つめは向江は『ハコボーイ』、『もうひとハコ』でディレクターを担当し、東藤は『カビファZ』、『デデデンZ』でデザインディレクターを務めたこと。
2つめはセクションの意味です。
1 組織や構成の上から他と区別される部分。部門。「会場は三―からなる」
2 会社・団体などの部局。課。「営業の―」
3 文章の一区分。
4 新聞などの一欄。「ホーム―」
この4つの意味の共通点は「独立した1つの部分」です。以上の2名の過去に務めた担当と、セクションの意味を土台にして、セクションディレクターの実態に関する2つの予想をこれから話していきます。
ディレクターというのは基本的にゲーム全体の監修をします。そこにセクションが付くということはある特定の分野の監修なのではと筆者は考えました。というのも向江は『ハコボーイシリーズ』というパズルアクションゲームのディレクションを行ってきたましたが、そこでは世界観がモノクロだったので、強いカービィの色彩豊かな世界観を担当させるには荷が重すぎます。しかし『ハコボーイシリーズ』でステージ制作をこなしており、パズルアクションの経験があります。
W14のトゲボーが出てくるステージが好きだね。
パズルゲームとして成立させる落としこみに
苦労したという点で、個人的には思い入れが
あるし、キュービィたち以外の唯一の生命体
という意味深な感じもいいよね。
王道カービィと『ハコボーイシリーズ』はシステムという点では全くの別物ですが、ジャンルとしては同じ2Dアクションですので、彼はアクションゲームに関する総合的なノウハウは持っています。そのため、向江がアクションゲームの制作を通じて得たノウハウを生かした監修を担当したのではないかと筆者は考えました。
次に東藤ですが、彼女は『カビファZ』、『デデデンZ』でデザインディレクターを担当していました。そのため第二のデザインディレクターとして活動していた可能性があります。『ロボプラ』では、『TDX』でデザインディレクターだった上武 理志がコ・プロデューサーとなったので松浦が支援を受けづらい環境にあると思われ、先にデザインディレクターを経験した東藤が松浦のサポートをしたと言えます。
よって、1つめの予想は「向江がアクション全般のディレクター、東藤が第二のデザインディレクターとして特定の分野の監修を担当した」となります。
もう1つの予想はセクションディレクターそのものの意味合いは最初と変わりませんが、担当する分野が『カービィハンターズ』か『カービィの3Dチャレンジ』かという違いがあります。『カービィハンターズ』はアクションそのものは本編と変わりませんが、独特な世界観が形成されています。東藤がこちらの監修を務めたと言うのもおかしくはないと思います。しかし、向江が『カービィの3Dチャレンジ』の監修を担当したと予想するには正直言って証拠が少なすぎますが。
ともかく、2つめの予想は「向江が『カービィの3Dチャレンジ』、藤堂が『カービィハンターズ』のディレクターとして特定の分野の監修を担当した」となります。
尚、8月25日に公開されました「スージーのしんりゃくレポート」第5弾でサブゲームが紹介されましたが、『カービィハンターズ』は東藤 由実、『カービィの3Dチャレンジ』では向江 康博のスケッチが紹介されました。このことから、2つめの予想が当たっていたことになります。勿論、1つめの予想も否定はできませんが、直接的な証拠は2016年8月25日時点では発見できていません。
2.ゲームデザイン(プランニング)
代表的人物:はまむら たかし、浜田 隆史(2009)
『あつカビ』や『タチカビSR』などハル研究所東京開発センターが中心となって開発する作品ではプランニング、ゲームデザインがスタッフリストに載ります。浜田 隆史が企画ディレクションとして入社していることを考えますと、ハル研究所山梨開発センターが主導する作品のスタッフリストに載る、ディレクターとレベルデザインを足したようなものでしょう。
はじめまして。
今年、企画ディレクション職で入社しました浜田です。
3.レベルデザイン
代表的人物:遠藤 裕貴(2006)、神山 達哉(2006)
レベルデザインというのは、ステージの構造や雑魚敵の配置を設計する担当のことでです。。基本的に別の作品でアシスタントディレクターを務めた人が対象となります。
レベルデザインの担当が少ないのはディレクターの熊崎曰く
何名かでサポートしましたが、
ほとんどのマップをつくったのは1名です。
ひとりなのでノウハウも集中的にたまっていきますし、
そばで見ながら相談していくと、
あがってきたものを監修するよりも
時間的に倍ぐらいの手ごたえがありました。
とのことです。
3-1.リードレベルデザイン・レベルデザインディレクター
代表的人物:遠藤 裕貴〈TDX、ロボプラ〉、神山 達哉〈もうひとハコ〉
レベルデザインのリーダー、ディレクターを担当する。何故遠藤がわずか1作品でリードからディレクターに昇進したかは不明です。
4.プログラム
代表的人物:中野 宏晃(2006)、永田 善裕(2008)、大西 洋(2008)、住友 克禎(2003)
プログラム担当なので、当然ですがプログラマーが就きます。ハル研究所におけるプログラマーの役割は以下の通りとなります。
ゲーム開発においては、アイディアをプログラミングによって形にし、他のスタッフが作りあげたCGやサウンドとともに、1本のゲームとして組み上げていく役割。
企画者から次々と出される要望に応えるのはもちろん、プログラマー視点で様々な提案を行い、ゲームの楽しさや操作の気持ちよさを表現している。また、ミドルウェアやゲームフレームワークなど、ゲーム制作に必要不可欠なシステム、ツール類の開発も行っている。
ちなみに、リクナビ2017では必要な素養として
【必要な素養】
・理工系大学(高専含む)卒業程度の知識
・プログラミング能力向上に積極的に取り組んでいること出典:株式会社ハル研究所の企業情報|リクナビ2017|学生のための就活準備・就職情報サイト、リンク保持のためウェブアーカイブ
以上が挙げられています。
4-1.プログラムディレクター
代表的人物:中野 宏晃〈Wii、TDX〉、大西 洋〈カビファZ、デデデンZ〉、永田 善裕〈ロボプラ〉
その作品のプログラムでの中心を務める担当だと思われます。中野 宏晃は社長が訊く『星のカービィ Wii』に登場しており、岩田に
あの~、プログラムリーダーとデザインリーダーが、
こんなことを言っていますが(笑)。
と言われているため、文字通りリーダーとしてこの場に呼ばれたことが分かります。
4-2.リードプログラム
代表的人物:永田 善裕〈TDX〉、西村 悠樹〈ロボプラ〉、川路 慎一〈ロボプラ〉、大西 洋〈ロボプラ〉
TDXでリードとなった永田はロボプラでディレクターとなったように、プログラムディレクターへの入り口となっている可能性が高いです。西村、川路、大西の3名が以降の作品でどうなるのか注目すべきしょう。
5.リードアクションプログラム
代表的人物:住友 克禎〈Wii、TDX、ロボプラ〉
結論から言ってしまうと、ここが熊崎の右腕を意味するポストだと筆者は考えました。何故そのような結論に至ったのか、説明してきましょう。
まず、熊崎は社長が訊く『星のカービィWii』でこのようなことを言っています。
『タッチ!カービィ』のとき
いっしょにラスボスをつくったプログラマーがいるのですが、
週末もなぜかよく会社にいるスタッフで、
「こういうのをつくってみて」と提案すると
目の前ですぐつくってくれるんです。
熊崎はあくまでもデザイナーであり、ゲーム上で彼が描いたキャラを実装させる能力を持っていません。あったとしても、プログラマーの助けが必要です。そこで重要なのが、『タチカビ』の時点でまだ入社4年目だった熊崎にとって、アイデアを気兼ねなく提案できそうなプログラマーがどれだけいたかとなります。『タチカビ』のスタッフリストはローマ字表記となっているため、漢字表記にしたものをプログラムに限定して掲載しました。
出典:タッチ! カービィ/スタッフリスト - カービィWiki - Wikia
- 高橋 芳美
- 乙黒 誠二
- 迫田 勝弘
- 永島 康行
- 盛 幸司
- 住友 克禎
- 羽生 昭夫
- 福永 正明
- 河原 孝章
羽生は『初代』誕生前からHAL研に在籍しており、高橋、乙黒の両者は『夢の泉の物語』から、迫田は『3』、長嶋は『SFCきらきらきっず』から、福永は『夢の泉DX』からいます。盛は2000年、河原は2001年。しかし、住友は2003年にHAL研にやってきました。
つまり、明確に熊崎の後輩と言えるのは『タチカビ』の時点では住友しかいないのです。年齢差や入社時期が上下関係に大きな影響をもたらすことを考えますと、彼だけが熊崎の右腕になり得たと言えるでしょう。
右腕ということは、この記事で散々言ったような彼の作風をゲーム上に実装させる役割となります。
6.デザイン
代表的人物:上武 理志、松浦 萌奈美(2003)、中村 和幸、北 健一郎(1995)、藤田 剛志(2006)、大田 裕介(2007)、伊藤 春香(2007)、川上 雄太(2009)、橋倉 正、剣持 紫(2006)
ハル研究所においてデザイナーは以下のように定義されています。
キャラクターや背景のデザイン、3Dモデリング、モーション制作、カメラワークなど、ゲームにおける視覚表現を担当。企画者が考え出すゲームのアイディアや仕様、アートディレクターが構築した世界観を正しく理解し、そこに自分ならではの発想や提案を加えて、オリジナリティあふれるビジュアルを制作していく。
アートディレクターがデザインディレクター、リードデザインに相当します。ちなみに3Dモデリングに利用されるソフトは『Maya』です。ハル研究所では遅くとも2004年から採用されています(尚、このソフトはプログラマーも新人研修で利用法を教わります)。
いざ、デザイン素材の作成の段になっても、押し寄せるテクニカルタームの嵐、
メニューラベルの意味すら分からない英語アプリケーション(Maya)を前に、
思ったかな?「こりゃとんでもないことになったぞ」と。
また、大田によるとゲーム内のデザインを大きく分けて4つに分類しているとのこと。
まず、ゲーム内のデザインは大きく4つに分類されます。
◆キャラクターデザイン
主人公、敵など、生き物のデザイン
◆背景デザイン
地面や景色、遠景のデザイン
◆ギミックデザイン
様々な仕掛け(例:動く床、壊せそうな壁など)のデザイン
◆インフォデザイン
体力ゲージやポーズボタン、メニュー画面などのデザイン出典:背景デザインの必要性 | ハル研ブログ | ハル研究所、リンク保持のためウェブアーカイブ
実際には4つのデザインを目的に合わせ、プレイヤーの感情に訴えるようにする仕事があり、スタッフリストではモチーフデザインと呼称される第五の担当が存在します。
6-1.デザインディレクター
代表的人物:吉川 仁志〈USDX〉上武 理志〈Wii、TDX〉、松浦 萌奈美〈ロボプラ〉
キャラクター、背景、ギミック、UI、モチーフ全てを統括する担当。複数のデザイナーによって彩られる世界観を統一するためには不可欠な職です。TDXでUIのデザインリーダーを務めた松浦が上武と代わってディレクターとなりました。吉川はその後もデザインとして『Wii』、『TDX』、『ロボプラ』に関わり、『20周年SP』ではモチーフデザイン、『ハコボーイ』ではレベルデザインを担当しています。
6-2.リードデザイン(Wiiではリードキャラクターデザイン)
代表的人物:北 健一郎〈USDX、Wii、TDX、ロボプラ〉、藤田 剛志〈TDX、ロボプラ〉、
先程のキャラクター、背景、ギミック、インフォ(TDXまで)のリーダーとなった人に与えられる担当。インターンシップ2014、2015の特設サイトによると北、川上はキャラクター、藤田はギミック、松浦はUI、大田は背景のリーダーを担当していたことが分かります。それぞれ仕事で何をやってきたかを鮮明にしているので一度はご覧下さい。リンクは文中最後に用意されています。ちなみに、2015の方に「伊藤」というデザイナーがいますが、顔と名前からして、こちらは伊藤「仁」の方で、リードデザインの「春香」ではありません。
2014年版は最初に演出が入るので閲覧できるまで少し時間がかかります。
6-3.リードモチーフデザイン
代表的人物:橋倉 正〈Wii〉、菅野 晃宏〈ロボプラ〉
デザインに命を与える仕事、モチーフデザインのリーダー。『Wii』では『夢の泉の物語』から関わっているベテランの橋倉が務めましたが、『ロボプラ』では菅野に代わっています。実は菅野は『TDX』ではデザイン担当で、モチーフデザインとしてクレジットされていませんでした。職能面談でそちらに入れたほうが良いと判断され、菅野本人も同意したのでしょうか?真相は不明です。なお、橋倉は『ロボプラ』にもいますがモチーフデザインに留まっています。吉川と同じようなケースを辿ったのかは判断できません。
6-4.リードUIデザイン
代表的人物:剣持 紫〈ロボプラ〉
『ロボプラ』では役割の明文化のためか、UIデザインのリーダーもスタッフリストで明記されるようになりました。
7.[Wiiのみ]サブゲーム(派生:ディレクター、プログラム、デザイン)
代表的人物:増田 一繁、鈴木 輝彦(2000)
『Wii』では、サブゲーム担当のディレクター、プログラマー、デザイナーが配置されています。担当がサブゲームに限定されているだけなので特別な説明は必要ありません。しかし1つ気になることがあります。
実はこの『Wii』のサブゲーム担当の多くは、後に『タチカビSR』で重要な担当に就いているのです。こちらがその比較結果となります。角括弧のアルファベット+数字は並び替えの時に必要なものです。
8.ムービー
代表的人物…渡辺 晋夫
その名の通り、ムービーを担当する所です。『ロボプラ』では株式会社D・A・Gが担当しており、クレジットされている人も全員D・A・G社員となっています。
9.サウンド(派生:リード)
代表的人物…安藤浩和(1991)、石川淳(1990)、酒井省吾(1996)
ゲーム制作というのはディレクターが編み出した世界観をプログラマーはプログラムで、デザイナーはデザインで、そしてサウンドクリエイターはサウンドで表現することになります。職種紹介ではこのように説明されています。
企画者が思い描くゲームの世界観を音楽と音で表現する役割。BGMなどの作曲はもちろん、アレンジャー、マニピュレーター、ミキシングエンジニア、オペレーター、マスタリングエンジニアのほか、効果音制作、サウンドディレクション、音の組み込みなど、ゲーム中の「音」のすべてを手がけている。
スタッフリストで「サウンド」と明記されるのは音と効果音どちらも担当した場合のみです。『あつカビ』や『タチカビSR』のように音楽と効果音で別れている場合はそのように扱われません。
石川淳と安藤浩和に関しては過去記事のこちらを参照して下さい。
10.ボイス
代表的人物…大本 眞基子
声を担当した人がここに入ります。尚、本職でない人がボイスを務める場合は入りません。例えば『Wii』以降のメタナイトはデザイナー(誰かは確定していません)、『USDX』以降のデデデは熊崎が担当していますが、2名ともスタッフリストにボイス担当としてはクレジットされていません。
11.チームサポート
代表的人物…乙黒 誠二、高橋 芳美
『TDX』で新設された役職。プロジェクト進行の中心となるチームを補佐すると思われます。『TDX』では古参社員で占められていましたが、『ロボプラ』で参加した峯島 紗穂の経歴が分からないため、現在もベテランチームとして編成されているかは不透明です。
12.テクニカルサポート
代表的人物…鶴岡 友和(2000)、田上 達宏
「テクニカル」と言うと技術的、つまりプログラム関係のサポートだと思われそうですが、デザイナーも3Dモデリングなどで高度な技術を利用するため、デザイナーもここに加わることがあります。事実『ロボプラ』では、『USDX』にてデザインを担当した皆川 健と、同作品でモチーフデザインに所属した田上 達宏がテクニカルサポートに参加しています。尚、任天堂社員が入ることもあります。
13.パブリックリレーションズ
代表的人物…石田 聡、帯金 千恵子(1994)、峰村 智大(2003)
宣伝・広報活動に従事する人がこの役職に就きます。石田 聡(「さとる」ではなく「さとし」)は「イシダ」名義でmiiverseコミュニティの『TDX』、『カビファZ』、『デデデンZ』(カビファZとデデデンZは統合)、『ロボプラ』スタッフルームで情報発信を行っていて、帯金はハル研究所公式ウェブサイトの制作・管理を担当しています。峰村がどのような活動に従事しているかは今のところ不明です。
14.アートワーク
代表的人物:能登谷 哲也、川原 理恵子(2005)
ゲームのロゴやパッケージ、広報素材(所謂公式イラスト)の作成担当。ライセンシー*3との監修会議もあるため、名刺を特に必要とする。しかしアートワークの仕事はこれだけではありません。
アートワークの最大の仕事は"ブランドマネジメント"です。職種紹介のブランドマネジメントを引用してみましょう。
自社のゲームやキャラクターの魅力をより良い形で世の中に伝え、次の展開へとつなげていく役割。ゲーム、アニメ、キャラクター商品のそれぞれが互いの価値を高め合い、発展していけるよう、社内外の関係者と一丸となってモノづくりを進めている。プロデュースを担当するスタッフと、ゲームのロゴやパッケージ、広報素材などのアートワーク、キャラクター商品向けのイラストレーションなどの制作を担当するデザイナーが所属する。
アートワークがブランドマネジメントの一部分として構成されているのが分かります。ブランドマネジメントが何を意味するかこの職種紹介では分かり辛いですが、そこに所属している藤江 宏志は「タレントの所属事務所のような機能」(「ブランドマネジメント」とは?)と例えています。
15.マニュアルエディション
『ロボプラ』からマニュアルエディティングに名称が変更されており、基本的に任天堂社員が担当しています。
16.[タチカビSRのみ]キャラクターコーディネーション
該当人物:山本 正宜(1995)
『タチカビSR』にのみ存在するキャラクターコーディネーション。かつて筆者は「カービィシリーズのファンサービスには2つある」という記事で"山本カービィ"を話題に挙げましたが、何故そんなことを話題に出したのかと言うと彼独自の世界観があると考えたからです。
シナリオを作るのが誰か明確になっていない『あつカビ』や『タチカビSR』で一体どこがキャラクターに整合性*4を持たせているのかを考える場合、ここが重要だと言えるでしょう。
17.テスティング
代表的人物:小林 勝、牛越 昭光、鈴木 太
デバッグ作業担当を指します。ハル研究所では自社が開発に関わった作品では必ずハルデバッグチームを立ち上げ、デバッグ・テスティングを行う。現在はディレクターとして活躍している熊崎も『夢の泉DX』でハルデバッグチームの一員になっており、そこで延々と全クリアを繰り返したことがあるので、プログラマーデザイナー関係なく招集されているのが分かります。
けど実は最も思い出深かったのは、『夢の泉デラックス』のデバッグで4人通信で延々と全クリアを繰り返したこと…。
このことから、ハルデバッグチームはタスクフォース*5だということが分かります。このチームは作品ごとに作られ、プロジェクトの完了に伴い解散します、常にテスティング要員となっている社員もいる(代表的人物がそれに当たります)。
18.[タチカビSRのみ]サポートプログラム
『タチカビSR』にのみ存在する役職。プログラミングのサポートなので全員プログラマーで構成されています。恐らくWiiUという新たなハードに最適化されたツールやスクリプト、プログラムを作るために増員された方々を指すのかも知れません。
19.スペシャルサンクス
「お世話になった人」と言えば良いでしょうか。基本的にスペシャルサンクスにクレジットされている人がその作品の開発に大きく関わっているとは言えません。
20.コーディネーション
代表的人物…白川 真里
プロデュース側の任天堂と開発側のハル研究所の間を調整する役職。例外なく任天堂社員がこれを務めます。
21.プロデューサー(派生:コ、ゼネラル、エグゼクティブ)
代表的人物…岩田 聡
プロデュース、つまり制作を担当していると思われるかもしれませんが、ハル研究所におけるプロデューサーはプロジェクト開始の可否や、予算の管理、結果の総責任を負う担当を指します。『カービィシリーズ』『ハコボーイシリーズ』ではハル研究所社員と任天堂社員が共同で担当しています。
21-1.コ・プロデューサー
該当人物:上武 理志〈ロボプラ〉
『ロボプラ』で新設された役職。副プロデューサー、プロデューサー補という意味合いで使われている可能性が高いです。この役職に唯一就いたことがある上武 理志は『Wii』でスケジュール管理を担当していたので、その延長線上にある仕事を管轄に置いたのかも知れません。
21-2.ゼネラルプロデューサー
該当人物…谷村 正仁〈対象内の全作品〉、高橋 伸也〈対象内の全作品〉
今回の対象範囲ではハル研究所代表取締役会長 兼 CEOの谷村 正仁と任天堂取締役 常務執行役員の高橋 伸也が担当し続けています。
21-3.エグゼクティブプロデューサー
該当人物…岩田 聡〈もうひとハコ以外の対象内の全作品〉、君島 達巳〈もうひとハコ〉
任天堂の代表取締役社長が就くことになっています。特に説明は必要ないと思いますが、君島 龍巳が『もうひとハコ』のエグゼクティブプロデューサーになったということは2015年7月以降にそのプロジェクトが始動したことを意味します。