久しぶりにまともな記事を書きます。
『カービィシリーズ』はファンサービスが豊富なことで一部の者の間では有名ですが、どうもこのファンサービスには大きく分けて2つの種類が存在するのではないかと思いました。それに関して今回は書いていきたいと思います。
ここで論ずるのは
- 『星のカービィWii』(以下、Wiiと呼称)
- 『あつめて!カービィ』(あつカビ)
- 『星のカービィ トリプルデラックス』(TDX)
- 『タッチ!カービィ スーパーレインボー』(タチカビSR)
- 『星のカービィ ロボボプラネット』(ロボプラ)
の5作品となりますのでそれ以前の作品については他の方に任せます。
ロボプラがあるということは当然、ネタバレ要素もありますのでご注意下さい。
8/7…8月7日に設定したフォーマットに従い、内容を一部変更しました。
- ファンサービスとは?
- ファンサービスの実例
- Wii・TDX・ロボプラとあつカビ・タチカビSR
- Wii・TDX・ロボプラの作風(熊崎信也)
- あつカビ・タチカビSRの作風
- 山本カービィと言わない理由
- 結論
ファンサービスとは?
まずはファンサービスについて考える必要があります。
wikipediaによると
ファンサービスは顧客への気配りを意味する和製英語。
ニコニコ大百科では
1.著名人が自分のファンを喜ばせるため、特別に行うこと。本来の仕事の外で、或いは仕事に追加して行われたことを指すことが多い。(一般)
以下のようになっています。顧客というのは今後購入してくれる可能性がある層も含みますので、対象が大幅に広くなってしまいます。ここでは、ニコニコ大百科のものを採用したほうが適切でしょう。
ファンサービスの実例
ではどういうものがファンサービスと捉えられているのか。5作品それぞれ言及していきましょう。
『星のカービィWii』
10年ぶりの据え置き新作となった『Wii』。新作ということもあってストーリーモード中に目に見えるファンサービスは実はそこまでありません。(ナッツヌーンのステージ3で流れる雲の夢くらい?)中ボスやボスはボンカースとウィスピーウッズを除けば新入りで、印象に残るBGMも初登場のスカイタワーや支配してアゲルヨォ、CROWNEDがよく挙げられます。
では何がファンサービスなのか?挙げるとするならばこれぐらいでしょう。
- GC版(開発中止)のトレイラーで流れた「勝利への道」
- 同じくGC版のトレイラーで出た「HR-D3」のようなボス
- 星のカービィ3のアイスバーグ マップ(真 格闘王への道の後半の休憩部屋)
- ギャラクティックナイト
- SDX系列、数字系列ごちゃ混ぜになったザコキャラ達
- EXモードのマホロアの台詞
ここで注目したいのは6番です。
ゼンブあつめてくれタ おれいに、ちょっとしたヒミツを おしえてアゲヨウ!
コノ船、ローアは ハルカンドラにふるくカラ つたわる船デ・・・
おおムカシのヒトたちが つくりあげた、デンセツの船なンダ。
かれらはモウいなくなっちゃったケド、フシギなチカラで コノ船のほかにも…
ギンガをとぶ キカイじかけの星や、ユメをうむふしぎなアイテムとか…
いろんなセカイでデンセツにナルようなモノを、たくさんつくったらしいヨ。
コノ船もボクがランディアのすむ火山からハックツしたモノだけど…
きっと、セカイをシハイできるような、モ~ットスゴイアイテムもあるハズ!
ランディアはたぶん、そんなデンセツのアイテムをひとりじめしているんダヨ。
やっぱりアイツはジャマものダヨ。 ハヤクやっつけちゃおうネ、星のカービィ!
マホロアは虚言の魔術師などとファンの間で言われることもあるので、この台詞が信憑性のあるものかは正直確信できません。しかし、仮にこの発言が本当ならば
- ギンガをとぶ キカイじかけの星→ギャラクティック・ノヴァ
- ユメをうむふしぎなアイテム→スターロッド
となり、これらのアイテムがハルカンドラに住んでいた人(通称ハルカンドラ人)によって生み出されたことになります。。当然この台詞はファンの間で議論が巻き起こりました。中にはスターロッドやノヴァの神秘性を崩すとしてこの発言が不適切であると考えた者もいます。この発言が適切か否かはともかくとして、今までに登場したアイテムにも大きく切り込んだこの発言は、ファンサービスの1つの方向性を示すものとしては十分な証拠であると筆者は考えました。
あつめて!カービィ
発売日が前後(Wiiは2011年10月27日だが、あつカビは2ヶ月ほど早い8月4日に発売)しますが、ここではあえてWiiの後に紹介します。先程のマホロアの台詞と比較して考えた際にあつカビのファンサービスは大きく異なってくるからです。
こちらも本編にファンサービスは集中していません。ウィスピーウッズとデデデ大王を除けばボスは新規で、BGMにはサンドーラとコルダがアレンジで存在します(セルフアレンジ?)が大半は新作です。『あつカビ』のファンサービスの真髄はサブゲームにあります。
- メタナイツ、ナイトメア(空中探検隊EOS)
- ドロッチェ、ダークマター、メタモル能力、『ピンボール66匹のワニ大行進』(カービィマスター)
- コックオオサカ、エスカルゴン、マッチョサン、カブキカービィ(カービィマスター)
カービィマスターに至ってはもはや闇鍋パーティです。空中探検隊EOSという名前も元ネタはかつてハル研究所が出した『宇宙警備隊SDF』ですし、カービィマスターも『カードマスター リムサリアの封印』を元ネタにしていると言われています。このようなファンサービスは、最初から本編から独立しているサブゲームだからこそできるのであって、仮に本編に登場させたとしたら、非難の嵐に晒されるのは言うまでもないでしょう。先ほどのWiiで紹介したような、かつて登場したアイテムや要素を今の作品と強くリンクさせるようなことをしなかったからこそ許容されたと言えます。
星のカービィ トリプルデラックス
3DでDDD、トリプルだから発売日も1月11日。全て計算済みな匂いがするタイトルです。それはともかく、この作品でWiiにあったエクストラモードの代わりにエクストラステージが実装されました。過去作のBGMをふんだんに流用し、特に最後のエクストラステージではファンの間で話題となりました。
収集要素のキーホルダーでは『星のカービィ』、『星のカービィ 夢の泉の物語』、『星のカービィ2』、『星のカービィ スーパーデラックス』、『星のカービィ3』、『夢の泉DX』、『星のカービィ 鏡の大迷宮』、『タッチ!カービィ』、『星のカービィ 参上!ドロッチェ団』、『星のカービィ ウルトラスーパーデラックス』、『毛糸のカービィ』、『Wii』、『TDX』のものが用意されました。しかし、デデデでゴー!ではこのようなファンサービスとは大きく違ったものが出てきます。
『鏡の大迷宮』の重要アイテムであった、ディメンションミラーが登場するのです。
本編ではセクトニアを倒して終わりですが、デデデでゴーではセクトニアDXを倒したあとにこのアイテムが登場し、中からブラックデデデと、そして鏡を通った先でダークメタナイトと戦うことになります。ダークメタナイトを倒したあと、この鏡を鏡の大迷宮に出れなかったデデデ大王が割るムービーが挟まれますが、重要なのはそこではありません。
ディメンションミラーはダークマインドによって「映った者の悪意や欲望を増幅し、その影を映し出して実体化する」ようになってしまいましたが、それがまだ続いている証拠になり、しかもこの鏡がセクトニアの暴走の原因なのではないかと推察されるようになったのです。
確かにクィン・セクトニアDXのスペシャルページには
セクトニアと タランザは、それは なかのよい2人であった…。だが、ぜっせいどくりつ なセクトニアが 美と しはいに とりつかれてからは、じょじょに心を みにくくさせ、ようえんの悪女と なっていくのであった…。
と書かれており、そう捉えることも可能です。実際、MiiverseのTDX スタッフルームで
最後に、この鏡はなぜ、女王の間に飾られていたのでしょうか。 これは、美を求める女王のためにと、鏡の国より持ち出し、ささげものとして彼女の事を思う側近… あの「タランザ」が献上したものなのです。 しかし、不幸にも彼女は鏡に日々その身を映すうちに、鏡の持つ強い力によって心が乱れ、最後にはあのような暴君になってしまったのです。
ディメンションミラーがセクトニアの暴走の引き金だと言われました。ただ、注意しなければならないのはこの事実は「ゲーム中では」はっきりと言及されていないという点です。そのため「ゲーム内ではっきりさせろ」と思った者もいたとか。
ちなみにTDXは2014年に発売されましたが、鏡の大迷宮は2004年。10周年記念ということで組み込まれた可能性も否定できません。
タッチ!カービィ スーパーレインボー
露出の早かったエリーヌが「悪役なのではないか?」だとか「マホロアの再来では?」とファンの間では騒がれたが蓋を開けてみればいつものカービィだった、タチカビSR。ボスは小癪な大木呼ばわりされたウィスピーウッズ以外は新規で、BGMも本編では過去作でアレンジされたものは少ないです(アニメのアレンジは結構あります)。カービィがエリーヌの力でのりものに変身する時に一瞬リック、カイン、クーの姿になったりしますが。
ファンサービスの中心は、サウンドルームでのみ聞けるサウンドトラックです。代表的なものだけでも
- コロコロ以来の初代ボス戦
- 2のビッグフォレスト
- 3のリップルフィールド
- ボウルのコース8:雪ステージ
- USDXのヘビーロブスター
- Wiiのスカイタワー
- WiiのCROWNED
- TDXの奥のカガミで笑う影
- TDXの月影の帝都セクトラトア
と幅広くアレンジされています。サウンドルームでのみ聞けることからも分かる通り、これらのファンサービスは本編には直接関係しません。
星のカービィ ロボボプラネット
発表から発売までが遅いことで有名なHAL研のことを考えると異常なペースで来た作品。トリプルデラックス2として開発する予定もあったがやめ、今のような世界観になったのだとか。そのため、トリプルデラックスの世界観を「キカイ化」した形となっています。
Q.前作よりムービーが増えてストーリー性が強くなったのはなぜ?
A.開発当初は『星のカービィ トリプルデラックス2』として「ビッグバン」を強化して天空からの新たな敵を描こうという話も考えていましたが、シリーズを継承しつつも過去作の既視感を打破したく、世界観を一新しました。物語は全て新しいアクションのためのもので、「ビッグバン」よりアクション性を向上させた異質なロボボアーマーの登場がより世界になじみ、盛り上がるようにとSF的な物型を考えました。
出典:Nintendo DREAM vol.266/Jun.2016 P.15
ファンサービスは今回も豊富で、『TDX』に実装されたエクストラステージは続投。機械化した世界に合わせて『タチカビ』や『エアライド』の曲が多く採用されましたが、『ボウル』や『きらきらきっず』(SFC)も使われています。
収集要素のステッカーでは『TDX』のキーホルダーの時に加えてさらに『ピンボール』、『ボウル』、『きらきらきっず』、『64』、『コロコロ』、『エアライド』、『あつカビ』、『タチカビSR』のものが用意されました。そしてこの作品も『TDX』のようにとんでもない隠し玉が用意されていました。
あのギャラクティック・ノヴァを彷彿とさせるラスボス、「星の夢」です。
プレジデント・ハルトマンの台詞を引用すると
これこそ、銀河の かなたの文明を ひもとき、
わが社の テクノロジーでよみがえ らせた、
マザーコンピューター…「星の夢」である。
蘇らせたと言っているため、ギャラクティック・ノヴァの残骸を利用して復活させた可能性もあります。真偽は不明(『TDX』と同じ)ですが、過去作の要素を利用してシナリオに組み込んでいるのは確かです。しかもTDXの時とは違って組み込みの度合いが大きく違います。。ディメンションミラーはあれがセクトニアの暴走のトリガーとはゲーム中でははっきりしませんでした。しかし、星の夢は紛れも無く「元凶」だとゲーム内で判断できます。ちなみにロボプラは2016年に発売されましたが、SDXは1996年。20周年記念ということで組み込まれた可能性も否定できません。(参ドロも10周年ですが)
Wii・TDX・ロボプラとあつカビ・タチカビSR
5作品のファンサービスの実例を見てきましたが、このファンサービスは2つに分けることができます。それが見出しにも書いてある通り
Wii・TDX・ロボプラ
と
あつカビ・タチカビSR
という分け方です。
どちらも共通事項として
- ファンサービスが豊富
- どこかで過去作の曲を流用・アレンジしたものを流す
の2つが存在します。しかし、前者は何度も言及したように過去作のアイテムを作品のシナリオと強弱はあれど、何らかの形で結び付けるということを行ってます。逆に後者はファンサービス(特にキャラ)は本編と関係しない所で出すことを徹底しています。何故そのような違いが生まれたのか分析していきましょう。
Wii・TDX・ロボプラの作風(熊崎信也)
すでに見出しでバレていますが、これら三作品の開発の中心人物は熊崎信也です。『USDX』で初めてディレクションを務め、所謂「本編」の開発に大きく関わっている。そもそも『USDX』の時点で「メタナイトでゴーDX」でギャラクティックナイトという新キャラをギャラクティック・ノヴァを通じて生み出し、更に「真格闘王への道」ではマルクをノヴァの残骸と融合させることでマルクソウルを誕生させています。元から過去作の要素を利用して新キャラを生み出すことをやっており、それで評価されているのです。彼がギャラクティックナイトやマルクソウルの生みの親であるというはっきりとしたソースはありませんが、タチカビではデザイナーとしてラスボスを担当したことがあり、両者もそれぞれのモードのラスボスであるという点を踏まえるとただの仮説とは言い切れません。
社長が訊く『星のカービィWii』でも岩田聡のこのような質問に
じゃあ最後に11年ぶりに王道新作『カービィ』を
お届けするにあたって、みなさんからひと言ずつ
お客さんへメッセージをお願いします。
熊崎は次のように答えています。
はい。久しぶりに吸い込みも、コピー能力も、
新しいコマンド技もたっぷりと楽しめる、
すごくパワーアップした王道カービィを存分に
楽しんでいただきたいと思っています。
オススメポイントですが、
わたしはボスをつくるのが大好きなのです。
とくにラスボス、クライマックスの盛り上がりは
「これでもかー!」という最高潮の展開を用意しています。
また
アクションゲームのキモは、
しかけとマップと、手強いボスとの戦いだと思っていますので。
先ほど話題に出たプログラマーと組んで
ラスボスをつくったのですが、
やりたかったことを出しきれたクライマックスを
演出することができました。
ですので最後まで遊んでいただけたら、
「ああ、燃えたー!」と熱く思えるような
展開が待っていますので、
ぜひ、ぜひ最後まで楽しんでください。
と続けています。そのような彼がディレクションという大きな権限を持ってボスの監修を行わないと予想するのは少し無理があるでしょう。キモである点に彼の強い介入が無いとは到底言えないからです。
では、これがメインのファンサービスなのでしょうか? 筆者はそう思いません。
熊崎カービィ(桜井カービィ、下村カービィ、旗船カービィのように彼も名前+カービィで関わった作品全体を表す名称がファンの間で付けられている)のファンサービスは全部で4つのものがあります。
- HAL部屋
- 6-8(TDX・ロボプラ)
- 本編に過去のキャラが復活
- 過去作品の網羅を目指す
その1:HAL部屋
見つけさせる気のない、隠し要素です。HAL部屋はカービィシリーズならいつでもある隠し要素だと勘違いされていそうですが、熊崎カービィを除けば実は『夢の泉の物語』、『タチカビ』にしかありません。もはや過去の要素の掘り返しではなく、熊崎カービィで継続させている要素と言えるのです。
その2:6-8(TDXとロボプラ)
『TDX』と『ロボプラ』にはエクストラステージが用意され、最後のワールドの最後のエクストラステージはまさにファンサービスと言える演出があります。HAL部屋と違うのは、その時の作品のギミックを活かした演出が用意されている点です。
その3:本編に過去作のキャラが復活
重要なのは「本編」。あつカビやタチカビSRでもサブゲームなどを通じて過去作のキャラが復活することはあるのだが、本編では登場しません。
しかし熊崎カービィでは今までに
- ダークメタナイト
- ダークマター
を復活させている。ダークマターは「クローン」という形ですが、それはシナリオとの整合性をもたせるためでしょう。
その4:過去作品の網羅を目指す
個人的には最大の特徴と言えるもので、あらゆる過去作をもってくる姿勢のことを指します。『TDX』ではキーホルダーという形で一部(『ピンボール』、『ボウル』、『64』、『きらきらきっず』、『エアライド』、『あつカビ』)を除く作品の要素を出し、次回作に当たる『ロボプラ』では、キーホルダーでは登場しなかった作品群のも登場させました。3Dモデルでも、『TDX』のサブゲームであるカービィファイターズ!で、リック、カイン、クーを、ラスボスにシャドーカービィを復活させました。そもそもザコキャラですら、SDX系列のキャラと数字系列のキャラをごった煮にして出している(星のカービィWiiのファンサービスの5番で言及した)のです。熊崎カービィが「ファンサービスが豊富」と言われるのはその圧倒的な物量も原因だと言っていいでしょう。
まとめ:熊崎カービィのファンサービス
よって、熊崎カービィのファンサービスをまとめると
- 初代から最新作に至るあらゆる要素をぶち込む圧倒的物量
- 過去作の重要アイテム・キャラを作品のシナリオと融合させる
- HAL部屋や6-8などのステージを利用したファンサービス
以上の3点となります。
あつカビ・タチカビSRの作風
では、あつカビ・タチカビSRではどうなるのか。まず注意しなければならないのは前者のディレクターは白川真里、後者のそれは増田一繁と異なっているという点です。では、誰がこれらの作品に少なからぬ影響を及ぼしているのか。
答えは毛糸のカービィでキャラクタースーパーバイザーを、あつカビでプロデューサーを、タチカビSRでキャラクターコーディネーションを務めた、山本正宣にあると筆者は思いました。
彼は社長が訊く『毛糸のカービィ』に登場した際の自己紹介で
ハル研究所の山本です。
いまはキャラクタープロデュース課というところで、
『カービィ』に関しての世界観であったりですとか、
現場のプロデュースなどを担当しています。
と発言しています。『毛糸』の世界観を担当したというのはゲームの方向性を決める点において重要な地位にいた証となります。ちなみにキャラクターのコーディネートに関わる職は熊崎カービィでは『USDX』以外には存在しません。
この山本がどういう人物か判断するソースは少ないため分析は非常に困難ですが、社長が訊く『毛糸のカービィ』における岩田の
じゃあ、最後にみなさんからお客さんへのメッセージを
ひとことずついただこうと思います。
という発言に対し
今回の『毛糸のカービィ』には
いいところはすごくたくさんあるんですけども、
わたしが強調したいのは、2人で遊べるところです。
2人が同時にひとつの画面のなかで遊べますので、
ぜひとも世の中のお父さんと娘さん、
お母さんと息子さんというように
ご家族で楽しんでいただきたいなと思います。
それからもうひとつ。
実はWiiチャンネルのなかの『Wiiの間』(※10)で
動画配信サービスをやっているのですが、
9月上旬にアニメ『星のカービィ』の
100話までの全配信を終えましたので、
そちらのほうもぜひお楽しみいただきたいと思います。
と言っています。前半は『毛糸』と関係していますが、後半は関係がないように見える『アニカビ』についての宣伝です。わざわざこのような場で発言するのは彼の所謂「愛着」があるからこそだと筆者は感じました。それを端的に示すのが「ぞい」の語尾が付くデデデ大王だと。
よく『毛糸』の例をもって言及されますが、『タチカビSR』の公式4コマ漫画でもこの「ぞい」は出てきます。
出展:Nintendo News|『タッチ!カービィ スーパーレインボー(Wii U)』カービィ号外 あれ?カービィが"ねんど"になっちゃった!!|任天堂
つまり、彼が大きく関わる作品では「アニメ版星のカービィの要素が盛り込まれている」と考えるのが適切である。事実、あつカビとタチカビSRにもそのような要素はかなり出てくる。
- カービィが「ぽよ」と言う(毛糸のカービィから)
- 「ぞい」が語尾のデデデ大王(毛糸とタチカビSR)
- アニメの曲をアレンジしたBGM(モスガバーの歌、あつカビとタチカビSR)
- アニメ関連キャラのサブゲームなどでの登場(あつカビ)
ではこのような作風が、熊崎信也のギャラクティックナイトやマルクソウルのように広く受け入れられたのか?それは要素によってまちまちだと思われます。
特に「ぞい」という語尾は、アニメの強烈過ぎるキャラ付けが施された、幼稚で粗雑な自称大王のデデデを思い出させるということで、苦々しく思う者はいます。そもそも、「アニメとゲームをごっちゃにすることそのものがおかしいのではないか?」とする意見もあります。
彼の持つ作風が最終的にあつカビやタチカビSRのファンサービスにどう影響していったのか、簡単にまとめると次のようなものになります。
その1:音楽を利用した過去作の掘り返し
『あつカビ』ではそのような要素は薄いですが(DSのハードウェアの問題もありますが)、『エアライド』のサンドーラやコルダを再現しています。『』タチカビSRでは実例でも挙げたように『初代』から『TDX』までの様々な音楽がアレンジされています。
その2:アニメ要素の詰め込み
『毛糸』のステージ開始時に鳴る効果音、『アニカビ』の各話のエピソード名を紹介する際に鳴るSEをアレンジしている。このように、数多くのアニメのキャラがサブゲームを通じて登場し(あつカビ)、アニメの曲がアレンジされて利用されています(あつカビ・タチカビSR)。
その3:本編とは関係しない
原因は不明ですが、『タチカビSR』からは「アニメらしい」要素をなるべく本編では出さないようにしています。先程紹介したデデデ大王も本編のムービーでは一度も発言の機会を与えられていません。
その4:ゲームの要素も忘れずに
これが重要なのですが、『あつカビ』と『タチカビSR』のファンサービスはアニメに限られていません。『あつカビ』でカービィ(達)を助けるのはドロッチェ団*1で、『タチカビSR』には数字系列出身のバウンシーや、『Wii』で生まれたシスターバウンドが出てきます。
まとめ:『あつカビ』・『タチカビSR』のファンサービス
よって、両作品のファンサービスをまとめると
- ゲームにアニメ要素を少々入れた世界観
- 「アニメらしい」要素はサブゲームや4コマなど直接関係しない所で
- ザコや音楽など、量は少ないが細やかなファンサービス
以上の3点となります。
山本カービィと言わない理由
今回、筆者は熊崎カービィと山本カービィという単純な二項対立を行いませんでした。理由はタチカビSRのディレクターにあります。
増田一繁は、かつて『Wii』のサブゲームディレクターを務めていました。熊崎カービィに関わり、少なからぬ影響を受けた人物が『タチカビSR』のディレクションを務めていたのです。『あつカビ』でわんさか出てきたアニメ要素は鳴りを潜め、数字系列の曲や『Wii』で登場したザコキャラ(彼はシスターバウンドが好き?)が出てきたことに彼が関わっていないとは到底言えません。『毛糸』と『あつカビ』で括れば「山本カービィ」と言えたかも知れませんが、『タチカビSR』という外伝の最新作を踏まえる場合、不適切でしょう。
結論
今は参ドロの延長線上にあった「カービィ」と「熊崎カービィ」が両立し、前者は熊崎カービィに関わった増田一繁の登場で、大きく変わろうとしています。。それにファンサービスも並行する形となっているのです。熊崎カービィの「過去作のアイテムを作品のシナリオと強弱はあれど、何らかの形で結び付ける」点は固有の特性として残り、進化を続け、タチカビSRは「ファンサービスはあくまでもファンサービス」という点が徹底されています。
一見すると熊崎カービィの方が質も量も勝っていると判断できますが、彼のファンサービスは非常にリスキーです。量が多すぎると本編の新鮮味が薄れる危険性があり、質が低ければキャラやアイテムを私物化しているという批判が出かねません。(だからこそ、マホロアやセクトニア、タランザ、スージー、ハルトマンといった濃いキャラを何体も生み出して既視感を打破しているのかもしれません)
そういった点から考えると、殆どのザコキャラや中ボス、ボスを新規で出して復活するキャラを最小限に止め、大半のアレンジをサウンドルームでしか聞けないサウンドトラックで出すのももう1つの「ファンサービス」としてアリなのではと個人的に思います(結果としてネクロディアス、エリーヌやクレイシア、ダーククラフターが従来のカービィらしいキャラでいるのかも知れない)。もっと簡単に言ってしまえば「どちらもカービィの1つの表し方だと認識して、楽しく遊ぼう」となります。
*1:『参ドロ』でも山本はクリエイティブサポートとして関わっております。尚、熊崎の方にはロボプラでステッカーとして登場してます。